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新横浜線を理解する

 今年の3月に新横浜線が全線開通しました。
 この路線は、横浜駅を起点に、西に延びる路線を有していた大手私鉄の相鉄(相模鉄道)が、JR及び東急を介して、東京都心への乗り入れを行うために、建設された路線です。
 JR線に接続するための連絡線である、新横浜線の一部区間(相鉄・JR直通線)については、2019年の秋に既に開通しており、相鉄線はこのJRルートを経由して、武蔵小杉から埼京線経由で新宿や大宮方面に乗り入れています。
 今回の開通区間は、東急線に乗り入れるための連絡線(相鉄・東急直通線)であり、日吉から東急東横線や東急目黒線に乗り入れています。
 構想自体は、半世紀ぐらい前からあったようですが、僕がこの2つの計画路線を知ったのは、10年ぐらい前です。
 最初は、相鉄の本拠地と言える横浜から先に直通する路線ならともかく、途中駅から分岐する路線を、それも2ルートも建設しようとする相鉄の意図がよくわからず、そもそも、乗り入れ先のJRや東急に何のメリットがあるのかと疑問を抱えていましたが、鉄道ジャーナルの6月号に詳しい解説記事があり、ようやく狙いがわかったような気がしました。
 JRへの乗り入れについては、線路容量に余裕のある東海道貨物線の活用と、タワマンが林立して乗降客が急増した、武蔵小杉駅から都心方面への輸送力向上にもつながるため、JRにとってもメリットがあるようです。
 また、今回の東急乗り入れについては、相鉄にとってはこちらが都心乗り入れの本命と言ってもよく、東急目黒線を経由して、都営三田線や東京メトロ南北線に乗り入れ、大手町や永田町といった、山手線の内側に直接乗り入れることができます。一方で、この東急ルートについては、途中に新横浜駅があり、新横浜駅は新幹線に接続し、横浜アリーナや日産スタジアムなどの集客施設もあることから、東急沿線からも直通のメリットがあります。東急としては、都心と逆方向の需要を創出するといった、メリットがあるようです。
 今回、この新横浜線について調べたことで、関係者それぞれがメリットを見出し、言ってみればWin-Winの関係ができたことで、これだけコストのかかる、気の遠くなるようなプロジェクトが実現したのだと感じました。
 新横浜線からは
・自分にとって最も大事に思えるもの(相鉄で言えば横浜駅)であっても、時代や社会情勢が変化し、守るべき価値が低下し、変化の方向性が変わらないと見極めたならば「捨てる」ことも必要こと。
・誇大妄想主義者の絵空事に思えることでも、妄想を捨てず、その実現に向けて行動し続けていれば、動かないとおもっていた巨岩も動き出し、そのうち多くの理解と協力が得られて、勢いがついて実現できてしまうこと。
・とはいえ、自分だけにメリットがあることを相手に求めても、相手は本気で動いてくれないため、本気で実現するのであれば、相手のメリットも本気で考え、そのメリットで相手の心をその気にさせることが不可欠であること。
について学びました。
 何と言っても、相鉄が、この新横浜線を介してつながる、東急、メトロ、都営、西武、東武、みなとみらい、埼玉高速のネットワークは、日本でも最も複雑な運転系統、乗り入れを行っており、鉄道はつながることで、どこまで限界に挑戦できるのか、また、実際はさほど利用されていない、海老名から横浜方面直通が少なくなり不便になった、など、いろいろ批判もあるようで、こうした声にどう対応していくのか、関係者が多いだけに、今後も難しい調整があるとは思います。
 また、行き先が飛躍的に増えたことで、乗客からしてみると、見慣れない行き先のオンパレードであり、戸惑うことも多いのではと思います。
 このへんは、どこかに出かける際に、スマホでの経路検索が一般化したことで、はじめて実現できた乗り入れなのかもしれません。


 


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