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【ご報告】結婚しました。【FE風花雪月】

 ……お相手は士官学校の元教え子、ベルナデッタ=フォン=ヴァーリです。普段はおとなしい彼女ですが、戦場では天馬で空を素早く駆け、何度も生徒達の窮地を救ってくれた、美しくも勇猛果敢な戦士です。

 結婚という幸福を掴むことができたのは、ひとえに、戦場で共に戦った戦友達、および応援してくれた方々のおかげです。まだまだ未熟な二人ですが、これからは公私共に手を取り合い、諸事邁進していきますので、暖かく見守っていただければ幸甚に存じます。

灰猫より

 ……ということで「ファイアーエムブレム風花雪月」銀雪の章・ベルナデッタ結婚ENDを達成しました。あ、結婚繋がりで言うと私はビアンカ派です。

 このベルナデッタという少女、「扉越しにしか会話できない引き籠もりヒロインがいる」というスクショをTwitterのタイムラインで見かけて以来気になっていました。以下、プレイ時の感想と共に、彼女と結婚するまでの過程を書き連ねます。

(※以下、黒鷹学級・銀雪の章、ベルナデッタ関連イベント、その他諸々の内容に言及します。ネタバレ注意


部屋から出ないので3Dグラフィックが表示されない系ヒロイン

 舞台はフォドラ大陸。主人公は、大司教レア直々の命令に従い、ガルグ=マク大修道院付属士官学校の教師を勤めることになる。
 士官学校は三つの学級から成る。某魔法学校では本人の性格によって帽子で組み分けされるが、こちらは出身国ごと。今回担任を勤めた黒鷹学級(アドラークラッセ)は、大陸の南を支配するアドラステア帝国出身の生徒達が在籍している。

 生徒達は出自や性格を異にする。まさに十人十色。大修道院内を散策していると、ある生徒は女神に祈りを捧げ、ある生徒は訓練所で汗を流し、またある生徒は女性を口説き回る、といった風景を見ることができる。
 みんな青春を謳歌してるなあ。おや、あの生徒は……

引き籠り3

 ん……? 引き籠もり日和……?

引き籠り2

 この引き籠もり少女こそがベルナデッタ=フォン=ヴァーリ。彼女を語る上で欠かせないのは、「扉越しにしか会話できない」という場面が多々あること。

引き籠り1

 本作は大修道院の散策時にマップ上にキャラが点在しており、近づいてAボタンを押すと会話できるという、わざわざ説明するまでもない3DRPGのお約束があります。
 ……しかし、上の画像の通り、ベルナデッタだけは基本的に散策時に姿を見ることができず、自室に引き籠もっているので、扉越しにしか会話できません。まさに"引き籠もり"。本当に部屋から出てこない。

 なあベル、今節は舞踏会があるんだ! みんな踊りを練習したり、誰を誘うかで悩んだり、その話題で持ちきりさ。ベルもよかったら……

引き籠り4

 そ、そうだよな。ははっ、無理しなくていいからな。気が向いたら講義に来てくれ。大丈夫。先生はきみとの結婚を前提にこの学級を選んだからな!

 大事なことなので繰り返すと、マジで部屋から出ません。3Dグラフィックすら表示されません。私がドラクエの勇者だったら、彼女の部屋に無断で入り、会話をした後、壺を割り、タンスの中身をあさり、冒険で使えそうな道具を強奪して去るでしょう。しかし、そもそも部屋に入れないのでどうしようもない。「不法侵入、器物損壊、窃盗。どう考えも犯罪行為だけど、そこはほら、あくまでゲームだから」というRPGのお約束が、この子には一切通用しません。強え。

 この「扉越しに話しかける」という行為、プレイヤー視点ではシュールな光景であり、妙にリアリティがあって印象に残ります。会話内容が更新される度に、真っ先に彼女の部屋までBダッシュしていました。……月初になると先生が自室に全力疾走してくるって怖すぎないか?


先生、生徒、過去——ベルナデッタとの学校生活

 本作は、ざっくり言うと、学校生活パート戦闘パートに分かれています。学校生活パートで生徒達を育成したり、交流を深めたりした後、戦闘パートに移行するという流れです。
 これが本当によく作り込まれていました。ちゃんと生徒一人ひとりに愛着が持てるゲームデザインになっています。学校生活パートで生徒達に対する理解を深め、適性や性格を加味して生徒一人ひとりの教育方針を練る。効率よく育てるにはどうすればいいか、どう動かせば活躍させてあげられるか。考えるだけで膨大な時間が過ぎていきました。

 たとえば——ん、どうしたベル?

育成

 なるほど。戦場は嫌、せめて弓兵として後方に回りたいと。そうか、そうか……
 でもな、先生はベルを輝かせたいんだ。きみは磨けば光る原石なんだよ。それを証明するために——ごめん、ちょっとカッコつけた。先生はペガサスを乗りこなすベルをただただ見たいんだ。気持ち悪りぃくらい見てえんだわ

 そんなわけで、あらゆる育成要素をフル活用するスパルタ指導でファルコンナイトとして育てあげました。自分の好きな生徒を、自分好みに教育し、さらにはあらゆる要素を全投入してえこひいきする。ただ単に強い"戦闘ユニット"を作り上げるのではなく、それが"生徒"として愛着を持って接することとイコールになるので、没入感があります。
 あの引き籠もり少女が、戦場では美しい天馬にまたがり、敵の攻撃を華麗に避けながら前線を押し上げてくれるんですよ! 教師としては嬉しくてしょうがない!

友達

 最初は多少なりとも好奇の目でベルを見ていましたが、小動物みたいなリアクションを見ていると純粋に可愛いなあと思えるようになりました。何というかこう、意味もなく髪をわしゃわしゃしたくなりますね。
 あと引き籠もりとしての解像度が高い。自信の無さ、被害妄想、過剰な謙遜、人が苦手だけど友達は欲しい……表面的な描写だけじゃない、1年間引き籠もりを経験した身としてはわかりみが深い話が多々ありました。

過去

 彼女との交流を深めると、壮絶な過去が明らかになります。
 なぜベルは引き籠もりになったのか? それは父親による虐待が原因だった。父親は、娘を良家に嫁がせるために、教育という名の虐待を繰り返した。椅子に縛り付けたり、ベルが仲良くしていた平民の男の子を排斥したり。そんな父親の虐待が原因で、ベルは人目を恐れるようになり、部屋から無理やり出されると半狂乱になることさえあったのだという。
 もはや使いものにならないと判断されたベルは、士官学校に入学させられる。本人曰く、半ば拉致に近い形で……

 家庭環境に問題があるせいで引き籠もりになったってリアルだな。小柄なのはろくに食事を与えられなかったからなのかな……ええい何でも構わん!! ベル!! お前だけは必ず幸せにしてやるからな!!

ベルの先生でよかった

 不意にこんな台詞が出てきた時はもう感無量。先生もベルが生徒でよかったよ。希望ガン無視してスパルタ指導しちゃってごめんな……

 そしてベルは、先生だけではなく、生徒達との交流も深めていく。

フェルディナント

 フェルディナント。彼はベルナデッタが「引き籠もりを恥じていて、そこから抜け出したいと思っている」と誤解していた。しかし、自分の尺度だけで彼女の価値観を測ろうとせず、理解を深めることに努めた。

パスカル

 カスパルやめてくれ…‥「引き籠もってねえで外に出れば、すぐに友達なんかできるぜ!」は先生も耳が痛い……ベルは当初は抵抗を感じていたが、彼が外に連れ出して見せてくれた絶景に感動する。

ドロテア

 ドロテア。ベルは"平民"である彼女と仲良くすることを恐れていた。ドロテアはベルのトラウマを聞き、父親がどんなに恐ろしい存在だとしても、友達でいると告げる。

リンハルト

 リンハルト。「周囲に流されず、引き籠もりとして泰然自若としている君に憧れを抱いてる」と評し、二人でのんびりとした時間を過ごす。引き籠もりだからと軽蔑することなく、お互いの価値観を認め合う。うむ、うちの生徒達は本当にいい子ばかりだ(後方腕組み教師)

 ベルに限らず、生徒達は大なり小なり悩みや暗い過去を抱えており、交流を深めると徐々に打ち明けてくれるようになります。「うちの生徒はみーんないい子だ! 何があっても絶対幸せにしてやるからな!」と生徒一人ひとりに愛着が湧きます。

 ……しかし、ここからが本作の肝。私の心情を嘲笑うかのごとく「そうか。そんなに生徒が可愛いか。だったら、自分の教え子を守るために、お前は手を血で染めることができるんだな?」と語りかけてきます。


「また生き延びられた、また殺した……!」5年後のベルナデッタ

約束

 士官学校からの卒業を控えている頃、「5年後の今日、また大修道院に集まらない?」と級長エーデルガルトが提案する。……大丈夫だぞベル。自分にだけ同窓会の連絡がなかったなんてことがないよう、先生が責任を持って招待状を送るからな!
 しかし、主人公は戦乱に巻き込まれて重傷を負い、5年の眠りにつく。目が覚めると独りぼっち。聞くところによれば、大陸全土が戦禍に呑まれ、大修道院は盗賊に荒らされているのだという。主人公は村人の制止を振り切り、教師として、生徒達との再会の約束を果たすために大修道院へ向かう。

 主人公は大修道院から宝物を盗み出した賊を追う。ここの戦闘マップはまさに多勢に無勢の状況で、プレイヤーは苦しい戦闘を強いられます。私じゃ遠距離にいるセテスさんを回復できない……リンハルトのリブローがあれば……盾役のフェルディナントがいれば……
 そんな絶対絶命の状況の中で現れたのは、再会の約束を果たすために集った、かつての教え子達。ドロテア、カスパル、ペトラ、リンハルト、フェルディナント——

5年後

 そして、ベルナデッタ。あれほど部屋から出ることを恐れていた彼女が、危機的状況を乗り越えて、再会の約束を果たすために駆けつけてくれた。身長が伸び、ボサボサだった髪は整えられており、顔の輪郭もたくましくなっている。
 もうね、泣いた。ボロボロに泣いた。生徒達一人ひとりの名前を呼んでいました。みんな、肉体的にも精神的にもたくましく成長していた。5年前の約束を忘れず、戦乱に巻き込まれながらも会いに来てくれた。ピンチを救ってくれた。苦しい戦況が、みんなが来てくれたおかげで好転した。
 ありがとう、本当にありがとう……!! ベルも引き籠もりから卒業して——

5年後2

 ……あ、そこは変わらないのね。何かほっこりしちゃった。戦闘開始時の台詞が「引き籠もっていたい人生だったのにぃ……」から「引き籠もれない世を変えなきゃ!」と積極的態度に変化しているあたり、多少なりとも成長している様子。
 台詞以外でも生徒達の成長を表現しているのがまた巧い。今までは「先生が教壇に立って生徒に教える」という描写でしたが、「みんなで会議テーブル囲んで協議する」に変化。システム面では「元教え子から高度教練を受けることで技能経験値を獲得する」という要素も追加される。「そっか、私はもう教える側じゃなくて、教わる側になったんだね」と、ゲームシステムの変化で教え子達の成長を痛感させてくれるという乙な演出。

 こうして教え子達との再会に喜び、彼らの成長に感涙し……しかし、そんなポジティブな感情だけで終わらせてくれないのが本作。生徒達はいずれも、生き延びるために手を血で染めなければならない極限状況に追い込まれており、中には心が荒んでしまう子も。

リンハルト2

 5年前、リンハルトは「僕は殺し合いをして、血なんて浴びたくない……。寝転がって、ただのどかな木漏れ日だけを浴びてたいんです」と悩みを打ち明けていた。単なるワガママではない。戦闘を何度も経験したからこそ、平和な日々を求める思いが強くなっていた。
 そんな彼は再会後、野太い声を発しながら風魔法で敵を切り裂き、「明日寝るために、今日殺す」と静かにつぶやく今の世の中では、安寧を得るためには戦うしかない。そんな悲壮な決意が伝わってくる。

 ベルナデッタは敵を撃破すると「また生き延びられた、また殺した……!」とつぶやくことがある。文面だけだと伝わりづらい部分ですが、半狂乱になった声色でこの台詞を発します。戦わなければ生き残れない。ベルナデッタを、教え子達を守るためにも、この戦争を速やかに集結させなければならない——

エーデルガルト

 そのために刃を向けるのは、かつての級長エーデルガルト=フォン=フレスベルグ。彼女は戦争を巻き起こした張本人であり、アドラステア帝国の新皇帝として中央教会と対立していた。再会の約束を果たすために大修道院に姿を現したが、かつての教師と剣を交えることになる。

ローレンツ

 別学級の生徒とも戦うことになる。ローレンツ……お前のこと、最初はいけ好かない貴族だと思ってたけど、本当は良いやつなんだって……何かが違っていれば、一緒に戦う道もあったのかな……

 平和な世を築くためには、生徒達を手にかけなければならない。勘弁してくれ……
 先に「うちの生徒達は本当にいい子ばかりだ」と書きましたが、黒鷹学級以外の生徒も本当にいい子ばかりでした。最初は生徒間で多少なりともすれ違いや偏見があっても、親交を深めることでお互いの価値観を認め合うことができる子達です。
 しかし、それは別の言い方をすれば、絶対悪がいないということ。どちらの立場にも言い分がある。正義の対極にあるのはもうひとつの正義。5年前は共に手を取り合っていた生徒達が、今では殺し合わなければならない状況に立たされる。

 私は悲壮な決意を胸に彼らを殺していく……ことになると思っていたのですが、不思議と曇りのない心持ちでいました。教会ルートを、エーデルガルトと対立することを選んだ時点で、覚悟が決まった。
 かつての教え子達が手を血で染めながら戦っている。ならばそれで全力で報いなければならない。敵対した生徒達も正義を掲げている。ならば私も自分の正義を掲げて臨む他ない。それが所詮は独善的な正義だとしても。やるしかねえだろ! これ戦争なんだから!……と、ここまで散々考えさせられて決意を抱かせてくれるゲーム体験は初めてでした。5年前の学校生活がちゃんと布石になっているのは素晴らしい。


"永遠の引き籠もり"

 そんな血を血で争う戦争が終わり、自分を生み出した存在である大司教レア様の暴走を食い止め……ようやく、ようやくフォドラに平和が訪れました。ベルお待たせ!! 結婚しよう!!

指輪

 こうして、ベルナデッタは戦乱の世を乗り越え、最愛の恩師と結ばれ、外に出られるようになりましたとさ。めでたし、めでたし——

結婚後

 かと思いきや、なんと結婚後も引き籠もりを続けると宣言。おい!!!!

あなたと一緒なら

 しかし、彼女は何も成長しなかったわけではない。人見知りも、引き籠りも治せないけど、最愛の人が隣にいれば乗り越えることができると語る。そこにあるのは、世の理不尽に苛まれながらも、健気に奮闘する少女の姿。こういうところ、ちゃんと"ヒロイン"って感じでいいですね。
 人には得手不得手がある。それは必ずしも悪いことではなく、共に手を取って支え合っていけばいい。思い返せば、誰かの短所を誰かの長所で支えなければクリアできないゲームでした。その末に辿り着いたのがこの結末だと思うと感慨深い。

 なお、エンディングで表示される彼女の称号は「永遠の引き籠もり」。他のみんなはカッコいい肩書きなのに……この締まりのなさ、特別カッコいいわけでもない、壮大な美談でもない、等身大のまま終わるのが何ともベルらしくて愛おしい。余計に好きになれました。一緒に暖かな家庭を築こうな、ベル……

 以上、こうして私は、ベルナデッタ=フォン=ヴァーリと結婚するに至りました。ベルのひたむきな姿には何度も励まされてきました。今後は彼女と共に手を取り合い、フォドラ統一王国の王としての務めを果たし、この地に恒久の平和をもたらすべく邁進いたします。

 いやあ本当に素晴らしい作品でした。銀節の章だけでは各キャラの思惑や全容を掴めない——あえて敵側の思惑を完全に知ることができない作りにしているのが巧いところ——ので、さっそく2周目を始めちゃいました。選んだのは青獅子学級(ルーヴェンクラッセ)
 へへっ、ここは美男子ばかりだから女性主人公になって結婚を……

ディミトリ

 ……あれ、ちょっと待って。級長ディミトリは、エーデルガルトに、アドラステア帝国に尋常じゃない憎悪をぶつけてたよな。えっと、じゃあ……1周目で絆を育んだ生徒達を、2周目では皆殺しにすることになるのか?
 
ベル!! 今からでも遅くない!! うちの学級に避難を——

スカウト

 私が担任じゃなかったら学級に馴染めなくなっちゃうのか……独りぼっちにしてごめんなベル。これからも一緒に頑張ろうな。今度はボウナイトとして活躍してもらうからな。