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【蒸留日記vol.84】栽培量世界一!フランス産ラバンジン'Grosso'を蒸留する!

さてさてこんばんは。
ラバンジンラベンダー蒸留編の第二打者はみなさま大好きラバンジン・グロッソになります!

このラバンジン品種もれっきとしたフランス産品種なので仏語読みするとラバンダン・グロッソなのですが、最も優れた選抜品種という事で各国こぞってこのグロッソを栽培しているので世界共通名称の"ラバンジン・グロッソ"として当ブログでは表記することとします。

ちなみにこちらが昨年実施したグロッソの蒸留回でっす⤴︎⤴︎


蒸留実施日は23年8月10日になります!
Distilled day of 10.08.2023!

■Lavandin ‘Grosso’のプロフィール!

外見も香りも"よりラバンジンらしい"L. x intermedia 'Grosso'

▶︎Lavandin ‘Grosso’品種の歴史

今日に至っては説明不要なほど世界各国で栽培され、本品種の精油も世界一生産される、いわばラバンジンラベンダーとしての代表格であるグロッソ(Lavandula x intermedia 'Grosso')
世界で最も普及し商用栽培・生産されるようになった背景にはラベンダー栽培史上でのちゃんとした経緯がありまして、、、

栽培の機械化も進み、ラベンダー精油の生産が最も盛んであった1950年代後半南フランスにて、広大に栽培されるラバンジンに"とある感染症"が流行しはじめます。
「ラベンダー枯れ病」という、自然枯死の数を大きく上回る大規模枯死(1度で農場経営を傾かせるほど)が当時栽培の主力品種だったラバンジン・アブリアルに襲いかかりました。(この頃に'Super'も登場か)
詳細はラベンダーやローズマリーだけを狙うハムシが大規模栽培されるラバンジンに目を付けたことで共に数が増え、ハムシが媒介する感染症の流行規模が大きくなったのでした。
そして1970年代になると、石油危機の到来合成香料の発達世界的な香水の好まれる香りの変容などによってラベンダー精油の単価が下がり、各栽培者らは以前のように枯れては植えを繰り返すという感染症の対抗策を打つのが難しくなってきたのでした。
そこで南フランス・ヴォークリューズ県の豪農ピエール・グロッソ氏が選抜した強健ラバンジン品種'Grosso'が感染症に対して優れた抵抗性を見せたため、途端に南フランス中に広まったのでした。

▶︎Lavandin 'Grosso'の発見

ピエール・グロッソ氏が’Grosso'を作出したのはラベンダー枯れ病が大流行してからではありませんでした。
グロッソ氏本人にインタビューを行い証言を得ている書籍「ラベンダーとラバンジン(1985)」から内容を引用するのですが…
1950年代半ばに恐らくは枯れ病被害によって経営を諦めた人の耕作放棄地の中にひときわ大きく育つラバンジンが生き残っており、その株を挿し枝繁殖させたことで「大柄であり」「強健に育ち」「精油収量も多い」Lavandin 'Grosso'が作出された、とされています。
感染症にもすこぶる強いという特性は、後の1970年代に入り見出された品種特性だったようです。

北海道中富良野町のファーム富田でも主として栽培されるラバンジン・グロッソ

基本的にはラバンジン・グロッソは大柄に育ち、その分精油の抽出量も多いのでフランス以外での世界各国でも好まれて栽培される品種となりました。
環境適応性も高いので栽培土壌にそこまでのこだわりを持たず、その幅広い栽培地特性も世界への本種の浸透を手助けしているようです。

▶︎暗い影を落としているフランス・ラベンダー栽培地での枯れ病

ラベンダー精油の採油産業が始まった南フランスですが、長いラベンダー栽培の歴史とともにラベンダーの流行病にも苦しんでいます。
シソ科に特有して食害を与えるヨコバイが媒介するStroblrファイトプラズマという枯れ病の原因となっている細菌
この菌が起こすラベンダー枯れ病に対してラバンジン・グロッソは強靭に耐える品種として1970年代より現在まで栽培主力となっています。
が、しかし枯れ病の発生から60年経った現在でもこのStolburファイトプラズマが引き起こすラベンダー枯れ病問題は解決できておらず、むしろ昨今の気候変動と相乗する形で被害拡大の傾向が増しているとフランスの研究機関が報じています。

2020年代現在でもラベンダー産業の先行きは暗いまま
https://hal.science/hal-01603189/document(引用元)

南仏ラベンダー産業の先行きをさらに暗いものにしているのが、この2020年のラベンダー枯れ病に関する論文の序論一節に書かれている「近年、耐病性品種のグロッソにまでも病害が増加している」という内容。

フランスをはじめとする欧州のラベンダー精油生産は大半をラバンジン・グロッソに頼っていますが、そのグロッソにさえ枯れ病の猛威が向きはじめているようなのです。
(本論文を深く読み進めると、ファイトプラズマの媒介節理挿し穂繁殖が主のラベンダー栽培法の相性の悪さがわかる、難しい問題なのです)

▶︎市販流通エッセンシャルオイルとしてのLavandin ‘Grosso’

一言で「ラベンダー」と言ってしまえば、L.angustifoliaL. x intermediaL.stoechasL.dentataL.multifidaもみんな"ラベンダー"にあたるわけですが、精油業界においても書き分けが甘かったり詳しくない事業者が販売などをすると、このラバンジン・グロッソ精油であってもリラックス効果を謳う「ラベンダー精油」として説明され販売されがち。
というのも、コモンラベンダー精油よりもラバンジン精油は単価が安い事もあるのです。
ラバンジン精油は基本的に、刺激的な香りを持つ樟脳・竜脳を含むのでリラックス効果は期待できません。その香りが極めて少ないか存在しないのがコモンラベンダー精油であり、その点が2者を大きく分ける違いだったりします。

昨年、無印良品から国産のラバンジン精油が発売されました。
生産地表記は兵庫県となっており、恐らく大面積のラバンジン・グロッソ栽培畑がある多可町産のグロッソ精油だと推察しています。
富良野産-ファーム富田のグロッソ精油とも香りの性質が異なっているのがおもしろいです。

グロッソの次点に入手しやすい同系統'Super'精油との比較

手軽に入手できる双方とも”ラバンジン系統種”の精油

大きく比較対象として比べられるのが、ラバンジン精油内においての「グロッソ精油」「スーパー精油」でしょう。
フランス国内でのそれぞれ2種の生産量でいうとグロッソ80%に対しスーパー5%といった大差ですが、市場価格の差はそれほど開いてるわけではないようです。

やはり大きな違いは香りで、グロッソは交配元ヒロハラベンダーの性質が特に発現しているのか強くカンファラスな刺激的な香りがし、スーパーは対してコモン寄りであるためか樟脳感が極めて少なく、澄んでいて甘さが感じられる香りがします。
時代によってはグロッソのような強い香りのあるラバンジン精油も好まれて香水に使用されていた時代があったようです。

◾️Lavandin ‘Grosso’ Photo

わが園では定植4年目となり、大株に育っているラバンジン・グロッソ
花穂の詳細①
グロッソの花穂はラバンジンの中でも"より青い"とされ、ドライブーケにも向くとされる。
花穂の詳細②
雨を受けて花穂の下らへんは色褪せが進んでしまっている。

■収穫&蒸留準備!

グロッソに関しては収穫開始前後の写真を撮っていませんでした!
なので収穫完了後からの様子でゴカンベン。

Material weight 372g

去年と同様、花の香りをよりわかりやすくするために葉茎を可能な限り落とし、花穂のみにして蒸留することとした!結果、収穫重量は372グラム。

ちなみに去年の収穫重量は291グラムで、同様花穂のみに切り分けての蒸留となっている。精油品質を変えたくないので蒸留方法は同様とした!(そりゃ当然よ)

■蒸留結果は…!?

昨年度抽出していたグロッソ精油とを足して撮影
昨年度の抽出量記録では4.8mLであったので、差し引き推定12-4.8=7.2mL

昨年の蒸留で得られた精油量は写真の右に写る5mLバイアルにギリ収まるくらいの4.8mLだったのだが、今年はひときわ多く推定7.2mLとなった。
毎年株が大きく、採れる精油の量も増えていってる…?

1.収油率

抽出量[7.2 mL ]÷ 素材重量[ 372g]x 100 = 1.935%

8/10開花後期のLavandin 'Grosso'蒸留の収油率

グロッソの収油率、すげーーーーーーー高い!!!
2%に肉薄するほどの高い収油率はひっさびさに見ました。
さすがグロッソ様様といったところでしょうか…!!

2.香りとか

まっててね!


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若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。