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江戸時代との比較はフェアではないのでは

 国民負担率が5割に近くなり、江戸時代の農民の年貢で半分を持っていかれる「五公五民」であったので、江戸時代の農民並みの悪政だというコメントが巷にあふれているようです。
 確かに、世の中の制度や仕組みが複雑になり過ぎており、受益と負担の関係が見えなくなっていることで、そうした世の中のシステムの複雑さの中で、本来必要とされる以上の利益を得ている人は少なくないように思います。一律10万円の給付金や、子ども手当の所得制限の撤廃、NISAの制度拡充、ふるさと納税などは、持てる人と持たざる人の資産格差を拡大するだけで、必要なところに税収を使っている姿とはいえないと思いますが、これらの所得格差拡大策は、高所得層への税収還元の側面もあるでしょうし、国民負担率への影響はさほど大きくはないと思います。
 結局、江戸時代との違いは、平均寿命が大きく伸びたこととに加え、その結果として大幅に増えた高齢者に対する介護や医療、年金制度の充実が図られていること、それに加えて、国民全体を対象とした義務教育、医療に関する国民皆保険制度、障害福祉の充実、失業保険、災害復旧・復興に対する手厚い支援制度などがあることが大きく、江戸時代はそうした分野は、家庭内や地域社会の相互扶助に委ねられていたわけですので、現状の国民負担率をそのまま年貢の率に当てはめるのは、フェアではありませんし、その「悪政」の元凶が現在の政権だという使い方は、建設的な政策論争とは遠い姿のように思います。こうしたことを論っている間に、この国はいよいよ危うくなってしまいます。

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