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「Little Letter」曲目解説(8)雨百合

使用ギター:ヘルマン・ハウザーⅡ(1958)
使用マイク:Schoeps CMC65

今回のアルバムで、1度のセッションで録り終えたのはこの曲だけです。
演奏技術の問題もありますが、私は録音に時間がかかるタイプで、1度本番モードで録ってその音からイメージが広がって、音楽の方向がようやく定まるのです。
なので、1度本番を録るまでが、自分にとって「音決め」になります。

録り直す時は「小さなミスが気になる」とかではなく「こういう音世界が欲しい」という明確なイメージが生まれているので必ずゴールには到達するのですが、セッションを重ねればお金も時間もかかります。でもそれが自分の能力なので仕方ありません。


その点、この曲は早くからイメージが固まっていたのだと思います。


そして、この曲では運指を何度も変更しました。
ギター曲において、音楽の6割は運指で決まるという感覚があります。それほど重要な要素です。

若い頃は、わけのわからない運指でバキバキ弾いてましたが、故障を経験してから考えを改めました。

運指決めは、言ってみれば「瞬間瞬間どの指を中心において捉えるか」という事を決めていく作業です。それぞれのプレイヤーの手の形も指の長さも違うので、厳密に言えばそこに正解はありません。

重要なのは、プレイヤー自身が演奏の瞬間を適当に過ごすのではなく、運指と音楽の流れとリンクさせているかどうかだと思います。
メロディや対旋律が十分に流れる運指は何なのか。
アルペジオ部分は音数が無駄に多くないか。
低音を効かせる場所はどことどこに設定するか。

音楽は無心で演奏する。
というのは、そういう作業を練り込んだ後の話です。

穏やかで、後味もよく、気に入っている一曲です。

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