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恐怖の地政学

 ティム・マーシャルという、英国のジャーナリストが書いた「恐怖の地政学」という本を読みました。2015年に英国で出版され、2016年に日本語訳されて日本国内でも発刊された、今から7~8年前の書籍であり、その後、世界情勢は大きく変化していますが、この本に書かれている地理的制約がもたらす戦争や対立の構図については、みずみずしさを失っておらず、昨今の緊迫する国際情勢に照らし合わせて、興味深く最後まで読了することができました。
 日本は少子化が進むが、移民政策の変更は現実的には難しいであろうということや、中国の台頭を考えると、いずれは日本と韓国の関係は改善せざるを得ないだろうというところ、航行可能河川を域内に多く有する欧州や米国と、大河を抱えながらも航行が困難なアフリカや南米では、特に内陸部開発の面で乗り越えられない壁があること、中東はイランが孤立しつつも険阻な地形に囲まれて、不可侵であり続けるだろうということ、さらにはロシアが、安全保障面でエネルギー供給を人質にすることなど、それは未来に起こることの必然のように書かれていました。
 地理的な制約を乗り越える航空分野の発達にもかかわらず、最終的に戦争によって相手方を支配するには、最後は陸上戦力に頼るしかなく、そこで地政学的要件が壁となり、乗り越えることが難しくなる、その失敗は100年前も、場合によっては1000年前も繰り返されてきた教訓であり、なればこそ、時代の変化の著しい現代において、ロングテールであり続けられるのだろうと感じました。

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