『火花』を読みました(趣味)

又吉直樹『火花』を今更読んで、いい本読んだなという実感と自分が好きなもの(バンド趣味;❸)との繋がりを見つけたのでツイートしよ〜🎶って書いていたら3ツイート分の下書きを超えたので諦めて話題も増やして一箇所に。

元の質は長文用ではなくツイートの延長なので悪しからず。ネタバレあり。夕方に借りてきて半日かからず読了&咀嚼タームに入ったので興味があれば是非。(読めと言いたいわけではないが、ハードル低いよ〜!のお伝え)

❶読書メーター記録しました

目的ない図書館散策中、知ったタイトルだから眼に留めて「流行りものに興味を持てない病的な傾向の治療」と思って手に取った。

読んで、流行りものってちゃんと面白いから評価されてるんだなと思って感想綴った。他人の感想を読んだらあまり良さを汲み取れていなかった人が多そうで、少し残念。



❷流行りものについて

主人公の師(芸人の後輩/先輩)がお洒落個性的が同義に扱われることに異議を唱えた一節が特に印象的だった。

流行っているのなら、それがいかに少数派で奇抜であったとしても、それは個性だとは言えない。それを最初に始めた者だけの個性であり、それ以外は模倣に過ぎない。

『火花』又吉直樹 p.83


流行りものへの懐疑って流行っている対象自体を疑っているのではなく、「流行っているから」と他人の言葉を借りて対象を肯定して喋る多数派への懐疑なんだなと言葉に落とし込めた。

そう思うと引用の指摘の通り模倣ではない個性に価値を認めることになる。

この模倣ではない個性に置いた価値の最たるものは、ニッチなところを攻めた着眼点の鋭さというより、もっと多くの人に受け入れられている流行りものを自分の言葉で噛み砕く力だなぁと感じた。

変に斜めに構えてマイナーなものに詳しくなっていくより、評価されているものが何故評価されているのかを自分なりに表現できることが一番強い、と私は思う。

(マイナーものをを開拓するのはもちろん別の価値があるからなのだろうけど、それは今回は別の話なので置いておく。)

マイナーなものを愛好するのは素敵だと思うけれども、その、好きなマイナーなものを使ってメジャーなものを否定する(斜に構える)のが一番ダサいと常々感じている(自戒でもある)ので、この学びは大切にしたいよね。


❸世間について、聴き手について

本当の地獄は、世間の中にこそある。僕の眼に世間が映る限り、そこから逃げるわけにはいかない。自分の理想を崩さず、世間の観念とも闘う。

p.134

主人公は師を尊敬してたくさんの学びを得て、最終的には師とは違う道を選ぶ。芸人を引退する。その決意の表れが先の引用。

この「世間の観念とも闘う」から、少し含意は違うかもしれないけれども、私は斎藤宏介さんの言葉を思い出しまして。

もし地球上にUNISON SQUARE GARDENの3人しかいなくなったとして、それでもバンドは続けていると思うんですけど、でもその状況だったらきっと今みたいな曲とは異なるものができるんだろうなって想像するんですよね。

MUSICA 2023年4月号

この言葉がすっと出てくる辺りが、信頼して好きと言える所以だな〜と感じたのでした。

斎藤さんソロインタビューではあるけれども、「自分のため、でも聴き手のことも考えて」というのはUNISON SQUARE GARDENの共通見解で間違い無くて。

芸術家/表現者は何か衝動に突き動かされて、伝えたいものがあってそれに取り組むのが最初の動機なのだろうし、その動機に正直であることが最終的な作品の質に影響するのだと思う。

芸術家自身の満足の点で言えば鑑賞者の要否はわからない。本当に誰にも分かられなくてもいいから、と作ったものに満足する人もいるのだろうし、誰かから評価を受けてよりその作品に満足できる作家もいるのだろう。

しかし、芸術家自身の心の中を窺い知ることはできないので、結局鑑賞者としての私はほんのわずかでも鑑賞者(音楽なら聴き手)を想定した作品を好きになることが多いだろうし安心して好きと言えると思うのです。

自分たちのため、でも最後のエッセンスに聴き手を想定する。これによって変わるのは読点の打ち方一つ、間の取り方一つかもしれないけれども、それがあるかないかで伝わり方が全く変わることがきっとあるので。

この感覚が「世間と闘う」自覚があるかどうかなのかなと噛み砕いた。

そして、『火花』の主人公は芸人をやめてしまうけれども、ユニゾンは『自分の理想を崩さず、世間の観念とも闘う』を貫いた結果淘汰されず勝ち残った人たちなので、尊敬の念が生じる。

自分らしく、を尖りすぎずにしかし鋭利に磨き上げるセンス、カッコいいよね‼️

〜fin〜

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