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【与太雑記】魔法はどうして生まれた?(中編)


 大変お待たせして申し訳ないです。風邪が長引いて更新が遅れてしまいましたが、前回の「前編」から引き続き、型月伝奇世界における『魔法』の特異性について与太っていきたいと思います。そしてもう一つ謝ることがあります。そうタイトルを読んだ方は気づかれていると思いますが今回は「中編」となります。はい、前後編の二分割でも収まらなかったので、最後の「現代の五大魔法の役割」と「魔法はどうして生まれた?(統括)」+α(番外編)については「後編」でまとめます。
 今回の「中編」ではソロモンが没した直後から西暦が始まるまでの間に魔術世界で何が起きて、それが西暦以降の魔術世界にどういう影響を与えたかについて「魔法」を中心とした視点で与太っていきたいと思います。


魔法はいつ、どうして生まれた?(中編)

西暦開始前の魔法の在り方

 現代の五大魔法とは、文字通り現代の消費の理が敷かれた西暦開始以降の世界において証明された神秘であり、その証明(成立)順で番号付けが協会によってなされている。
 これが正しい場合、また別の疑問が出てくる。『西暦開始以降では魔術に零落した魔法は存在しないのではないか』、と。おそらくその通りなのだろう。より正確にいえば西暦の開始かその少し前に大部分の魔法は魔術へと零落したが、西暦以降に確立した魔法、西暦以降に再証明された魔法が『現代の五大魔法』として扱われるようになった、ということだろうか。これは「神代終了後(紀元前900年)から西暦開始前の移行期間」と「西暦開始後」では星の理や文明の在り方が異なっている。つまりは魔法の在り方が異なることで説明が出来る。

 ソロモン王の死去と共に神代は終了したが、それでも魔術の力は現代のそれよりも非常に強力なものであった。これは地球の表層に真エーテルが未だ存在していたからだ。この真エーテルこそ、この時代の魔術を魔法として成立させていた要素なのではないだろうか。
 本記事の前編にて、魔法とは根源に到達したことで生まれる、と語った。だが、一方で現代に残る五つの魔法は大きく二つに分けられる。一つは根源に到達したことで生まれた魔法。もう一つは根源に到達するために必要とされた魔法だ。第一魔法と第五魔法は前者であり、第二、第三、第四魔法は後者だとされる。「魔法は魔術師が根源に到達した時に生まれる」を絶対のルールと考えた場合、後者は理屈に合わないように思えてくる。だが、一応の説明は可能ではある。おそらくこの根源に到達する為に必要とされた魔法こそが、魔術が昇華された魔法なのだろう。

 根源に到達するための手段は様々なモノが存在する。その一つが根源に近い属性を門と見立てて路を辿るかだ。あらゆる事象は万物の源たる根源から流れ出たものであり、根源と繋がっている。だが、複雑化し、根源から大きく離れてしまったモノはその繋がりも非常に細いものであり、それを辿って根源に到達することは事実上不可能である。一方で根源とは万物の始まりにして終焉。この世全ての記録が存在する場所だ。故に何らかの存在の原型、あるいは終焉は根源に非常に近い属性を持つため、それを門と見立てて根源へ到達することが出来る。
 魔術師が万能性を重視するのもその理屈からだろう。万能とは多くの性質を内包する属性だ。真にあらゆる分野・事柄において万能な個人が存在するなら、それはあらゆる属性を内包する世界の縮図に照応出来る。つまり「 」である。もちろん、人間は一つの事柄しか極めることが出来ないので机上の空論に過ぎないのだが(それを変則的な形で実現したのが「空の境界」に登場する両儀式である)。大事なことは「原型」や「終焉」のような根源に近い属性、あるいは「万能」のような根源に近似可能な属性は門として利用出来るということだ。
 以上のことを踏まえて魔術を魔法にまで昇華させる、魔法を創り出す、とは自らの魔術を根源に繋がる門に近似出来る精度に至らせる事を意味するのでは、と考えられないだろうか。魔術もまた根源から流れ出ているモノだが、現代まで残る魔術は細い川のようなものでその希薄な繋がりから大元に到達することは難しい。しかし、それも神代が終わった直後では話が変わってくる。真エーテルが根源から差し込む光という仮説が正しい場合、その真エーテルがまだ存在していた地球環境は神代ほどでなくとも根源に近しい距離にあったとのだろう。そして、神が地上から去り、文明がまだ未熟だった頃であれば、魔術とは神の御業の代行と近似出来るではないだろうか。神の御業とはつまりは権能。加えて真エーテルは神を成立させるいわれる第五真説要素だ。つまりこの時代における真エーテルを動力源としていた魔術とは擬似的な、人工的な権能のような役割を担っていたのではなかろうか。

 権能とは根源と繋がる神の振るう全知全能の発現にして「世界を創造しうるレベル」の力。根源とは万物が発生する原因となった場所。ある意味では世界を創造し得る力の渦とも言える。そういう意味では権能は非常に根源に近い属性を帯びるだろう。魔術を魔法へ昇華させるとは、人間の魔術を神の権能に模倣・再現し、その高精度の虚構を以て根源へ至る試みだと推測できる。もちろんソレは嘘だ。だが当時の魔術師たちにとって一度でもその嘘をが通れば問題なかったのだ。

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