伊藤賢一

ソロギタリスト。オリジナル楽曲を中心にプログラムを組み、日本全国で演奏活動を行う。アコ…

伊藤賢一

ソロギタリスト。オリジナル楽曲を中心にプログラムを組み、日本全国で演奏活動を行う。アコースティックギターとクラシックギターの両刀使い。Indigo Note、tri tonica、Silverust等、小編成ユニットでの活動も同時進行中。現在オリジナルアルバムを7枚リリース。

最近の記事

2023 ソロギター・コンペティション 審査を終えて

去る10月7日、第一回ソロギター・コンペティションにおいて審査員を務めて参りました。 何についても言えますが、「第一回」というのはとても重要なものです。 進行面も音響面も、第一回にしてきっちりしたコンペティションの「体」をなすことが求められます。「昨年の前例」も無く常に手探り状態を強いられ、特に今回はクラウドファンディングでの開催という事もあり、懸案事項は山のようにあったはずです。 発案から開催まで、昨年のプレ大会を含め、長い長い道のりを進んで来られた、主催のアコーステ

    • Hernandez y Aguadoエルナンデス・イ・アグアド(1961)

      長年の相棒だったハウザーⅡとお別れをし、この度私の元に来ました。 Hernandez y Aguado エルナンデス・イ・アグアド 通称アグアドと呼ばれるギターです。 マヌエル・エルナンデスがギター本体を、ヴィクトリアーノ・アグアド・ロドリゲスが塗装とヘッドの細工を担当したと言われています。 1961年製。 表面板裏のブレイジングに「斜めのバー」が施される1960年代中盤あたりが絶頂期とされるアグアドですが、個人的には50年代後半から60年代初期の「斜めバー」の無いブレ

      • 私のお友達(7)林慶文

        林慶文(レコーディング・マスタリング・エンジニア) 林慶文さん主宰の「Red Iguana Studio」は、ギター製作家大屋建さんの工房から車で3分ほどのところにあります。 大屋さんと出会ったその日に、林さんとも出会いました。この日から私の人生が変わり、一生が決まったと言っても過言ではありません。 その時期、私はセルフレコーディングに挑戦しようとしていて、機材や方法論などを色々と調べていた最中でした。 それを知った大屋さんが、 「一度本格的なスタジオでの録音をテストして

        • 私のお友達(6)山本哲也

          山本哲也(ギタリスト) 哲也さんとはここ数年よくご一緒するようになりました。特にコロナ・パンデミックが始まった2020あたりから本格的に共演を重ねるようになったギタリストです。 この人類が大変な時期により密に音を重ね、より言葉を交わせる関係性になったというのは、やはり大きな意味があります。 哲也さんとは、局面局面での感覚のベクトルが合い、共鳴できたのではないかと、ここ数年を振り返って感じています。 ギタリストとしての哲也さんの技量はもう飛び抜けて素晴らしいものです。 「

        2023 ソロギター・コンペティション 審査を終えて

          私のお友達(5)浜田隆史

          浜田隆史(ギタリスト) 浜田さんなくして、今の私はありません。 私に「演奏活動」を教えてくれた人であり、ツアーミュージシャンの先駆者だと思っています。 2005年にジョン・レンボーン来日公演の客席でご挨拶したのが最初の出会いで(お互いに存在は知っていたのですが詳細は割愛します)、2006年には東京でジョイントライブが実現しました。 私はそのころから浜田さんのホームページにある「ライブ日記」の密かなファンで、安い宿と交通手段を求めて苦闘する姿に一種のロマンを感じていました。

          私のお友達(5)浜田隆史

          私のお友達(4)小川倫生

          小川倫生(ギタリスト) 初めて小川さんの演奏を見た時の事は忘れられません。 私が演奏活動し始めて間もない、まだ20代の頃。 2002年か2003年。とある企画ライブでご一緒したのが出会いでした。 出会う前は繊細な音楽を紡ぐタイプのような先入観がありましたが、実物はかなりガツンとした弾き姿でかなり驚きました。そして何よりその音楽がすごかった! 堂々とした曲構成、自在で多種多様なテクニック、香り立つような転調も印象的で、全てが「小川倫生」の器に収まって不足なし。こんな人いる

          私のお友達(4)小川倫生

          私のお友達(3)三好紅

          三好紅(ヴィオリスト) 紅(はな)さんとはかれこれ10年もユニットを組んで活動しています。 Indigo Note(三好紅&伊藤賢一)として、たくさんのステージを共にしてきた、戦友のような存在です。 とあるチャリティコンサートに、私はソロで、紅さんは弦楽六重奏で出演していたのが出会いでした。 紅さんはオーケストラをメインの仕事としており、私がブルックナーをはじめとする長大な交響曲が好きという点でかなり珍しいギタリストだと感じたそうです。 その後日、せっかくなので何かやっ

          私のお友達(3)三好紅

          私のお友達(2)竹内いちろ

          竹内いちろ(ギタリスト) いちろさんとは、お互い直接顔を見る前にライブを組むという珍しいパターンで出会いました。 2005年のモリダイラのギターコンテストで最優秀賞を獲られたいちろさん、もちろんお名前だけは存知上げておりましたが、共通の友人である大屋建さんから「名古屋近辺でライブするならいちろちゃんに声かけてみたら」と勧めていただいた事が直接のきっかけとなりました。 出会う前は、ソリストというよりもジャズフュージョン系のプレイヤーなのだと勝手にイメージしていましたが…

          私のお友達(2)竹内いちろ

          私のお友達(1)大屋建

          大屋建(ギター製作家) 大屋さんのギターを弾く者として感じるのは、ここまで自分をさらけ出した楽器(作品)を残せる人はなかなかいないんじゃないかということです。 顧客のオーダーに向き合いながら、大屋さんはつねに音楽に「全振り」している。少なくとも私にはそのように伝っています。その振り切った姿勢は、職人としての哲学と共に芸術家も同居していると感じています。 さて私のオーダー内容はいくつかありました。 ・良い演奏には120%応えるが、悪いタッチもそのまま出るギター ・内声を活

          私のお友達(1)大屋建

          精神論

          おしなべて精神論は好きではありません。 精神論において語られる「気持ち」というものが実に曖昧な場合がほとんどだからです。 前にもnoteに書きましたが、私は巷に溢れる 「強い気持ち」という言葉が大嫌いで、その言葉が使われた瞬間、飲み会における説教のような、全てを保留したまま納得を強いられる空気が流れるのを感じます。 「強い気持ちで臨んでほしかった」という苦言に至っては、単に周囲の人間に対してそれらしい態度を示せと言ってるだけの場合がほとんどだと思います。 スポーツ選手も

          越前良平 R1 custom

          山梨県北杜市に工房を構えるギター製作家、”越前良平”氏のR1custom(2020)がこの度仲間入りしました。 私のメインギター、大屋建、ハウザーⅡ、中野潤と共に、私の音楽を作っていってくれる事でしょう。 実はこの個体は以前から知っていました。 「echizen guitar」というワードで動画検索した中から好みをいくつかリストアップした中で、最も好みの鳴り方をしていた1本でした。 まさか自分が所有することになるとは、縁とは不思議なものです。 肝心のサウンドについて。

          越前良平 R1 custom

          「Little Letter」曲目解説(10)Cloudy John

          使用ギター:Ken Oya(2008) 使用マイク:DPA 4006A アルバムのラストは、後腐れない締めくくりが好きです。ラストに重めの曲を置くスタイルも良いのですが、なかなか自分では採用できません。 元々この曲はプログラムを悩ませるタイプの曲で笑 どこに置いても地続き感が少しねじ曲がるのです。だったら地続きさせずに一旦終わり、一曲目に仕切り直せる感覚を大事にしようと考えました。 そして、ラストに置くことでその曲に多少なりとも「箔がつく」というか、堂々とした佇まいを与え

          「Little Letter」曲目解説(10)Cloudy John

          「Little Letter」曲目解説(9)RADICAL DREAMERS 〜盗めない宝石〜

          この曲を初めて聴いたとき、吉良知彦さんのギター伴奏だとわかるのに時間はかかりませんでした。 独特の哀愁と浮遊感は、それほど自分の心に染み付いたものだと思います。 「クロノ・クロス」というゲームのエンディング・テーマとしてリリースされたこの曲。ゲームは全くやらない私ですが、生徒がこの曲を弾きたいと譜面を持ってきてくれたのが出会いでした。歌(みとせのりこさん)もギターも最高じゃないですか・・・ そしてこのたびソロギターアレンジをするにあたり、「クロノ・クロス」のサントラ盤(3

          「Little Letter」曲目解説(9)RADICAL DREAMERS 〜盗めない宝石〜

          「Little Letter」曲目解説(8)雨百合

          使用ギター:ヘルマン・ハウザーⅡ(1958) 使用マイク:Schoeps CMC65 今回のアルバムで、1度のセッションで録り終えたのはこの曲だけです。 演奏技術の問題もありますが、私は録音に時間がかかるタイプで、1度本番モードで録ってその音からイメージが広がって、音楽の方向がようやく定まるのです。 なので、1度本番を録るまでが、自分にとって「音決め」になります。 録り直す時は「小さなミスが気になる」とかではなく「こういう音世界が欲しい」という明確なイメージが生まれている

          「Little Letter」曲目解説(8)雨百合

          「Little Letter」曲目解説(7)R357

          使用ギター:Gibson J-50 使用マイク:Schoeps CMC65 R357とは、国道357号線の事です。 通称「東京湾岸道路」。その名の通り、千葉〜神奈川まで東京湾岸沿いを走る道路です。 私は副業として「自走屋」(車を運転してその車自体を運ぶ仕事)という仕事をたまにしていてて、この道路はよく使います。 357は基本的には港や空港を起点としてトレーラーやトラックが走りまくる道です。私が乗るのは乗用車ばかりなので、夜遅く港に向かって走ると前後左右大型車だらけというこ

          「Little Letter」曲目解説(7)R357

          「Little Letter」曲目解説(6)どんぐりの庭

          使用ギター:ヘルマン・ハウザーⅡ(1958) 使用マイク:Schoeps CMC65 短いながらも、とても気に入っている曲です。 これも「Unknown Circle」同様8年近く前のアイデアで、AパートとBパートのみ完成したままほったらかしにしていました。 バロックぽい装いで、ダウランドのトレモロファンシーみたいな一瞬の転調があったり、なかなか良いではないか…いつでも完成できるとタカを括ってたらそのままストップしてしまいました。 「バロック調」にイメージがとらわれてい

          「Little Letter」曲目解説(6)どんぐりの庭