【蒸留日記 vol.93-2】アカエゾマツの蒸留inニセコエリア!(新蒸留法応用編)
さてさてお待たせしました!
前回道南アカエゾマツの蒸留に引き続き、こちらvol.93-2では新蒸留法を用いての蒸留記事となります。
ようは、蒸留素材の事前処理に工夫を加えて、香りや収量の向上や蒸留にかかる光熱費の軽減を目指した蒸留パートですね!
こちら今回93-2とは異なる"通常蒸留"での記事となります⤴︎⤴︎
ではまいりましょう〜!
●新・処理工程を導入!
23年度のアキレア蒸留シーズンに導入していた蒸留の新兵器・・・ガーデンシュレッダーを初めてマツ葉素材に応用しての蒸留となります!
ガーデンシュレッダーの蒸留への応用は、他の蒸留事業者さんを見るとやはり樹木系素材での蒸留の際に使用しているのが見受けられます。
エフゲニーマエダもそれを見よう見まねで電動機械化するに至りました。
手でひたすら細かく刻んでると本当二度ととやりたくなくなるんですよ…
初導入は針葉樹蒸留シーズンとは真逆の初夏に導入していたのですが、使途はマツ素材だけじゃあないんです。
アキレア(キク科)やミント系(シソ科)の太く硬い茎を短時間で粉砕処理するのにもかーなり重宝しており、今年のアキレアオイル(青い精油)の量産を支えていました!
それらの茎を1日に何度も細かく庭バサミで刻むのも手がぶっ壊れそうになるので機械化したい一心でした。
加えて、トウヒ属素材(エゾマツ、ドイツトウヒetc…)は精油の抽出率が一際低いことで「平成林業。」では有名。。。
なので、どうにかしてこの低い抽出率を素材の加工法次第で改善できぬものか〜〜と、あらゆるマツ系素材で検証を繰り返していました。
●L'Nouvelles Technique.
フランスの香料関係の論文か蒸留所のページで読んだんですが、、、
①精油の香りの質向上と②収量向上のために、釜底の水を毎度新鮮なものを足さずに前回蒸留の蒸留水を足すことでテルペンが水に溶出するのを防げる!というのです。
なので水に素材のテルペンが溶け出なくなる分、香りのより強い・幅や味わいのある精油が得られるそうなのです。
すごい納得。
で今回からこの方法・スキルを応用していくことにしました。
香りもどれほど大きく変わるのか試してみたいので!!
(量出る蒸留水の保管もリソース食って大変なんですよ・・・)
■粉砕蒸留1回目。
Materials
新メソッドでの初回蒸留の素材重量は3613グラム。
Distillation Time
蒸留時間は93-1の通常蒸留3時間より大幅に短い、1時間半としました。
モミ属トドマツの葉っぱに比べて硬いトウヒ属アカエゾマツの葉と枝ですが、粉砕機によって素材がかなり細かくバラバラになっていて断面が多く出ている状態なのでじっくりと蒸し出す必要がなく、蒸留時間を大幅にカットできるのです。
粉砕機を利用した反面、人力処理では釜に加えないほどの太い枝素材も含んでいるので、精油の香りがややウッディーに傾く可能性もありますが。。。
蒸留結果は…!?
蒸留開始直後のようす。
精油の抽出率が低いことで有名なトウヒ属精油ですが、新処理を用いたことで滴下開始直後からとんでもない量の精油が溜まっていく様子が…!!!
開始から30分時点でのようす。
この30分時点ですでに前回・通常蒸留の抽出量を凌駕してしまいました…新素材処理、驚きです!!
蒸留抽出が早すぎるためか、精油が白濁しています。
蒸留時間1時間半での抽出結果。驚くほどの大量抽出を達成しました…!
【収油率】
■粉砕蒸留2回目。
Materials
2回目のアカエゾ粉砕素材の重量は4359グラム。
Distillation Time
今回も1時間半で蒸留実施。
1回目に比べて素材重量/物量が746グラム増しているので蒸留時間を気持ち長めに回しました。
蒸留結果は…!?
蒸留時間1時間半過ぎでの抽出結果。
前回より746g多いためか、精油が1回目より多く溜まっている。
【収油率】
■粉砕蒸留3回目。
Materials
3回目のアカエゾ粉砕素材の重量は5244グラム。
山から下ろしてきたアカエゾマツ枝葉の処理がラストとなったので(ややむりくり)押し込みました。笑
なので計量器の上限を振り切る素材重量5キロ超え、、、
まぁ予定をさらに長引かせず1度に収まってよかった(笑)
Distillation Time
今回は釜につっこんだ素材量がなんと5kgを超えてしまったという事情もあり、、、
蒸留時間を伸ばして3時間としています。
いわゆる素材を粉砕処理した上で、素材を人力処理した前回93-1と同様の時間でどれぐらい抽出率に差が出るか?を調べます。
なので93-2での1回目2回目(1時間30分/90min)と比べて2倍の蒸留時間となります。
意図としては、粉砕処理蒸留であれ、開始0分〜90minでの抽出量に対して90min after〜での抽出率の比を観測したいワケです。
針葉樹という素材はラベンダーや柑橘果皮のように1時間分できっかし精油が出なくなる素材と違ってジリジリと出続ける性質があります。
(↑1時間半を見過ごして検証実施できませんでした!)
蒸留結果は…!?
【収油率】
■考察/Discussion
う〜〜〜ん、どうやら素材の重量・グラム数が増えると抽出率が下がるようです。これだけはわかりました!
釜に粉砕素材を詰め込みすぎると蒸気がうまく抜けてくれなくなるんでしょうか?
という今回の結果考察を踏まえて、別日にまたアカエゾマツ枝葉を入手して2500g または3000gほどで再度検証してみたいと思います。
前回(通常蒸留)93-1との収油率の差
前回、人力で庭バサミで枝葉を細切れにして蒸留する方式を2回行いました。収油率はそれぞれ0.396%と0.396%となっていました。
ほぼ同じ条件で蒸留したのでちゃんと同水準で抽出されているのがわかりますね。
そして素材を粉砕機で細かくした上で蒸留を行なった今回だと、それぞれ0.691%と0.665%と0.629%となりました!
ということは、得られる精油がざっと2倍になったことになります!
そして蒸留時間を半分にすることを達成しました!
針葉樹素材では、素材をとにかく刻むことで収油率を上げられる
ラベンダーでは精油を含んでいる部位が花構造の表面に集中しているので素材粉砕を行うと香りを悪変させ、精油も処理中に揮発して減ってしまいますが、、、
松ヤニや細胞中に精油成分が含まれる針葉樹素材となると、素材を刻むことは"蒸留時間の短縮"や"抽出量の増大"など、どうやらプラスに働くようであることがわかりました!
ということを踏まえると、北海道は針葉樹素材が豊富に存在する北国なので、精油の生産量を底上げし、北海道で精油・香り事業者が活躍しやすい土地であることが言えそうですね!
〜関連記事リンク〜
アカエゾマツ蒸留関係。
北海道での同属樹木ドイツトウヒの蒸留記事。
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