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かるくいきる。 (短編小説)

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わたし、ぬるいコーヒーが好きなの。

僕は大学二年で三つ上の先輩の紹介で女の人と喫茶店で会う約束があった。紹介と言っても恋愛とかではなく大学のイベントでの事だった。 喫茶店に現れた女性はスーツを着てヒールでコツコツと僕の前の席まで迷いもなくやってきた。自己紹介をし大学の事とイベントの事をかいつまんで話をした。 「おもしろいとは思うわよ、それなら会社側からはこれぐらいなら協力できるわよ」僕は数字を見た。悪くない額だった、僕はお礼を言った。 「悪いけどあなたのコーヒーもらえるかしら」 「わたし、ぬるいコー

あの店には誰とも行かないで。

「あの店には誰とも行かないで」別れ際に彼女が僕にそう言った。もちろん僕もそのつもりだった。僕と彼女との思い出の場所だったし、彼女以外の誰かと行くことも僕一人で行く気持ちもなかった。 「最後にもう一度行かないか」僕は彼女を誘った。あの店のお父さんとお母さんにはお世話になったから。そう言って二人で店に向かった。いつもなら彼女は僕の腕に手をまわしたが、それももうなかった。 店ではいつも通り僕も彼女もコーヒーを飲み笑って話をし店のお父さんとお母さんの顔を見たりした。 「なに泣い