短編・実話怪談『心霊”未遂”事件』 第五話 ~独泊~
お前って、本当に陰キャだよな。
・・・俺?俺は相変わらずよ。なんなら一人でキャンプに行くほどになったぜ?
にしても、マジ考えらんないわ。俺からすりゃお前みたいにずっとネットと読書で満足しているなんてな。
まぁお互い様だろうけどな。お前からすりゃ、ずっとスポーツで大学も就職も推薦で入って、今でもアウトドア派な俺なんて人生無駄な時間を過ごしているって思ってんだろ?
それにしても久しぶりだなぁ。何年ぶり?五年・・・六年ぶりかぁ。
え?ソロ・キャンプって怖くないのかって?
いやマジお前には分かんないだろうけどさ、なんつーの?原始に還る的な、今の人間の生活の方が偽りで薄っぺらい世界だって感じるよ。
何か怖い話が無いかって?
・・・正直、たまにあるよ。怖い時がね・・・・・・
野生
まぁよくある話が「野生の獣」だよな。でもこれはちゃんとした知識があれば殆ど出く合わないからそんなに危険ではない。クマや野犬みたいな野獣は、よく聞く話だと思うが鈴やラジオ等の点けっぱでこっちの存在をアピールしていれば向こうから勝手に逃げていく。
実際に危険なのは鹿やイノシシのような草食動物。半端な知識で、
草食動物=大人しくて安全
みたいな考えで人間が近づくと、咄嗟な逆襲を食らう。鹿の角はなかなかの凶器で怯えから発生するその衝動は、肉食獣の威嚇のように分かりやすい警戒態勢ではないからな。そういった先入観で近づいてケガするパターンが多い。
もしそういった獣と出会った時は、とにかく動いたり追っ払ったり近づかないことだ。ジッとして無害な同じ自然動物の一つとして振舞えば、勝手にどっかへ行きやがるからな。変に騒ぎ立てるから奴らも焦ってビビっちゃうのさ。
場所、地域によってはヘビや蜂の方が危険だし、寄生虫やマダニのような小さい生物の方がある意味怖いぜ。テントや自分の傍にいつどうやって来るのか分からないし予測は不可能に近い。
縄張りや繁殖期、出没エリアといった習性がある哺乳類は対処というか、予防と予想ができるからな。
自然
殆どの登山家なんかが一番怖いのは自然災害って言うと思うぜ。
土砂崩れだとか川の氾濫とか、そんな一般人が想定できる分かりやすい災害ってのも基本的には無い。そんな被害はよっぽどの知識不足でただ楽しそうだからってだけの”にわか”だったり、逆に地元だからって油断した現地の人だったりが巻き込まれることがある。当然だが雨が降った後は地盤が緩い場所と川の宇曲地で遊んではいけない。
そんな分かりやすくて大袈裟な災害ではなく、もっと単純に「気温」とかの熱射病とか低体温症、斜面で転倒したり低い崖で足を踏み外したりの「凡ミス」がリアルに怖いこと、死に直結する意味で最恐だ。
まぁ普通はキャンプや登山に、特に一人で行く場合は誰かやどこか登山ポストや警察に登山届を提出をしてから行くので、最悪は大丈夫だが楽しみにきた休みがそれで丸々潰れて、プラスして何日間も無駄に救出を待つっていうこと自体が恐ろしいだろ?
その辺も慣れてきて”舐めプ”する奴は、申請が面倒臭いっつって出さないのも居たりな。
幽霊
心霊現象ってのは、”多分”ないと思う。そもそも俺にはそういう霊感なんてのは無いからな。っつか、そんな人がソロキャンなんてそもそもしねぇんじゃね?深夜の山や海の浜辺ってマジで漆黒の暗闇だから、そうゆう系の怖がりは霊感ってのが無くたって、もう全部がそう見えて感じてしまうと思うよ。
なんでかって言うと、実際には色んな「音」と「気配」だらけだからな。だから”多分”・・・なんだ。
例えば、夏は様々な小動物の生活音が特に夜はうるさい。
昆虫類の声もうるさいし、夜行性の動物が結構多いんだよ。だから気配なんてのはそこら中からする。補整されたキャンプ専用場とかはそこまでじゃないけどな。俺はそういう有名所には行かない主義だ。
・・・その理由はまた後で説明するよ。
冬の山は草木が軋む音や朽ちる音で騒がしい。
・・・あ?ああ、そうそう、みんな静かで落ち着く空間を求めて行くだろ?実際はどの季節も都会の喧騒ぐらい騒がしいんだよ。
冬は、まぁ孤島とか南国は違うけど基本的に日本列島は風が強くなるだろ?木枯らしから季節風が吹き荒れるからその草木の騒めきと、木って温度変化で伸び縮みするから歪み朽ちる音とか、聞き慣れていないとかなり不穏で不気味に聞こえると思うよ。しかも夜ってとことん闇の中で蠢くから。
本当に静かな場所に行きたいのなら、開けた場所、例えば大きな湖の畔とか乾燥し切った草原とか。
だから・・・そう、結果論だけどあれは自然物では無かったのかも?というのが・・・・・・
深夜、ふと目が覚めてしまう時ってあるでしょ?その時もたまたまそんなタイミングだった。本当は良くないんだけど、火を焚いたままテントの中で気が付いたら寝てしまっていて、消しに行こうとしたら
・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・・・・
って、足音がした。
さっきも行ったけど、俺はあまり人が来ない場所で本当の”ソロ”になりたいから、獣の足音や気配はよくするけど人間はまぁ無い。しかし、その足音は一つだけで明らかに二足歩行だった。
まず説明しておくと、実際の人間だった場合お互いの存在認識をし合っていた方が、遭難時や何かあった時のためにも挨拶程度はしておくのが暗黙のルールだ。普通の登山でもすれ違った人とは必ず挨拶をしなきゃいけないって聞いたことない?その理由はそういった事でもあって、まぁ・・・他の意味もあるんだけど。
え?他って?
んー・・・例えば簡単に言うけど
一つ、お前は本当に人間か? っていう確認と
二つ、お前今から死にに行く? っていう意思確認。
三つ目が、さっきのお互いその後の安全確認のための把握だ。
何かがあった時の目撃証言や不審者だった場合の足取り調査とかな。
だから、普通の人であれば周りをウロチョロしたりと不信な行動はせずに声を掛けてくるはずなんだ。
そいつはずっとテントの周りを回っていて、焚火の前を通ったはずだが不思議と影が伸びてこないんだ。研ぎ澄ましていた神経だったから遠近感が狂い気のせいかもしれないが、足音は焚火の手前から聞こえていたと思う。しかし、影がテントまで伸びてこないってことは火の向こう側を歩いているということになる。
そうしてこっちも黙って静かにしていたら、足音は遠くへ行って去って行った。俺はその後、外へでて確認する勇気はなかったよね。これは幽霊関係でも怖いけど、人だった場合の方が百倍怖い。
数時間、とりあえず一人用の鍋を持ちながら警戒していた。とっくに火も消えて目を開けているのか瞑っているのか分からない暗闇の中で、いつの間にか俺は寝てしまっていた。
翌朝。
鍋じゃなく料理用の小さなナイフに持ち替えて、恐る恐るテントから出て行った。しかし燃え切った焚火痕があるだけでその他は何も異常は無かった。
予定としてはもう後、二日はそこで泊まるはずだったが直ぐ切り上げて当然のように還ったよね。
数日後。
その山の管理者から連絡があって、そして警察から事情聴取を受けることになった。
何故ならその山の、そして俺がキャンプしていた近くから埋められて遺棄された死体が出てきたらしい。
・・・ってことで、あの足音の正体って・・・『どっち』だったんだろうね・・・・・・
人間
そんな感じで、どっち?なに?どれ??みたいなものが多いし俺の”これ”は明らかな足音だったし、そんな「お化け??」みたいな雰囲気はするけど俺たちが気が付いていないような出来事なんて一杯あるんだろうなぁ、って話だよ。寝てる間とかにね。これはよくあるような聞いた話だけど、テントのすぐ外にまでクマが来て目が合った、って話が一番有名だしお前も聞いた事あるんじゃない?特番ニュースとかでもよく取り上げられてるね。
んで、さっき俺が言ってた、そんな経験をしてても人気の無い奥地や辺地を選ぶ理由なんだけど・・・・・・
当初は俺も公共のキャンプ地や名所てきな場所で楽しんでいたよ。同じキャンプ仲間も出来るし人の交流も楽しんでいた。しかし、ある日そういった区切りや間取りがあるキャンプ地でのんびりしていて、そこは山菜やキノコ、季節によるけど栗やら銀杏やら自己責任で自由に取っていいって場所があって、山の中を仲間と三人で色々と山の幸狩りをやっていた。
で、俺ら三人が色んな収穫を終えて下山する時に二人の男性とすれ違った。で、当たり前のように「こんにちはー」と、挨拶をするが向こうは無視しやがった。三人が三人とも目を合わせ、無言の「見えたよな?」と目で語り合い、ある程度、離れてから確認し合った。まだその時刻は昼過ぎぐらいだったこともあるし変な奴らに関わり合うことの方が厄介だとも思い、そのことは忘れるようにした。
夕食は採ってきた山の幸の数々でBBQ。友人が作ってくれた山菜の天ぷらが絶品だったことでよく覚えている。そしてよく覚えている理由のもう一つ・・・・・・
俺は便意を催し、仮設で設置されたトイレへと一人で向かった。
駅や公園、公共の場のトイレって異常に臭くて不衛生だから本当はできるだけ入りたくはないけど、どうしての”大”の方だから仕方が無かった。管理者が住み込みレベルで経営している大きなキャンプ地ではキレイで問題はないが、管理会社や現地の人などに管理を依頼しているような場所だと清掃などはそんなだったりする。最近、特にそういったのが多い気もするな。昔はその山の所有者っていうか地主とかオーナーは個人的な交渉が多かったが、最近では別の管理者を立てていることが多い。
で、ちょっと調べたんだけど日本では固定資産税とかも上がり、とりあえず所持していることが損する程になったとか。だから山や土地を出来るだけ早く売り捌くようにしてしまう。その土地の管理不行き届きだと訴訟される事も増えてきている。木が倒れて来て怪我をしたとか、動物に襲われてその責任を所有者へ取るようにといった内容で。
勿論、本当にそういった被害がある場合もあれば、そうじゃないケースも・・・・・・
まぁ、色々不便な時代と国の制度などにより売りたい人が増えて、そして多くの外国人が買いたいという「需要」すらある。今の「円安」がその拍車をかけている。
つまり、所有者が外国の資産家だから管理は現地の人を雇ってさせているというケースだな。
さて、その基本パターンがある上で聞いて欲しいんだが、俺が昼に採取して食べた謎の木の実が原因なのか、そのキャンプ地のトイレで腹痛に耐えながら頑張っていると、トイレの裏手かどっかから
『日本語じゃない言語での会話が聞こえた』
正確に言うと、恐らく二人の男性が外国語で会話をしながら、一人は別の誰かと電話をしていて、そいつは電話でカタコトの日本語を通話相手と喋っている状態だった。その時の聴こえた日本語だけを言うと
聞いたその時はいまいちよく分からなかったが、ずっと引っ掛かっているワードが「攫う」「女子供」「一人」「ターゲット」
何だったのか、どこの国の人だろうか・・・・・・
【※実際には見た目と言葉で人種の特定は出来ていたが、ここでは発言を控えさせて頂きます】
ID
その夜、気になったから後の二人にこのことを言った。俺よりその二人のキャンプ仲間の方が歴が長く何か知っているかもと思ったからだ。
すると、一人がこう言った。
「・・・それはヤバイな。明日の朝一で下山して逃げよう」
何でか、ってもちろん聞いた。その話を要約すると、そいつらは○○マフィアの人間の可能性が高い。『人身売買』を目的にしている。色んな意味で日本人は狙われているんだとか。
仲間に聞いたことと、後で俺なりに色々調べたんだけど、まず日本人が狙われる理由は『ID』と『内臓』そして『私怨』
様々なルートがあるが順番にまず『ID』とは。
日本のパスポートって世界一優秀なのは知ってる?人種としても大人しいってのと世界からすれば『経済大国』というレッテルは変わらない。日本人が自国に来てくれて多く金を使ってくれることを望む国は多い。今の「円安」で大量の中国人が日本に買い物をしにきているて話はニュースでもいつもやっているだろ?それの逆みたいなもんさ。為替とはあくまでも円とドルだけじゃあない。取引をしている国は全てレートがあるから、あくまでも対比として円が強い国もまだまだある。
それと永世中立国のスイス程ではないが「非核三原則」などの戦争に対する考え方でも、他国からすれば安全な国であることが大きい。
だから、近隣のアジア圏の者からすれば日本人であるという『ID』が色んな意味でも、欲しい=需要、があるんだ。
例えば?
んー・・・分かり易くいえば「スパイ活動」だな。
臓器
次は『内臓』
世界一、平均的に長寿な国はどこだ?
そう、日本だ。
世界中の財閥や資産家がその裕福で贅沢な私生活の結果、どうなる?
そう『生活習慣病』だよな。
そうして金に物を言わせて欲しいのは『健康な臓器』かつ、さらに金が余っている奴らが考えることは?
そう、より『健康的で長持ちな臓器』の方が価値が上がる。
日本食や健康志向が世界中に広まるってのは、そういった負も呼ぶんだよ。
私怨
そして『私怨』
日本人は多神教だった影響もあり、寛容な人種なのが基本だ。幕末や敗戦後、多くの外国人が往来しているのもあり普通であれば『人種差別』という感覚は”外国と比べれば”薄いだろう。云わば半強制的に外国の文化を教育させられている。良い面もあれば良くない面もあるけどな。
しかし、世界は違う。特に『陸続きの大陸』はどのような歴史があった?
そう、侵略と争いの日々だ。部族間抗争が現代でも新興国の奥地の国で勃発している。昔の先進国の大陸もそうだっただろう。常に侵略に脅え対策が必要だったし国内での裏切りも多い。暗殺やスパイにも気を使わなければならない。
そういった歴史的な『私怨』が世界では付きまとうのが普通なんだ。国によれば「偏向教育」を国家が行っている話も聞いたことが無いかい?どのようなナショナリズムやイデオロギー、プロパガンダがあろうが、そういった助長が隠れた一種の「冷戦」だよな。
そんなことをしている国が多いからさ、人種による「価値」が変わるらしい。
聞いた話だが「人身売買」の価値ランキングが裏社会ではあるらしい。俺が聞いたのでいくと、トップ10内に「日本人」が入っているんだってよ。さっきの『臓器』としてや『ID』も要因だが、他には「ロシア人」「ドイツ人」も含まれている。その理由の殆どが『私怨』と『〇奴隷』目的なんだって。それもあくまでも「そのルートでは」ってことだ。その人種の「総数」も価値には入るらしいから、ロシアと日本は共に1億と数千万人程度だろ。一般的な「希少価値」も考慮しているんだって。
な?
要するに『人間が一番怖い』ってことさ。
・・・そういやぁお前、ずっと家に籠っていたら病気になるぜ?
今度、よかったら一緒にキャンプ行こうぜ!絶対楽しいからさ!
【※私はその場では愛想よくしていたが、その後その友人とは連絡先なども変えて縁を切った。そんな経験と知識を持ちながら、未だにキャンプを趣味としていることに私は恐怖心を隠しきれない・・・・・・】
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