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「Little Letter」曲目解説(9)RADICAL DREAMERS 〜盗めない宝石〜

この曲を初めて聴いたとき、吉良知彦さんのギター伴奏だとわかるのに時間はかかりませんでした。
独特の哀愁と浮遊感は、それほど自分の心に染み付いたものだと思います。

「クロノ・クロス」というゲームのエンディング・テーマとしてリリースされたこの曲。ゲームは全くやらない私ですが、生徒がこの曲を弾きたいと譜面を持ってきてくれたのが出会いでした。歌(みとせのりこさん)もギターも最高じゃないですか・・・

そしてこのたびソロギターアレンジをするにあたり、「クロノ・クロス」のサントラ盤(3枚組)を通して聴いてみることにしました(全編光田康典さんによる作曲)。

サウンドトラックはゲームの内容に沿って描かれるわけですが、その内容というものはゲームをプレイしない者にも伝わる、ある意味普遍的なテーマです。
愛、友情、スリル、または時間や空間をイメージ的に捉えてみたり。そうしたテーマ性を持って優れた音楽家が作り出す音楽は、たとえゲームをプレイしていない私などが聴いても充分に心に届くのだと実感しました。

サントラ盤をすべて聴き通すには相当な時間を要しますが、ラストにこの曲が流れてきた時には感動しました。歌詞の一つ一つがそれまでの時間を思い出させるような、不思議な体験でした。


レコーディングにあたり、最初はライブでも演奏している完全ソロバージョンでいこうと思っていましたが、やはりこの曲のクライマックスである美しいコーラス部分はどうしても必要だと感じ、トレモロ奏法の多重録音でチャレンジしました。
2つのパートを2トラックずつ重ねて録りましたが、なんとなく物足りない。

アンサンブルに詳しいヴィオラの三好紅さんに相談したところ
「そうした場合は2人でなく3人で同じことをすると馴染むことが多い」というアドヴァイスをいただき、再度チャレンジ。2つのパートを3トラックずつ録り直した結果、ようやく満足いくものになりました。


それにしても、原曲の吉良さんによるギター伴奏は素晴らしい。
私は20歳の時からZABADAK(ザバダック)のファンで、上野洋子さんの歌声と吉良知彦さんのギタープレイ、ソングライティングは耳に焼き付いてる感じなんです。吉良さんが作曲した、『harvest rain(豊穣の雨)』の出だしのメロディを初めて聴いた時はショックでした。こんなにも美しい、完成された音型があるのかと打ち震えました。今でも最も好きな旋律のひとつです。
2016年、惜しまれつつこの世を去った吉良さん。
直接お会いすることはできませんでしたが、本当にお世話になりました。

今回のアレンジは、吉良知彦さんに捧げます。


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