幻想句集・壱『青嵐』

ネットプリントの幻想句集・壱『青嵐』から、一人一句好きな句をあつめました。


浜茶屋の畳の上の栄螺鬼 赤片亜美「狂夏」(川柳)
アバターの溺死うらやむ極夜の子 有無谷六次元「水あるところ」(俳句)
かりそめの髪に絡まる母の指 榎本ユミ「醒めない」(川柳)
尾なびかせ麒麟駆けぬく夏の空 小澤ほのか「神獣の夏」(俳句)
肺魚飼う四畳半を二分して 川合大祐「燃える世界」(川柳)
弟だ入れてくれよという守宮 小川けいと「すぐそこに」(俳句)


肺魚飼う四畳半を二分して 川合大祐「燃える世界」
 一読して、うわっこれはわたしの好きな世界観かも、と思った句です。肺魚は普通に飼育されたりもするらしいので、「肺魚飼う」というのは別段変なことではないらしいんですが、これが「四畳半を二分して」となると、これはそうとう変な光景になるんじゃないかと思うんです。いや、いくつかある部屋の内の四畳半の部屋を肺魚部屋にしているとも考えられますが、わたしは四畳半しかないアパートを肺魚の巨大な水槽とシェアして暮らしている人物を想像して、うはー、これはヤバい(いい意味で)と思ったわけです。四畳半の半分ということは二畳とちょっと。その狭さでこれから肺魚と暮らしてゆくことにした作中主体のヤバさ(いい意味で)を想像すると、なんだかたまらないなーと。寝るぐらいしかできないから、ぼやっと三角座りで水槽眺めてたりするのかな。

弟だ入れてくれよという守宮 小川けいと「すぐそこに」(俳句)
 この季節、夜になると来ますよね。窓にぺったりと白いシルエットを見せて守宮が。その守宮が言うわけです。「弟だ、入れてくれよ」と。なんだ弟かと窓を開けようとして、ふと、弟なんていなかったことを思い出す……までを想像してふひひってなりました。「弟だ」ていう騙り方がめちゃツボでした。これはずるい。騙されそうになる。弟をもってない私もきっと騙される。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?