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恐山夏の旅 その弐 〜死後の世界の扉〜

初日はイタコの口寄せをあきらめ、恐山を巡ることに。まだ祭りも2日目とあってそこまで人がいない。ゆっくりと見て回ることができました。立派な門構えから奥へ行くと、私がイメージする「死後の世界」が広がります。

あなたの知らない世界

恐山の創建は862年。夢のお告げに導かれ、諸国に教えを説いた慈覚大師円仁が旅の果てに開山したのが恐山菩提寺なのだそうです。

本堂の横へ入ると、白っぽい岩場が広がります。参拝コースは1周約3キロ。仏教における8大地獄のほかに、計136もの地獄があるのだとか。まさに生き地獄ですやん。

賽の河原ではあちこちに岩が積んであり、風車が供えられています。風を受けて一斉に回り出す風車。まさに「あなたの知らない世界」な風景。

草履やおもちゃ、お堂の中には大量の衣服に花嫁人形。どれも死者のために供えられた物です。丘の上には本尊と同じ延命地蔵尊。まわりにはお地蔵さんに救いを求めるように、たくさんの風車が供えられています。

4つの温泉

この恐山、じつは1万年以上前に噴火したと言われる休火山で、あちこちに硫黄が吹き出ています。硫黄臭がしますが、私はすぐに鼻が慣れてしまいました。しかしこの硫黄がくせ者で。電化製品がすぐ壊れるのだそう。

実際、帰宅後に携帯電話の充電がしずらくなったり、手持ち扇風機の金属部分が真っ黒になったりしました。宿坊の中にある自販機も壊れるというのですから、だいぶキツいんでしょうね。カメラ大丈夫かなぁ……。

霊場内には4つの湯小屋もあります。男1つ、女2つ、混浴1つがあり、参拝者なら無料で自由に入れます。中はシンプルな湯船が2つ。洗い場などはなく、シンプルにお湯につかるのみです。本来は参拝前に身を清めるそうですが、現在は参拝後に汗を流すために入る人も多いようです。

霊場内の湯小屋

霊場恐山のお箸

宿坊へ帰ると、祭りのさなかと言うこともあってかにぎやか。老々男女(若はいなかった……)でいっぱいでした。部屋は全部埋まっているようでしたが、近くの3人部屋は誰も来ないまま、用意だけされていて。廊下も薄くらいので、通るときなんか怖い。結局、翌日まで空いたままでした。

宿坊の部屋。シンプルです

宿坊は朝晩に精進料理が付いています。品数が結構あって豪華。ごはんは一応おかわりもできるようですが、なくなり次第終了。大広間で五観の偈(ごかんのげ)を唱え、みんなでいただきます。

夕食。フルーツもあります

五観の偈とは食前に唱える食する心構え5つのこと。その2つめ「二つには己が徳行の全欠を忖って、供に応ず」。私はこの食事を戴ける程、日夜精進努力しているか反省するということらしいのですが、改めて食事できることにもっと感謝していただこうと思いました。

「霊場恐山」の文字入りお箸

お箸には「霊場恐山」の文字。こちらキレイに清めて明朝も使用します。その後は持ち帰りオッケー。家でも愛用していますが、ご飯をいただくたびに身が引き締まる思いです。

食後はお坊さんの法話があるそうですが、その時間は大浴場が空くと考えて、参加しませんでした。読みは当たり、人っ子ひとりいませんでした。逆に怖い。

宿坊にはテレビがなく、携帯の電波も入りません。場所によっては弱く入るようですが、うちの部屋は全くダメ。近くの山に大きな自衛隊のレーダーがあるのですが、関係あるのかな。白くてデカい人工物はじつに無粋な印象です。強制的にデジタルデトックス。夜は更けていきました。

その参 へつづきます>

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