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連載「休眠預金活用レポート」VOL.3 住む場所を得ることが難しいすべての人に、こころ安らげる住まいを届ける  

単身高齢者、外国人、生活保護受給者、ひとり親世帯など、住居を簡単に借りることができない「住宅確保困難者」の方たちが増加しています。一方で、少子高齢化や相続の問題などで増え続けている空き家。この2つの社会問題を結びつけ、住む場所を確保することが難しい人たちに向けて、安く物件を提供できないか。こうした発想のもと、事業を展開するベンチャー企業がRennovater株式会社(京都府京田辺市)です。休眠預金事業を活用してどんな取り組みが進んでいるのか、レポートします。

空き家をリフォームして良質で安価な住まいを提供

Before                                                                      After  

今年、Rennovater(以下:リノベーター)が所有する賃貸物件の数は100戸を突破。2020年の39戸から比べると2年で約2.5倍増えたことになります。物件は全て自社物件で、休眠預金事業からの助成や金融機関、投資家などから調達した資金で、拠点のある京阪神エリアと首都圏の空き家物件を購入しています。高齢化で誰も住まなくなった家、親や配偶者から相続したものの使っていない物件など、空き家は築40年以上の古い物件が中心。購入金額を抑えるとともに、空き家の処分に困っている家主の問題解決にもつながっています。また、購入物件のリフォームを自社で行い出費を最低限度に抑えることで、良質で安価な物件の提供を実現しています。

セーフティネットから漏れてしまった人を取り残さない

貸し出すのは主に、住宅確保困難者と呼ばれる人たち。単身高齢者、外国人、生活保護受給者、ひとり親世帯をはじめ、DV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者、保証人や緊急連絡先を確保できない方、コロナ禍で生活が困窮しこれまでの生活を維持できなくなってしまった世帯などのケースも。いずれも一般の不動産会社では賃貸を拒まれる場合の多い層を対象としています。
敷金・礼金、連帯保証人は原則不要。自社物件なので仲介手数料も取らず、家賃の平均は4.9万円ほど。自治体などが提供する公的な住宅はありますが供給数が足りているとはいえず、また審査等があったりするなどすべてのケースを受け入れられるわけではありません。セーフティネットから漏れてしまった人たちが健康を維持し、最低限度の文化的な生活を送ることのできる住みよい住宅を提供する。これがリノベーターが実現している事業です。
最近では個人だけでなく、自治体や社会福祉協議会といった行政機関からの依頼や相談も増えています。近隣自治体と連携して住まいの提供を行うなど、新たな展開も始まっています。

「住み続けたい」「前向きに生きられている」の高い満足度

リノベーターの松本知之代表取締役社長が掲げるミッションは、「すべての人に、こころ安らげる住まいを」。松本社長は幼い頃、父親の経営する会社が倒産。苦労している両親の姿が、リノベーターが展開する事業の根幹にあります。ミッションの中の「安らげる住まい」の言葉は、住宅の確保だけにとどまらない決意を物語っています。雨漏りの連絡を受ければ自ら出向いて修繕を行い、家賃の振り込みが難しい世帯には領収証を持って家賃の受け取りに歩きます。最近ではひとり親世帯の居住者へ向けて、積立給付金のサービスも始めました。
松本社長が行うこうしたソーシャルワーカー的な役割について、入居者の一人は「『苦しくなったら、いつでも声かけてきてや』と言ってもらい、安心した暮らしができている」と語リます。定期的に住人に実施しているアンケートでは、「住み続けたい」「前向きに生きられている」の項目では5段階評価で4ポイント以上。いずれも前年度から1ポイント上がっており、住民にとってリノベーターの提供する住宅が「こころ安らぐ場所」となっていることを示しています。

新たな調達資金1.25億円、高まる事業拡大の期待値

安価な家賃で収益は出るのか?低所得者の借主で家賃回収に不安がないのか?などの疑問が浮かびますが、「低価格で物件を購入」「低予算で改修」「安価な家賃で入居者の負担を少なく」「住み心地の良さで長く住んでもらう」ことで、事業を継続するための収益をあげることができます。
今回新たに金融機関やファンドからが調達した資金は1.25億円。リノベーターの事業が未来へ向けて大きなインパクトを期待される事業であることがわかります。資金は引き続き物件の確保に活用し、家賃を安価に抑えることのできる自社物件の強みをさらに強化していくとともに、自治体と連携したエリア展開を広げていく予定です。目指すのは、住宅確保困難者を対象とした賃貸住宅のロールモデルを確立し、日本における低所得者向け賃貸市場を確立すること。「誰一人取り残さない」持続可能なサービスを実現していきます。

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