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THE IDOLM@STER SHINY COLORS "CANVAS" 03にまつわる雑記

みなさん、お疲れ様です。蜷川です。

結局今年のブライダルってどうなったんですか?という思いがほんのりと漂っていた 2023 年 6 月 14 日にリリースされた CANVAS シリーズの 3 作目である放クラ盤について感じたことを簡単にまとめていきます。

(この記事を書いているときに脳を破壊にしに来るシャニマスくん)

(樹里 STEP も……!????!?!??!?!!!???)


さて、CANVAS 01, 02 と同様に、ユニット曲×3 となっているところが CANVAS シリーズの特徴になっていて、3 曲構成にもいろいろな使い方が出てきているのが各ユニットの個性が出ていて良さがあります。

なお、本 CD においても作詞は古屋真氏が全曲担当しているので、以下のクレジット情報では作詞担当については省略します。



M1: ハナサカサイサイ

クレジット情報

作曲・編曲:金山秀士(Dream Monster)、Guitar:アッシュ井上(Dream Monster)、All Other Instruments & Programming:金山秀士(Dream Monster)

シャニマスでも『アポイント・シグナル』の作編曲の本田正樹さんや、『常咲の庭』の作編曲の田熊知存さんが所属している Dream Monster に比較的新しく参加している作家さんです。

広いジャンルに適応できるサウンドづくりが見られますが、特に和テイストな音作りは現時点での作品で得意としていそうです。

ギターで参加しているアッシュ井上さんもドリモン所属。ギター的な感性が表面的に出やすいですが、バンドサウンド全体としての構成の仕方がすっと飲み込みやすい、夏っぽいさわやかな曲が得意な人という印象があります。

↑にじさんじのソロ曲 CD シリーズでは放クラ作詞担当の古屋真さんと組んだ楽曲もあります。

和テイストを印象付ける徹底したヨナ抜きのメロディー

作編曲の金山さんの紹介の際にも和テイストな曲を得意としていそうという話をしましたが、今回の『ハナサカサイサイ』も楽器レベルでかなりお祭り曲に仕上がっています。

曲の構成とそれに受け答えるような歌詞やコールの詰め込みにより、狙い通りライブにきた人間の体力を根こそぎ奪いつくすような楽曲です。

ただ、単にお祭りっぽい楽器やコールを入れているだけでは日本のお祭り感の曲に仕上がるとは限りません。

この曲のお祭り感を作り出しているのには明確なメロディーの特性があって、それはすべてのメロディーがヨナ抜きのメジャーペンタトニックスケールを貫いていることです。

ヨナ抜き音階は西洋音楽的な七音階のうち短ニ度(半音)の繋がりになっている音を使わない音階で、中国音楽や演歌、また場所は離れてスコットランド民謡の基本音階です。

ヨナ抜き長音階とその平行調のニロ抜き短音階が簡単のために同一視されて語られることもありますが、受けるイメージとしては同じところがあるので今回は細かいことを気にせずに、上の例も含めた以下の楽曲でも使われているものだと考えると感覚的にそうか~と思っていただけると思います。

(『蛍の光』はもともとスコットランド民謡で、そこに日本語詞を宛てたものです)

(実は 2 つの調のペンタトニックスケールの交差を用いてメロディーを変えずに転調をしている、聴けば聴くほど恐ろしい怪作)

(やっぱこれだね)

ヨナ抜き長音階でメロディーを構成する楽曲としては完璧というか教科書のような楽曲になっているとすら感じさせます。

ヨナ抜き音階楽曲から感じる玉屋2060%(Wienners)へのリスペクト

放クラ楽曲の特徴としてはリアルアイドルの楽曲文化を踏襲したテイストが際立っていますが、今回この徹底したヨナ抜き音階を貫くことでやはり玉屋2060%(Wienners)氏へのリスペクトを感じないわけにはいかないと思います。

(サビの入り前にヨナ抜き長音階をなぞってからサビに入るとサビメロは完全にそのヨナ抜き長音階で構成されます)

(途中経過音として"ナ"の音が入りますが、サビはほぼ純度 100% のヨナ抜き長音階)

(Aメロもいいね)

(もともとヨナ抜き音階を使う傾向があるけれど、楽曲のテーマもありより意図的に使っていそうな曲)

これまでもリアルアイドル路線を匂わせる楽曲は放クラにいくつかありましたが、『ハナサカサイサイ』はもうさすがにリスペクトがないと言ったらあほちんという状況かと思います。

シャニマスはこういった作曲者の個性が強く出るような人には曲を書いてもらわないブランディングをしていて、それを理解はしているものの、やっぱり作曲家の個性ゴリゴリの曲も浴びたいなという気持ちも捨てきれませんね……。

M2: 全力アンサー

クレジット情報

作曲・編曲:藤井健太郎(HANO)、Guitar:藤井健太郎(HANO)、Bass:土井達也(HANO)、All Other Instruments & Programming:藤井健太郎(HANO)

相合学舎や CANVAS 03 の有彩色ユリイカなど、シャニマスでももうおなじみの藤井健太郎(HANO)さんの作編曲で、ギターも担当されている楽曲です。

ベースでの参加の土井達也(HANO)さんは M3 の『日めくりモザイク』でもベースで参加。提携先の LOVE ANNEX のプロフィールを見ていただければわかる通り、実は様々なアニメ・ゲーム作品でベースを弾いています。 

(『わがままハイウェイ』のしっとりファンキーなベースが好き)

ゴリゴリのバンドサウンドと気持ちよく歌わせる詞の魅力

思い返してみれば『全力アンサー』的なゴリゴリの全力ロックは放クラでなかったな~と曲が出てから改めて思いました。青春バンドみたいなことはノクチルがやってくれていたので、それでいくらか満足していたのかもしれません。ただ、今回はノクチルとはちょっと合わなさそうなゴリゴリでギラギラなバンドサウンドに仕上がっています。

メロディーに関しては CANVAS 02 の『有彩色ユリイカ』で話した藤井健太郎さんのメロの 2 つの方向性のうち、ギターを持って歌うときに一番気持ちいいメロになっていますね。相合学舎もその方向性のメロでしたが、今回はどの楽器を持ちながらでも気持ちよくメロディーをお腹から出したくなります。

効果的なポイントとしては、サビは特に小節頭にインパクトを付けて、テンポ感を出しつつ息継ぎもしやすいようにしているのかもしれません。

サマース『コール』 飛び出『そう』
果てない『方』に透かす手は「緩」めない
もう「決」してないこ「の」時?
「で」も何度も会える!
フォトグ『ラフ』 盛りまく『ろう』
やがて 『等』身大は 3000 【「サン」ゼン】倍であれ

(だか『ら』)宝【たか『ら』】物は 『なん』でもなくて「いい」
今 『愛』じゃ救えないもの『なん』てないよ が
今の『ア』ンサー

『全力アンサー』の1サビの小節頭を括弧でくくっています。また、意図的に(だから)の前に改行を入れました

上記は1サビの詞に各小節の頭に相当する部分に括弧をつけたものです。改行前の部分で『』でくくった部分では『オウ』の発音でほぼ統一されていたり、後半の少ししっとりめになる部分では『ア(ン)』で統一されていたりと、メロディーだけでなくそれに呼応するように詞からも歌うときの気持ちよさにバフをかけられています。

モチーフは「ブレイブソウルサラウンド」?

【kimagure全力ビート!】園田 智代子
昔買ってた衣装くん
Pデスクのこの機能うれしいよね

楽器編成的には果穂にもギター持ってもらう必要があるんですけど、やたらとキーボードっぽいトランペットの音が左から鳴っているのも説明がつくような気がします。(左からずっとトランペットが鳴っているので右側に側転したくなるような圧がある感覚も……?)

ないとは思いますが、ライブでも「ブレイブソウルサラウンド」を来てくれたら嬉しいですよね。さすがにないとは思いますが(あってもいいよ)。

M3: ひめくりモザイク

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作編曲:牧野太洋、Guitar:牧野太洋、Bass:土井達也(HANO)、All Other Instruments & Programming:牧野太洋

M2 に続いて LOVE ANNEX の布陣による楽曲。牧野太洋さんはこの『ひめくりモザイク』が名義で初の作曲に携わっているという新進気鋭のクリエイターさんです。1999 年生まれで大学 4 年時(2020 ~ 2021年?)に DAW を触り始めて 2023 年夏には自身が作曲した曲が商業で出ているという、ね。すごい。

平成のジャニーズ的なおしゃれポップスサウンド

どことない懐かしさを感じさせるサウンドで、SMAP や V6 に西寺郷太(NONA REEVES)がサウンドプロデュースで入った曲だとこんな感じになりそうだなという感覚が初めて聴いたときに湧いてきました。

イントロの頭とかあまりにも平成すぎて好(ハオ)。シンセサイザーの使い方がすごく聴きなじみのある雰囲気を出していますが、ノスタルジー感というのもこういうところからきているんですかね。

"CANVAS" シリーズの M3 における「色」

"CANVAS" シリーズ 01 の『BRIGHTEST WHITE』と 02 の『有彩色ユリイカ』に続く形となった『ひめくりモザイク』。

『BRIGHTEST WHITE』では様々な色に相当する波長のヒカリが混ざった結果としての白、『有彩色ユリイカ』は無彩色でない豊かな世界の中で目指すべき一点を見出すことに焦点が当てられていた詞でしたが、今回は放クラらしく、さまざまな色を知ってそれらが寄り合うことの尊さが描かれているように感じました。

新しいノートの一行目で しゃんとするとき

『全力アンサー』より

それはそれとして↑の歌詞の感性すごすぎ!

おわりに

全体を振り返ると、リアルアイドルへのリファレンスを持ちながらこれまでやっていなかったところも含めて別ジャンルの曲をバランスよく盛り込んだ盤という印象があります。

楽曲の性質的にも TIF 適性高いと思うのでぜひ放クラにも出てほしいなぁ~~という思いが強くなりましたね。元々 TIF に出演する層をその文化の中で直接引っ張れる気はするんですけど、どうですかね、高山さん。


前:"CANVAS" 02 についての記事はこちら↓

後:"CANVAS" 04 についての記事はこちら↓


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