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「千の鳥が見守る国」

島根の県庁所在地・松江のシンボルといえばやはり松江城。日本に数多の城あれど、往時の天守閣が現存するのは12しかなく、さらに国宝に指定されているのはたったの5つのみである。そのうちの1つが、ここ松江城なのじゃ!!と言うことなので亀田山(標高29m)をせっせと登る。

その頂きで僕を出迎えた国宝天守閣。雨で濡れた瓦と板張りの壁は、よりねっとりと黒さを増していた。以前訪れた松本城も同じように黒黒とした出で立ちで、別名「烏城」なんて呼ばれてるけれど、松江城の別名は「千鳥城」。千鳥足とか千鳥格子とか言うが、実際どんな鳥なのかピンとこなかったので調べてみたら、想像してたのとぜんぜん違う。全然黒くないのだ。ふっくらとして何とも愛くるしい鳥なのだ。どうやら色は関係なくて、その三角屋根の形状から名づけられたらしい。

天守閣の中に入り急な階段を登っていく。最上階まで上がると望楼からぐるりと松江の街が見渡せるのだけれど、如何せん僕は極度の高所恐怖症。柱につかまって小刻みに震えながら、その絶景を堪能したのだった。南側に広がる城下町の向こう側に見える宍道湖。夕日が美しいと言われる宍道湖。その絶景を見ずして死ぬべからずと言われる宍道湖。城を出た後、ほのかな期待を胸に秘めて向かった僕を迎えてくれたのは雨で増水し、ただゆっくりと暗くなっていく湖畔だった。湖畔の芝生ではウサギが跳ねていた。まだ死ねないなと思った。

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