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私のお友達(3)三好紅

三好紅(ヴィオリスト)

紅(はな)さんとはかれこれ10年もユニットを組んで活動しています。
Indigo Note(三好紅&伊藤賢一)として、たくさんのステージを共にしてきた、戦友のような存在です。

とあるチャリティコンサートに、私はソロで、紅さんは弦楽六重奏で出演していたのが出会いでした。
紅さんはオーケストラをメインの仕事としており、私がブルックナーをはじめとする長大な交響曲が好きという点でかなり珍しいギタリストだと感じたそうです。

その後日、せっかくなので何かやってみよう、と音を合わせてみたのですが
な、なんて不器用な人なんだ・・・
これはお互いにそう思ったと思います。基本的にクラシックとポピュラーとではリハの方法論も意識もかなりの相違があるもので、リハは難航しました。

しかしリハの中でいろいろと話すにつれ、紅さんの音楽、音に対する真摯な姿勢に驚かされました。

彼女の古楽への傾倒は、研究者的な興味からでも周囲からの影響からでもなく、「自分の楽器にガット弦を張ったら響きが活き活きした」という自身の体験からでした。その変化を頭ではなく心でダイレクトにつかまえられる感覚に、ミュージシャンとして強く共感しました。

それから少しずつレパートリーを増やしていき、演奏機会も広げていき、今ではIndigo Noteとしてアルバムを出し、全国をツアーでまわるほどユニットとして成長しました。

2023年で結成10年を迎えます。


我々くらいのキャリアを積んだ者同士がユニットを組むと、それぞれの個性をぶつけただけで”融合した”と勘違いしがちです。
たとえその場の化学変化はあったとしても、音楽として本物の響きとなるには時間が必要なのです。長い長い時間をかけて、少しずつ歩き続けねばなりません。
紅さんとは今までそうやって音楽を作ることができたと思っています。


紅さんは、明るく気さくなお人柄ですが、非常に強い面も持ち合わせています。
色々な事をなあなあにせず、本当はどうなのかをつねに自分につきつめ、相手にも臆せず伺う姿勢があります。

私もそういうタイプですし、色々と強い意見交換(言い合いともいう…)をする事もあります。しかしぶつかり合う事でヘナヘナする相手ではないとお互いに思っているので、まあぶつかってきます。

笑顔の裏には多くの修羅場が…

Indigo Noteの1stアルバムは「Can Sing」と名付けました。
これはオーケストラ現場から翻って自分1人の楽器の音を届ける活動を始めた紅さんと、逆にソロの現場からデュオ形態で新たに活動を始めた私と、2人ともが「より歌える」ようになったという意味を込めています。
今後も、この「Indigo Note」という場を育てながら、それぞれの音楽を深めていけたらと思っています。

来年はいよいよ結成10周年となります。
この組み合わせで、全国各地へ、作り上げた音楽を届けに参ります。

浜田隆史さんとライブの打ち上げ。


*お気に入りの一曲は、Indigo Noteのアルバムにはまだ収録されていませんが、私たちのアレンジしたキース・ジャレットの名曲「My Song」を挙げます。面白いことに、ライブで演奏するたびに自分達の中で成長している感覚が強い曲です。紅さんの歌い回しは、単なる郷愁ではなく、何かを追い求めるロマンをも感じさせる彫りの深いものです。各地のライブ会場で、ぜひ楽しみにしていてください!

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