幻想句集・四『雷』

ネットプリント幻想句集・四『雷』から一人一句、好きな句をあつめました。

掌に残った髪の生臭さ 西沢葉火「iwa」(川柳)
たわしに乗って火星軌道へ 本間かもせり「時空調理法」(川柳)
仏壇を背負いて歩く夏祭り 涅槃girl「夏の魔物」(俳句)
皇帝に口答えするエスカルゴ 宮坂変哲「不思議の国」(川柳)
手から散る蛍が描く星の花 文月栞「ホタル散る夜は」(俳句)
都城
傾きて
影絵の
ジラフのみ 笛地静恵「夏の影」(俳句)

仏壇を背負いて歩く夏祭り 涅槃girl「夏の魔物」
 仏壇は重い。重いはず。死者(それも身内の)が祀られてる(っていうのかな?)から、精神的にも重たいものだけど、それ以前に物理的に重たいんじゃないかな。ミニ仏壇みたいなものもあるだろうけど、ここはやっぱり半畳分の大きさのアレを想像してしまう。夏祭りというちょっと浮ついた雰囲気の場面に、ずっしり重い仏壇を背負って歩く人。ありえないのに、もしかしたら、自分もそういう人とすれ違ったことがあったかも知れないような、不思議なリアリティと臨場感があって、妙に魅かれる句でした。

皇帝に口答えするエスカルゴ 宮坂変哲「不思議の国」
 皇帝の目の前にいるということは、このエスカルゴは多分既に調理済みのエスカルゴと思います。銀の食器の上のエスカルゴが、なにやら自分を食そうとしている皇帝に向かって口答えをしているって、めちゃ面白い情景だなって思いました。かわいさとグロテスクさがせめぎあう連作の中で、一番情景が鮮やかに浮かんでくる句だなって思います。


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