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身内をも欺く

 コンフィデンシャルな情報を多く持ち、相手方との信頼関係の積み重ねにより仕事をすることが求められる職責を担っている場合、組織内においては、時には身内をも欺くことが求められます。

 情報は、不用意に流れれば、その効力を減じたり、逆方向に作用することがあります。高い信頼関係により結ばれたインナーサークルの中で、情報をどう流すと、効果を上げられるかを検討し、時には望む方向に情報が流れるための溝を掘るような、事前の準備も必要になります。

 情報をインナーサークルから出したことで漏れてしまうと、相手方のカウンターパートとの信頼関係が揺らぎ、それはカウンターパートが組織内において信頼を失うことにもつながり、内部での情報過疎に追い込みかねません。しかも、そうした相手の手持ちの少ない情報すら、こちらに来なくなります。

 これは、ホットラインが失われた状態であり、通常、ホットラインが機能しないと、二つの組織の双方で疑心暗鬼の水位が上がり、共同プロジェクトが決裂したり、一種の戦争状態に陥ってしまい、お互いの利益を食い合うような事態になります。

 身内を欺くと、特に欺く相手が自分の上位者である場合は、批判を受けたり、評価を下げたりという目に遭うわけですが、ライン上の上位者との認識の共有ができている限りは、致命的なことになることはなく、こうした組織の内外からの批判は甘受しつつも、ホットラインの信頼関係は守る価値があります。

 もちろん、そこまでの信頼関係を構築するには、何か特別な関係が二人の間にない限りは、そこに至るまで、一つ一つのイベント、トラブルにおいて、相手の信を得るためのポイントを稼ぐことが求められます。トラブルは大きいほど、乗り越えた後に得られるポイントは多いのですが、それは容易ならざる険しい山道を進むようなもので、お互い、簡単なことではありません。

 そして、信頼関係が崩れるのは、一瞬です。

 この、お金では買えない、信頼関係が、経験と年齢を重ねると、何よりも重要であることが、知らされます。

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