幻想句集・弐『虹』

ネットプリント幻想句集・弐『虹』から一人一句、好きな句をあつめました。(わたし、しま・しましまも『虹』に参加しているので、それを除いた五句になります)

母逝きて待宵草に還り着く おふうちゃん「結界」(俳句)
はんざきのおつかい珈琲豆買いに 珈琲と俳句「異形珈琲店」(俳句)
一閃の雷湖を貫ぬきぬ 砂狐「白狐譚」(俳句)
遠くから呼ぶ声のあり唾を飲む 西鎮「隧道へ」(川柳)
レコードは泳ぐ 少女は目を閉じる たご団子「ジムノペディが聞こえる」(川柳)

はんざきのおつかい珈琲豆買いに 珈琲と俳句「異形珈琲店」
 「はんざき」はオオサンショウウオのこと。そのはんざきが珈琲豆を買うおつかいをしてるってかわいいですね。でも、四足歩行でぺたりぬらりと動いてる姿を想像するとかわいくないので、ここは勝手ながら二足歩行でおつかいに行ってほしい。ん、二足歩行のオオサンショウウオといえば、チャペックの「山椒魚戦争」を思い出しますね。よちよち歩きでおつかいしてる姿は可愛いけど、あんまり便利に使いすぎるとこわいことになっちゃうよとか、もうすでにもとの句から大幅に逸脱したことを考えてしまうわたしでした。

遠くから呼ぶ声のあり唾を飲む 西鎮「隧道へ」
 下五の「唾を飲む」というアクションがいいなって思う句でした。「遠くから呼ぶ声」、「呼ぶ」というくらいだから、誰かを呼び寄せる声、「おーい」的なものか、もっと直接的に名前を呼んでいるのかも知れないですが、とにかくその声に対する主体のアクションが「唾を飲む」なわけです。連作タイトルが「隧道へ」なので、この「遠く」は隧道の奥深くから、と想像しますが、そうすると、この声はそうとう怖いんじゃないかと思うんです。でも、「唾を飲む」は、その声を怖いと思ってるかも知れないけど、否定してる感じがしないんです。緊張しながら、次はどういう展開が待っているんだろうって思ってそう。もしかしたら、その声の方へ行こうって気持がよぎったかも知れない。そういう想像をしてしまう下五だなって思いました。

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