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北インド・チャンディーガルでル・コルビュジエの建築を見る


チャンディーガルにあのル・コルビュジエの建築群があるという話はどこから聞いたのか、あまり記憶がありませんが、何となくインドにいる間に見に行ってみようと考えていました。

前職で営業担当が時々出張に行ってるなあということはありましたが、基本内勤の私に出張の機会は巡ってこず、休みを利用して単身チャンディーガルに行ってみるかと重い腰を上げたのは、コロナ禍直前のダシェラでした。
ダシェラはホーリー、ディワリに並ぶインド三大祭のひとつ。開催時期は大体ディワリの一か月前くらい、祭りの由来であるラーマ王子が魔王ラーヴァナに勝利したという神話にちなみ、ラーヴァナを模した巨大な人形を燃やすのが習わしです。デリーやグルガオンでも街中で人形が燃やされているのを見かけます。

デリー・グルガオンからチャンディーガルは頑張れば車でも行けますが、せっかくのダシェラ祭にドライバー氏を酷使するのも申し訳なく、デリー空港から単身国内線で飛びました。

チャンディーガルにあるル・コルビュジエの建築は「州議事堂」「高等裁判所」「合同庁舎」など、行政機関の建物で現在も使われていますので、フラッと行って見て写真を撮るわけにはいかず、州政府が実施する建物見物ツアーに参加するのが唯一の方法。このあたりのルールはホントにコロコロ変わるので実際に訪問する際は確認必須なのですが、私は大体の下調べで行きゃ何とかなるだろうと考えていたため、到着した当日はツアー開催されておらず断念。ガードのおじさんに「明日また来な」と言われスゴスゴ帰ろうとすると、親切にも「モニュメントなら見れる」との情報を頂き、先にいわゆるオープン・ハンドモニュメントを見物致しました。

オープン・ハンド

チャンディーガルのシンボルことオープン・ハンド
一応こちらが表でしょうか

サイズ感が分かりにくいですが、高さは26mあるとのこと、周りは原っぱというか雑木林というか何にもないうえに私以外観光客もおらず、心ゆくまでぼんやりとモニュメントを眺めていられます。ちなみに風の力でゆっくりと回転しております。この日はツアーに参加し損ねたので他にやることもなく、親のかたきのようにじっくりとモニュメントを眺めていたので、最後にはこれは手のひらなのか鳩なのか、ゲシュタルト崩壊してました。

高等裁判所

翌日朝10時くらいに言われた通りキャピトル・コンプレックス周辺に集まると、係員の人がやってきてツアーに無事参加できました。

この建物(キャピトル・コンプレックスツーリストセンター)が集合場所
記載の通り2016年にユネスコ世界文化遺産に登録されました

このツアーで見れるのは「高等裁判所」「州議事堂」「政府合同庁舎」の、州の三権を司る建物で、これらを総称してキャピトル・コンプレックスと呼びます。プラス同敷地内にある「オープン・ハンド」「影の塔」といったモニュメントも見ることができます。しかしこの日は州政府の都合により「合同庁舎」は見れず、裁判所と議事堂だけは見ることが出来ました。あくまで現役の州政府の建物なのでこういうこともあります。

高等裁判所全景
緑、黄、赤の色遣いが大胆
車と比較するとこのくらい大きい
水平に連続した窓のファサードがまさにル・コルビュジエ建築

ツアー参加者はインド人だけでなくアジア人、西洋人もちらほら見られましたが、日本人はいませんでしたね。裁判所の後は「オープン・ハンド」ですが、これは前日夢に出るほど見たのでスルーして、裁判所の対面に位置する「州議事堂」へ。

州議事堂

裁判所側から見た議事堂全景 手前の建物は影の塔 左奥に合同庁舎の姿が
こちらが影の塔
影の塔内部より 一日中どの角度からも日が差さないように設計されているのだとか
めくれ上がったような造形の庇がインパクト大
新宿駅西口ロータリーの換気口のような屋根の上の造形物は採光面だそうで、真下に本会議場があるそうです。内部が見たかった・・・
適当に切り取っても絵になります
正面玄関の大扉に描かれた絵は、ル・コルビュジエの原画を元に描かれたもの
こんなところにサインが。落書きされてますね。
合同庁舎も近くで見たかったのですが、この日はこの距離まででした。

州議事堂の方がめくれ上がったコンクリートの庇に、プレート上の柱、正面玄関の抽象画など、実用に適するかどうかよりも、立法府としての権威の象徴としてデザインされている感がありました。用途不明の謎のメガ・ストラクチャーのようで近くで見ると威容に圧倒されました。

日本国内にル・コルビュジエの建築は上野の国立西洋美術館だけ。そう考えると3つも4つもコルビュジエ建築が密集しているこのエリアは建築好きには垂涎モノの観光スポットではないでしょうか。建築好きでなくともこの迫力は一見の価値ありです。

ただチャンディーガルってコルビュジエ建築以外特に見るものないんだよなあ、と私も思っていたのですが、何となく近場の名所を検索しているロック・ガーデンなる場所が。

ロック・ガーデン

1950年代、ル・コルビュジエの都市計画に沸くチャンディーガルにネック・チャンドという建築家がおりました。彼自身も都市計画に携わる身ではありましたが、それとは別にたった一人で産業廃棄物などを再利用して作り始めたのがこのロック・ガーデン。1957年に着手した彼の全く個人的なこの事業は1975年に市当局に発見されるまでの18年間周囲にばれることなく続けられたというので驚きです。毎日仕事を終えた夜間に自転車で廃材や河原の石などを拾い集めて作り続けていたらしく、そのモチベーションはいったいどこから・・・と背筋が伸びる思いがします。

不気味な人形その1
不気味な人形その2
とにかくこういうのばっかり

18年ひたすら作り続けたモニュメントの数々に圧倒されます。市の職員さんもびっくりしたことでしょう。勝手にこんなもん作りやがってとならなくてよかったですね。

滝とかもあります
コルビュジエ建築より大人気

狭い通路や出入り口を行っても行っても謎の人形やモニュメントが続くので頭がくらくらしてきます。元気で時間があるときに気合を入れて見に行くのがおすすめです。富や名誉を欲するでもなく、ただひたすら18年もの間誰に知られるでもなく庭園を造り続けた執念に圧倒されます。そのくせに出来上がった庭園はどこか牧歌的で今でも地域住民に愛されて遊び場になっているのですごいです。

ダシェラの燃える人形

ダシェラ期間だったため夜は例のごとく人形を燃やすお祭りをやってました。

人形に火がつけられると観衆は大喜び
普通に火の粉がめちゃめちゃ飛んでくるので危ないです

あまり下調べせずふらりと行った割には見どころ盛りだくさんのチャンディーガルでした。またそのうち再訪したいところです。

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