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官僚を目指した話 教養区分受験記①一次試験

ご無沙汰しております。初めましての方は初めまして、X(旧Twitter)のFFの皆様はいつもお世話になっております。さて、この度私Noahは、去る10月1日に行われた2023年度の国家公務員総合職教養区分試験、俗にいう『教養区分』を受験いたしました。

然程需要がないのは分かっていますが、私が官僚を志した理由や一次試験までどう過ごしたのか、当日どんな感じだったかというのも出来るだけ仔細にお伝えしたいと思います(執筆時点では一次試験の合否すら分かっていないことをご留意ください)。


そもそもなんで官僚になりたいと思ったのか

①安全保障に携わりたかった

これが一番重要な理由。昔から世界史や政治経済が得意であり、それが転じて安全保障に非常に興味があったので、そういった安全保障関連に将来的に携わりたいと高校時代から考えていた。大学の推薦入試で書いた将来の夢にも『外務省職員』と書いてあった(なお筆者は語学力が壊滅的なので外務省へ入省できる可能性は相当程度低いことは記しておく)。

結局大学入学後もこの気持ちは変わることがなく、日本に置いて直接的に安全保障に携わるアクターと言えばやはり中央省庁という考えも変わっていないので、官僚を志すことと相成った。

②民間で働くのがあまり向いてないと考えてた

非常に恥ずかしい話だが、私は恐らく民間企業で働くのが向いてない。とてもストレートな物言いをすると『金持ちの経営者のために働くのってなんか癪に障るよな』という考えがあるため、民間就活というのは殆ど選択肢になかった。

将来の夢の変遷も宇宙飛行士(小学校時代)→研究者(中学校時代)→農家(高校時代前期)→検察官(高校時代中期)→官僚(高校時代後期~現在)と移り変わっていることからもそれが分かると思う。とにかく、私は民間企業で経営者や株主のために働くよりも天下国家のために働くことが性に合っていると今でも考えている。

③カッコいい肩書が欲しかった

多分一番ふざけてるけど重要な理由。私は政府系機関がよく出てくるようなミステリや警察小説の類を読んで育ってきたため、〇〇省〇〇局〇〇課〇〇室長的な肩書に物凄く憧れがあった。天下国家を舵取りする一員として、カッチョいい身分を引っ提げて働くというのは私からすると夢であったのだ。

④国費留学で修士号を取れる可能性がある

これも大きな理由。国家公務員、特に総合職の職員については人事院の査定に基づいて国費によって海外の大学院に派遣され、給料を受け取りながら勉強をして修士号を取れることが可能なシステムが整備されている。

私は一生でせめて修士号くらいは取っておきたいという気持ちがあった。しかし日本において、文系のストレートでの大学院進学は研究職に進むというキャリアプラン設計をしない限り中々厳しいものがある。そう考えた際に、給料をもらいつつ、自らの興味関心がある分野について(当然ある程度優秀であるという前提が付されているが)海外の大学院で数年間勉強できるこの制度はとても魅力的なものであったことは言うまでもなかった。

試験までの過ごし方

大学1・2年次

取り敢えず志望大学に合格し、憧れのキャンパスライフが始まった……のも束の間、新型コロナウイルスの影響で大学はほぼ全てオンライン授業に移行し、およそ1年間の暇な時間を我々は享受することと相成った。まぁ1月くらいはそこそこに楽しめたのだが……ともかく暇、というか退屈なのである。

そんな状況で大学に久し振りに登校した時に、キャリアセンターで官僚や法曹を目指す人間のための所謂予備校の説明会をやっていたのである。その後色々あって、私は某予備校に入校し、莫大な量のテキストと講義の受講権を受け取ったわけである。

ちょうど暇を持て余していたこともあって、大学の講義の合間合間に、国際関係や行政学といった自分の興味がある分野の講義を見始め、そこから私の教養区分試験対策は始まった。

2年次は大学も対面講義が始まり、色々と忙しくなったのもあって公務員試験対策が若干おろそかになり始めていたが、予備校が実施した官僚志望者の懇親会的なものに出席したり省庁説明会に顔を出し始めたりとどちらかというと試験後を見据えた対策が中心となっていた。それでも夏休みや春休みなどを使って講義を一気見するなどコツコツ対策は進め、2年次末には殆どの講義を1周以上見ている状態には持っていけていた。

ただし口を酸っぱくして言われてた数的処理・判断推理対策は若干サボり気味であり、恐らくはここで手を抜いたから本番で大惨事(後述)を引き起こしてしまったので、もしこれを見て官僚を志す人がいたら数的処理と判断推理は本当にすぐに始めよう。じゃないと本番で泣くぞ。

大学3年次

3年になるといよいよを以て教養区分が現実味を帯び、単位もそこそこ取れてきたこともあって本腰を入れて勉強を進めるようになった。教養科目だけではなく、落ちた時のための春試験、私の場合は法律区分試験に向けた憲法や民法、行政法、刑法といった法律科目も同時並行で進めつつ、省庁説明会やワークショップ、インターンシップに参加するというのが試験直前期に至るまでの過ごし方であった。その他には、総合論文対策のための自主ゼミを予備校の同期と組んだり大学同期と一緒に進捗管理するディスコードサーバを立ち上げたりしていた。

試験直前期、すなわち8月末から9月末までの1ヶ月はバイトなども全て断ち、殆ど家を出ずに缶詰め状態で毎日勉強をしていた。勉強内容としては毎日数的処理や判断推理の過去問を欠かさず解きつつ、自然科学や社会科学のインプット、総合論文のネタになりそうな資料読解を息抜きにやるといった具合であった。2週間前になるとインプットは必要最小限にとどめ、ひたすら予備校の過去問テキストを何周もする毎日を過ごした。

人文科学や社会科学、自然科学の過去問ばかりやると答えを覚えてしまう問題があったので、本棚の奥底に眠っていたセンター試験過去問集を引っ張り出して理系科目の過去問を解いたり、あるいは政治学や行政学などの関連科目の過去問にまで手を出すなどやれることは全部やったと思う。総合論文は結局予備校のカリキュラムと自主ゼミでの奴を併せて20本近く書いたはず。

前日はそこそこに勉強を取りやめ、翌日の早朝起床に備えて8時半ごろに就寝。翌日に思いをはせ、夢の世界へと旅立った……

一次試験当日

①試験前

眠い目を擦る……わけでもなく朝4時半ころに起床し、朝の準備をササっと済ませ5時過ぎに家を出てJRと大阪メトロを乗り継ぎ試験会場の大阪経済大学へと向かう。開場は8時半だが8時前に到着してしまい、雨がチラつく中外で30分以上待たされることに。

基本的に私は試験前無駄な足搔きはせずに天に全てを任せるタイプの人間なので、周りの人々がノートやら教材やらを最後まで見直しているのを見て感心していた。そうこうしていると受付時間がやってきたため、設定された受験会場へ。この時に事前に指示されていた受験票のパンチ穴開けを忘れていたことに気づくが、まぁ何とかなるだろうとさほど気にしなかった(実際に何も言われずに回収された)

教室に入ってしばらくすると試験開始時間である9時がやってきて、試験監督官(人事院の人)がやってきて説明を始める。驚いたことにこの時点で既に私の前後左右の席に割り振られていたはずの受験者の姿はなかった。ここで解答用紙が一時的に配られ、受験番号などを記入した後にまた回収されるのだが、教室全体で80人ほどが受験しに来ていることが分かった(教室の定員が110人なのでこの時点で約2割が受験放棄してることになる)

元より3~4割が受験自体していない試験というのは過去のデータから知っていたが、実際にそこまで欠席者が出ているのを見たときは少なからず驚きがあった。ちなみにこれはめちゃくちゃ余談だが、教養区分だけかどうかは分からないが試験中に飲み物は飲むことが出来るが、一々その度に監督官の許可が必要という謎仕様であった。

②論文試験

教養区分では、午前中に4時間(アホ)かけて2本の論文を書かせる。抽象的な政策について書かせるⅠ部とより具体的な政策論について書かせるⅡ部から構成されており、それぞれ32字×28行×2枚=1792字の文字数制限の中で大体8割から9割かけて答案を書き上げる試験となっている。

今年の問題はⅠ部が『行政官が政策説明を行う上でどのような対象に、どのような説明を行うことが有効的であるか論じろ』、Ⅱ部が『我が国における文化財保護の意義とその具体的対策について論じろ』というものであった。Ⅰ部は元々試験会場で即応する要素が強いのに対して、Ⅱ部は割と事前準備が可能であり、私も食糧安全保障や外国人の人権問題等々にヤマを張り、政府資料を読み込んだり関連機関のサイトを見るなどしていた。

但し今回に関して言えば過去に全く出たことがなかった題材であるので、私のヤマ張りは完全に失敗し、受験会場ではめちゃくちゃ焦った。取り敢えずある程度書けるⅠ部から手を付け、英文資料に悪戦苦闘しながらも何とか1時間半くらいで書き上げることに成功。

続いて文化財保護法の条文だけが参考資料(笑)として付けられためちゃくちゃ短い問題文にうんうん唸りつつ、文化財を保護する意義を『①歴史や文化を伝えるため②観光資源などとして利用することが出来る③学術的な価値もあって研究にも資する』という3点に分けて書き上げ、保護の具体的施策については『①災害による被害に対する対策②地域に於ける民俗文化財の担い手の減少に対する対策』に分けて何とかこちらも1時間50分ほどで書き上げることに成功。

あとから見返したらⅡ部論文は保護の意義と具体的対策との比率がちょっとおかしかったり具体的政策がそんなに具体的ではなかったりするなど大ポカをかなりやらかしていたのだが、それがどう判断されるかは人事院のさじ加減次第なので天に祈ろうと思う。

③基礎能力試験Ⅰ部-文章理解・数的処理・判断推理・資料解釈-

昼休みを挟み、午後からは5択の択一式試験である。最初は基礎能力試験Ⅰ部試験、所謂『一般知能』試験を2時間でこなす。

中身としては現代文3問と英文5問の計8問の文章を読む『文章理解』、中学受験やSPIなどをややこしくしたような問題が合わせて14問出る『数的処理』・『判断推理』、グラフや表などから正誤を判断する問題が2問ある『資料解釈』の合計24問から構成されている。難易度としては難しい順に判断推理>>数的処理>>>資料解釈>文章理解といったところ。おすすめの解答順は人にもよるが文章理解(現代文)→資料解釈→数的処理→文章理解(英文)→判断推理。英語が得意な人は文章理解(英文)を文章理解(現代文)の後に持っていってもいいと思う。

なおこの科目の一番の敵は問題の難しさというよりも『時間のなさ』である。特に判断推理は明らかな捨て問が潜んでおり、そこで沼にハマって時間をかけすぎると他の問題が溶けずにタイムオーバーというのが本当によくあるのである(筆者は捨て問に引っかかって見直しを怠った結果明らかに楽な問題を2問落とした)。

実際の試験では、文章理解と資料解釈は軽く片付け、1時間20分ほどの時間の余裕をもって数的処理と判断推理に突入。しかしここでポカミスをめちゃくちゃ繰り返し、過去問では14問中7問は解けていたのがまさかの4問しか正解できないというめちゃくちゃ手痛い失点の仕方をしてしまった。見直しもろくにできず、若干の悔いを残したまま2時間はあっという間に過ぎ去り、Ⅰ部は終了。

④基礎能力試験Ⅱ部-人文科学・社会科学・自然科学-

Ⅰ部試験が終われば、10分の休憩の後に次は1時間半で30問の共通テストバージョンアップ版みたいな問題を解く基礎能力試験Ⅱ部試験が始まる。正直この試験が教養区分では一番カモみたいな科目だと個人的には思っている。

中身としては人文科学(世界史・日本史・地理・思想・芸術)と社会科学(法律・行政・政治・経済・社会学・国際関係)、自然科学(化学・生物・物理・地学・数学)の3分野がそれぞれ10問ずつ出される。一般知識という名称からも分かるように、論文試験やⅠ部と比べて圧倒的に思考停止でも解けてしまう試験であり、ある程度の事前準備さえすれば本当に誰でも高得点が取れる試験なので、もしこれを読んでいる人の中で教養区分を受ける人がいれば、この分野を得点源にしておくと安定感が出るのでお勧めである。

実際に私は物理や地学などの知識が全くない4問を速攻捨てて、人文科学と社会科学を30分で解き終わり、残りの自然科学の問題6問をじっくりといて、総合的に1時間かからずで全問解き切った。私は普通に間違えたが、基礎的な数学の素養がある人は数学の2問にある程度時間をかけると得点を積めるのでお勧めである。

このⅡ部が終わるとようやく1次試験は終わりである。論文始まった時には80人いたはずの受験者は試験終了時には66人にまで減っていた。結果的に66/110なのでホントに4割が受験放棄をしているのであった。

一次試験後

こうして私の教養区分一次試験は終了した。終了後は教養区分を受けていた同じ大学の友人と少し談笑した後試験会場近くで別れ、そのまま帰路に就いた。受けた感想としてはとにかく疲れたというのが真っ先に来た。3200字を4時間で書いたので腕は変な痛みがあったし、数的処理と判断推理のせいで頭も疲れていた。

へとへとになって帰還した私だが、休息が訪れるわけでもなく、某予備校の解答番号調査に論文答案再現とやることは山積みであった。更には教養区分が落ちていた時に備えたバックアップ……もとい法律区分のための行政法や民法などの準備等々、そして一番大事なことなのだが翌日からは後期が始まる。

取り敢えず、人事院が発表した解答番号を使って自己採点を済ませた結果、Ⅰ部が24点満点中13点、Ⅱ部が30点満点中24点であった。Ⅱ部はともかくとしてⅠ部はまぁ大惨事と言っていい点数である。これでも例年なら合格ボーダーを上回っているのだが、今年は(少なく申込数だけで言えば)受験生が1000人近く増えているので何とも言えない。全ては人事院のみぞ知る、といったところである。

終わりに

私は教養区分受験者の中では、というよりも世間一般から見ても圧倒的に能力がない人間であると思う。しかし、そんな人間でも適切な努力をすれば、合格するかどうかくらいの点数を取れる試験が教養区分試験である。確かに巷では圧倒的な能力を持つ人間がさしたる対策もせずに合格するというのがやはりよく目立ってしまうがゆえに、『ぶっつけ本番』のイメージが強い試験であるのは重々承知である。

しかし、合格者の全員が全員そういう人間ではないのはほぼ確実である。これを読んでくれている諸兄は、恐らくは私なんぞよりもよっぽど能力があって教養に溢れた人間であると私は考えている。そういった人々が、一人でも多く教養区分試験の受験によって国家公務員、官僚への道を志す上で、このnoteがその一助となればとてもうれしく思う。

最後に、ここまで極めて簡素かつ幼稚な文章であったが、教養区分の一受験生としての体験やどういった対策を行ったかということについて、少しでも分かりやすく説明することが出来ていれば筆者冥利に尽きるものである。

改めて、ご笑覧いただき誠に感謝申し上げたい。この記事が読者の皆様にとって少しでも役に立つことを願って、筆をここに置くものとする。

(追記:一次試験合格していました。二次試験頑張ってきます)

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