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在野のグッドほとけ#1 般若寺、上海、赤山禅院、修善寺

国宝や重要文化財ではないけれど、なんとなく心に残った仏像を紹介する在野のグッドほとけ(ざいやのぐっどほとけ)という記事を書いてみようかな、と思って早半年。ようやく記事に出来るくらいのほとけ写真が集まった。そもそも仏像にはまったのは高校の日本史の先生がいかに薬師寺の日光菩薩・月光菩薩の腰がエロいか熱弁しているのを聞いてからだが、そこから数えると10年以上たっていることになる。

薬師寺の日光・月光。日本史の先生いわく腰がエキゾチックでエロい、現物は想像の3倍でかい

高校でに仏像沼にはまり、大学では仏像や仏画などお寺のボランティアガイドをするサークルに入って、色々な寺宝を解説しまくった。あれは上手くいったときに聞いてくれてる人が拍手してくれるのでなかなか面白かった。(この時プレゼンの練習をしまくったのが活きているのか、今も月に50回ぐらいプレゼンする仕事をしている。)

それで今。個人的に好きだが、あまり注目されていない仏像についても改めて語ってみたくなった。


奈良・般若寺 如意輪観音座像

奈良・般若寺 2022年1月撮影

愛おしい!うたたねしているかのような穏やかな表情。このポーズは如意輪観音によくある思惟相(右手をほほにあてて考えるしぐさ)なのだろうが、春の陽気にうつらうつらしているように見えてしまう。右上にひっそりと描かれる如意輪。これは古代インドの武器・チャクラムが変化した、煩悩を破壊する最終兵器なのに可愛げがありすぎる。そして如意輪観音と言えば6本の腕!なのだが分かりにくくて控えめなのも面白い。

スタンダードな如意輪観音はアマゾンで超カッコいい彫刻が売られていて、高画質の商品紹介画像もあるので比較してみてしてほしい(これいつかほしいけどめっちゃ高い!)。仏を表す象徴物が紅蓮華だったり、煩悩を爆殺する武器を持っていたり、わりとシリアスな観音菩薩のアタックフォームなのだが、それがこの変わりよう!でもポージングが同じなのがかなり愛おしい。

もう気も頬も思わず緩む

ちなみにこの如意輪観音像、奈良の般若寺に行けば、お庭に何体も置いてある。なんとなくランダムに置かれている感じも面白い。春の魔法のうららかグッバイブレイションな表情に癒されてほしい。
広い境内がお花で満たされるようなお寺なので、こんなに優しい石仏がうつらうつらしているんだろうか。

上海・震旦博物館 いかつい如来

正直全く知らない人

次は上海の博物館で見た如来像。中国の仏像のルールで作られているので、正直何を表したものかわからないのだが、如来界のデトロイトメタルシティ的ないかつさがある。衣に無数の仏像がくっついてるのが、数で威圧するヤンキー感があるからだろうか。

いや、これは螺髪がとんがってるからかもしれない。ストリートファイターIIのエドモンド本田みたいな頭突きをしたら強いかも。ほんで横から見たらすんごい福耳。このいかつさで顔もガングロなのに微笑みをたたえているのが怖い。福の押し売り。いや福のマルチ商法。釣りバカ日誌で間抜けな主人公をやってる西田敏行が、アウトレイジでヤクザ役をやってるのを見ちゃった時みたいなドキドキ感がある。

同じ博物館に太古のダンサー像も保管されていた。ダンサーインザダークである。

京都・赤山禅院 十六羅漢像

京都は左京区、赤山禅院という天台宗のお寺がある。その境内に十六羅漢像というお釈迦様の生え抜きの弟子たちの像が置いてある。涅槃に入ったブッダから、この世を託された16人の勇者たちなのだが、赤山禅院の十六羅漢は頑張りすぎて全員メチャクチャ辛そうなのである。苔もすごいことになってるし、全体的にひび割れている。

あと、なんか知らんけどめっちゃリアルなのよ。こういう人いるいる、って感じの表情をみんなしている。一人一人の顔に人間味があって、四季折々でその時期に合わせて苦しんでる感じもしてすごい。

もう仏法がどうこうって顔じゃない、「寒い、疲れた、早く帰りたい」って感じで天を仰いでる。

静岡・修善寺 仲良し仏像

どうしてこうなったのか分からないが、思わずにやけてしまうくらいほほえましい。めっちゃ少額の賽銭、ジャストサイズなのかわからない赤い前掛けみたいなやつ。いい。

手水舎の角にいた獅子、よくみると牡丹か何かをくわていてめっちゃキザな貴公子

修善寺は伊豆半島の山の中にある温泉地で、なんと手水(手を洗うところ)で温泉が出ている。メチャクチャ心地いい。伊豆は桜の時期が早いらしく、3月前半でも桜が満開で面白かった。

静岡・大室山 五智如来地蔵尊

伊豆に大室山というお椀をふせたような面白い形の山がある。年に一度山を丸ごと焼いたり、山の真ん中に大きな穴(カルデラ)があってそこでなぜかアーチェリーが嗜まれていたり、ゆるキャン△の聖地だったり、ヒドラが生まれた山だったりするのだが、実はそんな場所にも仏像が置かれている。

こちらのブログより引用

よくみるお地蔵さんと少し違う。髪が螺髪になっている如来像だ。五体いるので密教で大事にされている五智如来なのだが、こういう風にお地蔵さんのようになっているのはかなり珍しいと思う。この仏像のいきさつも横の看板に書いてあったのだが、面白かった。「強力兄弟という力持ちが、一体ずつ三回に分けて背負って、現在地に運んできた」というのだ。運び人の名前よ。

このホトケの最高なところは、仏像から見たときの眺めの良さだ。この世の全てを見通すであろう智慧や真理を司る五智如来が、最高の眺望を毎日眺めている。こっちまで嬉しい気持ちになる。

というか大室山、あまりにも眺めが良すぎる。遮るものが何もない伊豆の風景を360度パノラマで眺められる。ちょっとの間だったら自分も6人目の如来として参加したい、とかいったらその辺の和尚に喝を入れられそうだが、そう思うような絶景なのである。

こういった形で、特に重要文化財の指定を受けることもなく、野ざらしなのでどんどん風化してくのが在野のグッドほとけの特徴なのだが、そんな中で自分だけの如来様や観音様を見つけていけたら、ちょっと楽しいんじゃないかと思う。また紹介したいホトケ様が出てきたら、第二回、第三回と続けていきたい。


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