馴れ初め その1「好きになるまで」

二人の馴れ初めを記録として残しておきたいと思って、
付き合うまでに僕が思ったことを、とても長くなるとは思うけど書いていこうと思った。

(結局、これを書き切るのに2ヶ月かけた。
細かいニュアンスとかが少しずつ気になって、
他のことを書きつつ、推敲を繰り返す日々。)

最初は彼女が怖かった

男4人で麻雀ゲームをやりながらdiscordでのボイスチャット。
夜も遅くなり、翌日に予定のある2人が先に抜け、
僕ともう一人の友人だけが、時間を持て余していた。
「妹がオンラインだから三人麻雀するか。」
友人がそう言い出し、僕も暇を潰せるならと。
「妹も友達とボイチャしてたから一緒に来るらしい。」

入って来たのは、友人の妹とその友達、“彼女さん”。
彼女さんは、乃木坂オタクで、その日は彼女さんの推しの誕生日。
友人の妹と、彼女さんはその流れで会話が盛り上がっていたらしい。
当時の僕は、乃木坂を全く知らなかったので、
3人が乃木坂関連の話をしているのを、聞き手側に回って聞いていた。
彼女さんは、自分に気を使って、
とても熱心に乃木坂のことを教えてくれたし、
僕も興味本位で色々と聞いていた。
僕からすれば、暇を潰すための麻雀、初対面の人と世間話をしている程度のことだった。

数日後。
discord経由で彼女からDMが来た。

「あまりゲームとかしないんですけど、先輩がおすすめのゲームとかありますか?」

麻雀の時の会話で、友人が自分のことをゲームオタクと紹介したからだと思った。
正直、おすすめのゲームなんて調べればいくらでも出てくるし、何で自分なんかに聞いてくるんだろうと思った。
何か裏があるんじゃないか。
僕は彼女がちょっとだけ怖かった。

勘違いしそうだった

とりあえず、自分がやっているゲームの中から取っ付きやすそうなゲームを挙げ、ゲームの説明をしつつ、
「敷居は高いと思うので…」みたいな忠告をしつつ、返信をした。
「今度詳しく教えてください!」
麻雀の時の会話で、好きなものにはすごい熱量を持つ子なのは何となく感じ取っていた。
その熱量が、今ゲームに向いているんだと思った。

その夜、ただただゲームを教えるためのボイチャをした。
ゲームについて熱く語ってしまったと思う。
アイドルの話も分からないなりにしてもらった。
冗談の感じもすごく波長が合った。

それからは彼女から何度もDMが来た。
「ここが分からないので教えてください!」
「後で、このボス倒してください!」
彼女がゲームにハマってくれて嬉しかった。
そう、彼女はゲームがしたいだけ。
ずっとずっと勘違いしそうな自分を抑えるのに必死だった。


それくらい彼女との会話は楽しかったけど、
僕は自分に自信が無かった。
十数年前、アニメやゲームにハマってオタクになった僕は、当時の彼女に「オタクはキモすぎるから無理」と言われ別れられた。
まだオタクに理解のない時代。
小学生時代からの付き合いだった彼女は、突如としてオタクになってしまった僕を散々貶した。
それ以来、僕は女性との距離感が分からなくなってしまった。

初めての出会い

時同じくして、別の友人と某オンラインゲームを始めた。
そのゲームに自分が時間を使うようになったのもあり、
一緒にやりませんか、と彼女にも勧めた。
彼女とプレイする用のキャラクターを作り、時々ではあるが一緒にプレイした。
彼女は僕より社交的で、ゲーム内でのフレンドもどんどん増えていき、僕と一緒でなくても自主的にどんどんゲームをプレイしていった。
彼女が自分でゲームの知識をつけていって、
僕がゲームを教える関係はもう終わっていた。

それでも彼女は、何かと理由をつけてボイチャに誘ってくれた。
ゲームもせずに会話をするようになった。
ただひたすらお互いの話。
学生時代どうだったとか、どういう環境で育ったとか。
「彼女いるんですか?」って聞かれてすごく困惑したりとか。

ある時、彼女からご飯を食べに行かないかと誘われた。
こういうご時世なので、ビデオをONにした飲みが限界で、ずっと会うことは叶わなかった。
彼女はずっと、会って話がしたいと言ってくれていた。

待ち合わせ場所に来た彼女を見て、僕は驚いてしまった。
僕より10cm近く背の高いスラッとした女性が歩いて来たから。
身長の話は既にしていたけど、実際に目の当たりにすると、
驚く他なかった。

実際に会って話しても、彼女はいつも通りだった。
自分の趣味の話はすごく楽しそうにするし、僕の趣味にもすごく熱量を持って歩み寄ってくれた。
こんな人が彼女なら幸せなんだろうな、と思わずにはいられなかった。

自分なんかには不釣り合いだ。
彼女がそういう目で見てくれているわけがない。
彼女と一緒にいると自分のすべてがコンプレックスに感じた。
すごく幸せで辛かった。

閑話休題:彼女の気持ち

「話の聞き方とか接し方とか、すごく気を使ってくれてるのが分かって、何だか分からないけど惹かれた。」

彼女は初めて会話をしたあの日から僕のことが好きだった。
僕からすれば、今でも信じられない。
初めての麻雀の席。一つだけ心当たりがあるとすれば、
人よりちょっとだけ聞き上手ではあるということ。
彼女は初対面の会話で、すごく気が合うと感じたらしい。
彼女は僕と距離を縮めるために「おすすめのゲーム」という話をしてきた。
会話を重ねれば重ねるほど好きになってくれていた。
どれだけアプローチをしてもうんともすんとも言わない僕にキレそうだったとまで言われた。


今後のことも考えて

彼女のそんな気持ちもつゆ知らず、僕は彼女との友人関係を続けるのに必死だった。
好きになってはいけないと思い続けた。

出会って数ヶ月。
クリスマスイブ。
彼女からいつものようにボイチャのお誘いが来た。
会話の中で翌日の予定を聞かれて、暇ならご飯に行きたいと言われた。

別に特別なところに行ったわけではない。
いつも行く地元の洋食屋でいつものような話。
今日が何の日かなんて、多分彼女は気にしてなくて単に暇だったから誘ってくれたんだと思っていた。
そろそろ帰ろうかってなった時、彼女がちょっと話があると言って来た。

「そろそろ敬語やめて欲しいんです。」

彼女と数ヶ月過ごして、すごく仲良くなっていたのに、
それでも僕は一線を引くために敬語を使っていたからだ。
何で急にそんなこと言われたかよく分からなくて、
それでも彼女に「やめて欲しい」なんて言われたのが始めてだったから、不快な思いをさせてしまったのだと思って、すごく焦った。
彼女も意図が伝わらなかったのが分かったみたいで

敬語だと距離を感じちゃうので、やめて欲しいんです。もうそういう距離じゃないと思うので。」

彼女にそう言われて少しだけ安心した。
さらに続けて

「◯◯(名字)さんじゃなくて◯◯(名前)ちゃんとかで呼んでほしいです。」

「で、先輩が良ければ、私もそろそろ呼び方変えたいなって思うんですよね。今後のことも考えて。」

「私、何か勘違いしてますか?・・・合ってますよね?」

彼女がずっと照れ臭そうに話を進めてて、
何も直接的なことは言われてないのに、
嫌でも気持ちが分かってしまった。
知りたかったようで知りたくなかった気持ち。
彼女に「目を覚ました方がいいですよ」と言ってあげたい気持ちと、全てを受け入れて楽になりたい気持ち。

今思えば痺れを切らした彼女のパワープレイだったと思う。
「つまりそういうことだよね?」「そういうことです。」
みたいな漠然とした会話でお互いに気持ちを確認をしながら。
さすがの僕も彼女の気持ちに向き合うしかなかった。
ずっと向き合いたかった気持ちに向き合った。
その日から二人のぎこちないタメ口での会話が始まった。



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