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SIFCA TALK vol.2 : Heat Transfer

シフカのデザイナーが、デザインに関することを取り留めもなく話すシフカトーク。普段は業務として答えを出すことに専念しているメンバーに、敢えて答えの出ないようなテーマを与えて話してもらう企画です。

第二回のテーマは「リモートワークとデザイン業務」

何度も記事で書いている通り、シフカの業務は完全リモートです。コロナ禍に伴うリモートワーク体制への移行から既に4年。長く続けることでオフィスでの業務と異なる点がたくさん見えてきました。

オフィスからリモートワークに変わったことのメリットやデメリットについては過去の記事でもまとめていますし、他にも多くの人たちが記事にしてくれています。

そこで今回は、リモートワークがデザイン業務に与える影響と今後の方向について、シニア・中堅・若手のデザイナー三人に語ってもらいます。


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リモートワークの影響

シニア よろしくお願いします。前回同様、簡単には答えの出ない主題についてあえて話をしてみましょう。

中堅・若手 よろしくお願いします。

シニア では早速だけどリモートワークによるデザイン業務への影響についてはどう考えてる?

中堅 リモートワークになったからといって、オフィスで作業していたときに比べてクオリティが落ちたという実感はないですね。シフカがもともと個人の裁量が大きいワークスタイルだったことも関係あるかもしれません。

若手 リモートワークになったことでコミュニケーションが取りづらくなった面はある気がしています。リモートでも必要ならビデオ会議で話せますが、オフィスだともっと気軽に声をかけていたと感じる場面があります。

中堅 リアルに隣にいればすぐ状況がわかるような場面でも、リモートだとすぐに把握できないことがありますね。それもあって「今なにがボトルネックになっているのか」が以前より分かりづらくなっている印象もあります。

シニア オフィスなら作業中に軽く後ろを振り向いて同僚に尋ねたり、通りすがりに気軽に声をかけたりしていたけど、それが無くなってしまったね。そういった何気ないコミュニケーションの積み重ねがクリティカルな問題を防いでいたのかもしれないね。

若手 リモートだとビデオ会議をするにはそれなりの話題量が必要だという気持ちになりやすいです。単に1分くらい話したいだけのときは結局文字でのコミュニケーションのほうが楽だったりしますし。

中堅 そう言えば対面の打ち合わせに向かう道中や帰途に、会議に参加するメンバー同士でそれとなく認識合わせをしていた面もありますね。リモートだと声をかけて事前にミーティングをしないといけませんが、そこまでする必要がないと考えて実施しないときもあります。

若手 ちょっとした思いつきも対面のほうが言いやすい気がします。その場での思いつきは内容が的を外すこともありますが、対面なら話している最中に相手の雰囲気から察して安全にトーンダウンできるので気軽に話し出せます。でもチャットなどテキストのやり取りだと後に残るので、ちゃんと内容を固めてから投稿したいという気持ちになりがちです。


リモートワークにおけるコミュニケーション

シニア リモートワークによってメンバー同士のコミュニケーションの質は明らかに変わったみたいだね。リモートワークで利用できるコミュニケーションツールも色々あるけれど、デザイン現場での使い勝手はどうだろう。

中堅 ビデオ会議を使えば顔を見ながらのコミュニケーションが可能ですが、デザインに関する打ち合わせでは対面での会議と同等とは言えないと感じています。例えば話す際のジェスチャーがあまり伝わりません。対面だと相手の前で手を動かしながら「コレとコレがこう動いて…」と説明できたのですが、画面上で同じことをしても分かりづらいです。

若手 3Dでの動きを議論したときには、説明時の手元の動きをiPhoneで撮ってSlackに貼ったこともありましたね。

シニア 対面での会議では表情や言葉以外の情報も大事だったということだね。そういえば共有ホワイトボードのような機能ってあまり使ってないね。

若手 いろいろなサービスがあって導入のハードルも低いのですが、確かにあまり使っていませんね。

中堅 そういった機能でスタンダードなものとして「miro」がありますが、殴り書きのようなラフ絵を見ながら意見を反映して合意を取るような素早い流れには使いづらいと感じています。物理ホワイトボードは、チープなペンで描く使い捨てメモだと割り切った気軽さや、参加者がどこを見ているか分かるといった部分が良かったのでしょう。

若手 XDにもファイルを共有する機能があるので、複数人で同じファイルを見ながら意見をすり合わることができますが、出た意見をその場でXDにも反映して…とやっていると、どうしても時間がかかってしまい議論が止まる場合がありました。


テキストベースでのコミュニケーション

シニア リモート下ではSlackなどのチャットが重要なコミュニケーションになっているけど、それについてはどう?

中堅 メリットとデメリットがある感じです。テキストを使ったコミュニケーションについてよく言われている通り、非同期でやりとりできたり、あとから見返したり検索できることは大きなメリットです。Slackで複数チャンネルを眺めているだけで複数の案件の進捗をリアルタイムである程度把握できるのも利点ですね。

シニア なるほど。

中堅 一方、主張したいことや伝えたいことを一度テキストに起こす必要があるので、そこのコストが高いと感じることはあります。そのせいでプライオリティの低い説明は省いてしまう傾向があるのは否定できません。疑問点として聞かれたら改めて書けばいいと考え、相手が分かっていそうな部分は詳細を書かずに済ませてしまうといった事例が考えられます。

シニア 対面なら話を聞きながら疑問点があればその場で聞けるし、聞かれればすぐに説明もできる。文字でのやり取りだと足りてない部分を毎回質問する必要があるのは手間と言えそうだね。

若手 でも、相手が疑問に思う可能性がある部分を先回りして説明していたらすごい長文になってしまいますよね。苦労して書いた説明のほとんどが既に相手の知っていることだったら時間がもったいないです。

中堅 そのバランスは相手にもよる部分もあって難しいね。対面なら話しながら相手の雰囲気を見て理解度を推測しつつ、説明の解像度を調整することもできるんだけど…

若手 あと先程も出ましたが、テキストでのやり取りは議事録的な使い方ができるのがメリットだと感じます。過去の発言や経緯が検索できるのはとても便利です。メンバー同士の議論を第三者が見ることができるのもメリットですよね。会話だと聞こえる範囲にいない限り内容を知ることができませんし。

シニア 言った言わないの水掛け論になる心配もないし、議論とその結論が他者にも見えるのは大きな利点だね。

若手 対面の会話に比べて脱線しづらいのもメリットでしょうか。会話に比べて「意見がまとまった状態」で投稿されるので、議論の流れがわかりやすい面があると思います。

中堅 ただ、普段からそういった利用のされ方を前提にしたマインドセットで使わないと、せっかくの利点が発揮できないことになる。必要な語句が入っていないと後から検索でヒットしないし、議論を重ねたあとは出た結論も投稿しておく必要がある。

以前の議論の結果が知りたくてチャットやり取りを検索したら、やりとりが加熱した結果「ビデオ会議で話せますか?」との投稿になり、そのあと「有難うございました」で話題が終わっていて結論不明の例もあった。

若手 対面だからこそ言えるという状況というのもありますよね。口頭なら悪意なく伝わる内容でも、文字だと別の印象をもたれてしまうのは良くある話ですし。

シニア 誤解されない文章を書くのは労力がかかるもの。文章だけのコミュニケーションが難しいのはTwitterでの騒動の数々を見れば一目瞭然だよね。

中堅 テキストベースになると、タイピングスキルがコミュニケーション密度を左右する面もあるのではないかと感じています。タイピングが遅い人ほど本来書きたい文面から大幅に省いてしまったり、投稿自体を躊躇してしまうなど、ある種の障壁になってしまう場面もあるのではないでしょうか。

若手 チャットだと、オフィスでありがちな相手に話しかけたいのに「忙しさを感じさせる圧」に怖気づいて話しかけられないという問題は起きづらいですよね。また自分の都合の良いタイミングで返事をすることができるのも、集中が必要な作業中だったりすると助かります。

シニア 話しかけられているコメントに対してどの程度の遅延まで許容できるかは人によって違うはず。いつまでに返事をするべきなのかは社内で事前に認識を合わせておいたほうが無難かもしれないね。


リモートワークにおけるチームビルディングと個人の成長

シニア チームビルディングへの影響はどうだろうか。

中堅 リモートワークになって作業の個人化がより進み、デザイン面でより尖った感じになった印象はあります。それとトレードオフなのでしょうが、チーム力は弱くなってしまった面が否定できません。

リモートワークに入る前から継続している案件は以前の貯金があるからまだ良いのですが、リモート下で始まる大きな案件でチームメンバー同士の理解や機運がオフィスのときと同じように醸成されるのか、プロジェクトの初速が上がるのかが心配です。

若手 オフィスに行けばオープンスペースはあるので、キックオフはそこでするのもいいかも知れませんね。

シニア それも一案だね。コミュニケーションを円滑にするためスタート当初はビデオ会議を密にするのが良いかも。プロジェクトはメンバーのテンションが上ってノリノリになってくると勢いよく転がり出すもの。いかにその雰囲気をリモートでも出せるかが鍵になりそうだね。

中堅 オフィスではメンバーのテンションが上がる要素が色々とありました。ホワイトボードに貼られた大量のラフやアイデアからプロジェクトの濃度を肌で感じたり、他のメンバーから感じる緊迫感や緊張感のようなものが一種の同調圧力のようになって自分も引っ張られていたように思います。

若手 リモートワークになったことで自分の実力以上のペースを体験する機会が減った気がします。陸上競技で言うなら引っ張ってもらって100mを9秒で走る体験のようなやつです。

シニア オフィスで並んでいた頃は同世代のメンバーに刺激を受けながら一緒に成長していたところがあったはず。リモートワークだと個人のやる気の度合いによって成長の差がより開いていく傾向はありそうだね。伸びる年代のメンバーには影響が大きいかも。

中堅 厳しい条件をやり遂げなければならないプロジェクトでは、苦しい場面をメンバー同士の協力で乗り越えていく過程でテンションが特に高まり、一種の「祭り」のような状況が生まれることがあります。その高揚感の中で困難を乗り越えたメンバーは文字通り「戦友」となり、強固なチームになっていくことが珍しくありません。

シニア リモートだと祭りのような高揚感に引っ張られる場面が少なく、個人の頑張りにかかってくる場面が増えてくる。人間は低きに流れがちなところ、自律心を発揮して高パフォーマンスを維持できるのかが課題だね。

中堅 リモートワークではデザイナーとしての情熱、パッションがより重要になるとも感じています。オフィスであれば、遅くまで残って調整する姿や、ラフ案を大量に作ったり、印刷された検討中のデータが整然と机に並んでいるのを目にすることで、無意識に他人の情熱を感じ取れていました。それが自分の中のやる気を自然と押し上げる効果があったように思えます。

シニア これはよく分かる。リモートだとそういった情熱が伝播する経路が無くなってしまったので、個人の頑張りに掛かるウエイトが増えているんだろうね。こういった部分は組織としてコントロールはできなくても無理なく焚き付けてあげることで、個人の頑張りに任せきりではない体制を考えていきたいね。


デザイン以外への影響が間接的に影響

シニア そろそろ時間になるけど、ここまで話してきた感じデザイン業務への影響に限るとリモートワークはネガティブな面が見えやすいようだね。最後に少しポジティブな面も語ってみようか。

中堅 リモートワークのポジティブな面は実際の業務以外の部分が大きいですね。例えばオフィス勤務で繁忙期に時間外作業となれば家族との時間が取れないこともありました。リモートなら定時後に一旦休憩を挟み家族と食事をしたあと、改めて仕事を再開することができます。フレキシブルな働き方ができるので安心して作業に没頭できますね。

若手 リモートワークのお陰で机周りなど自分の作業環境をオフィス以上に最適化することが出来ています。自分でコントロールできる範囲が大きくなった分QOLが上がり、作業により集中できるようになりました。

中堅 業務が終わったあとに自主的な勉強や実験をしやすくなった面もあります。オフィスだと家族を待たせた状態で残ってまでやろうという気にはなれませんでした。かといって通勤で帰宅してからだと一日が終わった感があってテンションが切れていることが多かったです。

シニア 今まで以上に業務に集中できたり、スキル向上への投資が容易になったりと、デザイン業務への間接的な好影響が大きい感じかな。対面に比べてコミュニケーションが難しいのは事実なので、それがデザインにネガティブな影響として現れないよう常に考える必要はある。オフィスで顔を合わせること自体が大事なコミュニケーションだったはずで、それがないリモートではより積極的に伝える努力をしていくことが大事になるね。

さて、時間になったので今回はここまでにしようか。


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SIFCA TALK 第2回は「リモートワークとデザイン業務」について語ってもらいました。

次回もお楽しみに。


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