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【与太雑記】冬コミ原稿素案Ⅴ『第四章:魔術組織(後編)』(メンバーシップ)


アトラス院

・序文

 アトラス院はエジプトにあるもう一つのアトラス山を拠点とする学院。『巨人の穴蔵』『生きた奈落』とも呼ばれる。
 魔術協会の三大部門の一角であり、その歴史は時計塔よりも古い。正式な活動開始時期は不明だが、西暦開始以前……少なくとも紀元前四世紀には既に活動していたことが記録されている。
 彼らが扱う錬金術は時計塔のソレと異なる。アトラス院の錬金術は魔術の祖をもってなるもの。一方で時計塔が採用しているのは中世期に西洋に流入して以降の錬金術である。
 他の組織との交流は少ないが、要請があれば同じ魔術協会である時計塔、聖堂教会等に人材を貸し出すこともある。だが、アトラス院の錬金術師の協力を得るには特別な契約書が必要となる。過去に七枚だけ発行された契約書の効力は絶対であり、これを使った依頼にはアトラス院は必ず全面的に協力する必要がある。

・アトラス院の技術体系

 時計塔とアトラス院の錬金術の違いは、前者は物質の変換に重きを置いているが、後者は事象の変換に重きを置いているかだと言えるだろう。
 アトラス院が扱う錬金術とは世界を解明し、未来を作り上げるもの。時計塔の魔術師たちが「根源」と繋がる魔術回路を通して理想の未来を引き寄せるように、アトラス院の錬金術師は自身の頭脳(思考)によって理想の未来を作り上げることを目的としていた。それも遠い過去の話。現代のアトラス院は初代院長が証明してしまった『終末』を回避するために兵器を作り上げては廃棄し続ける自滅機関と成り果ててしまった。

 アトラス院の錬金術師たちの特徴として魔術回路の少なさが挙げられる。その魔術回路の少なさから彼らは自然干渉系の魔術への適性が著しく低い。結果、彼らは自分たちは外界、自然と関わることは出来ないと認め、人間として終着に至ることを志した。それが「高速思考」や「分割思考」等の人体を演算装置として用いる術である。彼らにとって肉体とは脳が制御するものではなく、脳をよりよく機能させるために肉体がある、と考えている。
 人間という人体を研究し、人体をより優れた演算装置として利用し、理想の未来を作り上げる。「高速思考」や「分割思考」もそのためにあったのだが、初代院長が証明した『終末』の回避の為の兵器作り……つまりは秘技(魔術)と科学の融合を成す為の技法へと切り替わってしまったのだ。
 その研鑽の果てに作り上げられてしまったのがブラックバレル、ロゴスリアクトなどのアトラスの七大兵器。世界を救うために作り上げられた兵器は、同時に星をより惨たらしく焼き尽くし兵器と化してしまったのであった。

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