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「最弱のビジネスパーソン」が考える、弱みを強みに変える方法


僕の本業は、おもちゃ・ゲーム・アイデア商品を作ることですが、よく人から「本業の話よりも、晋平くんがそんな弱々しいのに起業してたくましく世を渡り歩いていることに興味がある」と言われることがあります。どのくらい弱々しいかを文章で伝えるのが難しいですが、友達全員が弱々しいと言うくらい弱々しいです。

2014年に体力の限界という理由で大企業を退職し、恩師の半ば強引な後押しにより会社を登記して頑張っていたのですが、「弱々しい」が注目される転機が2017年に訪れました。石川善樹さんと吉田尚記アナウンサー(よっぴーさん)の本『どうすれば幸せ~』で「最弱のビジネスパーソン」と紹介していただき、その流れでクラシコムの青木耕平さんと「弱さ」について対談させていただき……、そんな先輩方のおかげで「弱々しい起業家」としてときどきイベントに呼ばれるようになりました。そういうとき僕は、「ぶっちゃけ、意識して自分の弱みを活かして生きている」と話しています。(で、よく「ズルい」と言われます。)


実際ズルいのかもしれませんが、10代の頃に心臓病で激しい運動禁止だったこともあり、昔からから体も心も弱かった僕は、なんとか自分の持ち合わせている能力の範囲で社会の荒波の中で働く術を身につけ、今は起業してそれなりに人の役に立てています。弱みを強みに変えることでより良い仕事ができていることは事実です。

そこで今回、自分なりに、どうすれば弱みを強みに変えることができるのかを、3つのポイントにまとめてみました。この話が世界の誰かの役に立てば幸いです。

1.まず自分の弱みを自信満々に語る


人の強み・弱みは以下の図のような4象限マトリクスで分けられます。

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横軸が「強み・弱み」、縦軸が「改善したい・そのままでいい」です。

たとえば僕自身の強み・弱みを具体的に当てはめると、こんな感じになります。

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まず武器にするべきなのは第3象限の、「そのままでいい弱み」。つまり、もうあきらめて一生を共にしていく弱みです。それを自信満々に語ることが第一のポイントになります。

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例えば僕の場合、身長184cm・体重53kgという超極細体系と、見るからに弱々しい青白い顔立ちを天より与えられています。僕は、この誰よりも弱々しい見た目のおかげですべてが上手く行っているとよく話しています。

もちろん10代の頃はこの体系がコンプレックスでしたが、今はラッキーだと思っています。この姿でフラフラと、かつニコニコしながら現れると、少なくとも害はない人間だと思われることが多く、だいぶ得をしています。

こう言うとみんな「なるほど、弱々しい外見が武器なんだね~」と納得してくれるのですが、実はそうでもありません。これは僕のやり口のネタばらしになってしまうのですが、見た目がポイントなのではなく、見た目を自信満々に語っていることがポイントです。

冷静に考えたらそんなに得なはずがない見た目を、「これが武器で上手くいっている」と宣言することで、たいていの人は「(なんかよくわからないけど..、)この人は奥が深そうだな」と思ってしまいます。でも結局それはツッコミどころなので、弱々しい見た目は公然とイジられ始め、笑いに変わり、周囲に安心感を与えていきます。別に見た目が弱々しいから何かが凄いなんてことは一切ありません。

初対面の人に自己紹介をするときは、もちろん強みや得意分野を初めに話すでしょう。しかしそれだけで終わると、「この人、すごい人かも…」と思われて相手に距離を感じさせたり、あまり関心を持ってもらえなかったりすることがあります。人はどちらかと言うと相手の「弱み」を知ったときに、より関心を持つのが性です。愛される瞬間は、その人の弱みが垣間見えたときです。イケメンで頭が良いサッカー部のキャプテンが好かれるのは中学生時代くらいの話で、大人になると、強みが前面に出ている人は、すごがられるようになります。大人になるとみんな自分が弱いことを自覚し、それをあきらめて生きるようになるからです。相手にも弱みがあることを知って初めて、人は相手に共感し、安心します。変えられない弱みは、「愛され力」という強みに変わります。

この話をイベントなどですると、よくこんな質問をされます。

「私の弱みは、ついキツい言葉を使ってしまうことで、それは笑いには変わらないし、愛されないものなのですが、そんなときはどうしたらいいでしょう。」

それに対する僕の答えは明確で、いかなる弱みでも、それを自信満々に語るだけです。「私はいつもキツいことばっか言っちゃうところがチャームポイントで、それで上手くいっているんです」と。普通に考えたら弱点だと思われやすい性質であるほど、これが効いてきます。

自分の変えられない弱みをネガティブに話す人は、気を遣われます。しかし、変えられない弱みを自信満々に話す人はなぜかチャーミングに見え、そのうち必ずその弱みをイジってもらえるようになり、笑われて、安心されて、愛されます。弱みを、悲壮感を出しながら話してはダメです。誰も幸せになりません。(ちなみに、僕が大好きな異性のタイプは昔から、実際はどうあれ「私の長所は顔がカワイイこと」と言っている人です。自分の奥さんもそうでした。)

さらに言うと、近くに1人、自分をイジり倒してくれるパートナーがいれば、より上手くいくことがあります。例えば自分がついつい社内でキツいことを言っているときに、「お、キツみが出てる、キツみが。」みたいに言ってくれるツッコミ役がいると、笑われ力と愛され力がより発揮されたりします。


2.弱みとのギャップにより、強みを最大化する


自分の能力とは「強み・弱み」のセットです。強み・弱みマトリクスの中でポイントになるのは、第1象限の「さらに磨きたい強み」と、第3象限の「そのままでいい弱み」の対比です。できれば、他人とのコミュニケーションは、最初に弱みから話し始めるのが良いと思います。

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例えば僕の場合、おもちゃ開発者のくせに絵が描けません。デザインの類はすべてデザイナーさんにお願いをしています。自分が絵を上手くなろうとは全く思いません。一生自分で描かないことを決め、Adobeのソフトすら数年前に手放しました。

一方、強みはおもちゃの企画を考えられることですが、仕事上のコミュニケーションの流れとして、「僕には商品企画力があります!」といきなり言われても、ほとんどの人が「ふーん」で終わってしまうところが、「僕、おもちゃ開発者なのに絵がめちゃくちゃでして!」と言うと、「うちに優秀なデザイナーがたくさんいるよ。でも、ネタがなくてね~」というような話が引き出され、「じゃあ僕に企画考えさせていただけませんか」というようなマッチングが生まれます。僕の仕事の始まりはだいたいこんな感じです。そして、弱みから入ることでギャップが生まれるせいか、「こいつ思ったよりすごいな」と褒めてもらえます。

人は、まず自分が相手の弱みをサポートしてあげることができるとわかったときに幸せを感じ、力を発揮します。相手が強みを発揮できるように自分の弱みを先にさらけ出すことがで、運命のパートナーが見つかり、「合わさって」行くことができます。すごさで選ばれていると、もっとすごい人が現れたときに代替されるかもしれませんが、弱さで選ばれていると、人生の友達になれます。

別の例で言うと、僕はいろいろな会社のアイデア会議をお手伝いしていますが、そこでやっていることはだいたい、率先してダメなアイデアを言うことで、「こいつよりはいいアイデアを思いついた」ということが起きるようにしています。(そう言うと計算しているように聞こえますが、本当にダメなアイデアばかり思いつくし、ダメなことを思いついたらすぐ言いたくなる悪い癖があるだけです。)個人的にこれを「赤ちゃんプレイ」と呼んでいます。まず周りに僕を支えてもらうという。で、最終は発案者のアイデアを具現化するときに力を発揮しているつもりです。

弱みは強みに変えられると言っても、結局は自分が一生磨き続けたいと思える強みがなければ、弱みも活きてきません。今すぐに思いつかなくても、自分が高みを目指したいと思える「強み」を見つけて、悩み苦しみながら一歩ずつ成長させていく姿勢が必要です。弱みを振りかざすだけで上手くいくわけではありません。


3.「克服したい弱み」を最強のコンテンツにする

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弱みには、別にこのまま一生を共にしてよい弱みと、克服したい弱みがあります。自分の弱み全部をそのままでいいとあきらめられるならそれが一番幸せだと思うのですが、そう言われた時に、今のまま一生生きることを想像したらあれは絶対やだなと思う「あきらめられないこと」が、克服したい弱みです。試しに考えてみると、1つ、2つ…と思い浮かんでくるかもしれません。

そんな「克服したい弱み」は、自分の最強のコンテンツに化ける可能性があります。

僕は、自分のコンプレックスを解決するおもちゃをよく開発します。

親とのコミュニケーションがうまくできないことが長年の悩みだから、以下の「スマホ鳩時計OQTA」に携わったり、


クリスマスに彼女と過ごしたことが1回もなくて、昔はものすごく悩んでいたから、「VRクリスマスケーキ」を作らせて頂いたり、


奥さんと子育てのことでイライラし合って切実に大変だった頃に、「アンガーマネジメントゲーム」を作らせて頂いたり、


月曜日に毎週お腹が痛くなって本当につらいから、自分がそれを克服するために、月曜日の憂鬱を減らす方法をいろいろな達人に聞く連載の仕事をやらせて頂いたり。


そもそもおもちゃ開発者になったのも、高校時代まで無口で暗い性格だったから、人を笑わせる芸人みたいな仕事をしたいと喰らいついた執念からでした。しゃべりが得意になったのもコンプレックスをバネにしてのことです。「克服したい弱み」は、自分を爆発的に成長させるかもしれない伸びしろです。

自分が長年変えたいと思ってきた弱みには、自分と社会にイノベーションを起こせる可能性が秘められています。世界には、似たような弱みで悩んでいる他の誰かが必ずいるからです。自分の最大の弱点を企画の材料にすれば、世界で自分にしかできないたった一つの仕事ができるかもしれません。それこそが、この世の他の誰かを幸せにする仕事です。仕事は自分の強みで誰かに貢献することでもあり、弱みで誰かに貢献することでもあります。

ちなみに今僕は、「筋トレを続けられる企画」「部屋を片付けられる企画」などを考えています。すべて自分が切実に変えたい弱みを克服する企画です。「俺得」な企画こそ、本気でクオリティの高いものを実現させられて、自分以外の人にも価値を与えられる、自分が人生を賭けて形にしたいコンテンツになります。


まとめ:弱いから、人を愛せる


僕は一度仕事で完全な天狗になったことがあります。自分は強くなったのだと思っていました。大企業に勤め、その中でヒット商品を連発し、社長賞も獲り、業界の賞も獲り、思いつく商品みな売れる気しかしないという状況になったことがありました。そしてその直後に倒れて1年半動けなくなり、あっさり会社を病気による自動的退職、つまりクビになりました。

後に振り返って思うのが、人は誰しも、ダークサイドに堕ちる可能性を秘めているんだろうということです。仕事が上手くいきすぎたとき、先輩に軽口を叩いたり、取材を受けている途中に構わず電話を取ったり、そんな最悪な行動を取っていました。他人よりも自分が好きでした。そんな僕を、僕の弱々しい体がぶっ倒して立ち止まらせてくれました。

このエピソードすべてをひっくるめたものが僕の弱さです。僕は今でも心が弱いままで、いつも何かの不安を抱えながら生きていますが、弱いことを自覚したことで人生が変わりました。自分が頑張れる範囲を分かったり、無理なことをあきらめて望む人生や家族や健康を守れたりするのも弱さのおかげです。(ちなみにうちの夫婦ゲンカの終わり方は、僕が「畜生!相撲で勝負だ!」と言って奥さんに組み付いて投げ飛ばされて終わります。娘たちがケンカしていたらそばに言って「オギャア!」というと、二人で力を合わせて僕のお世話をし始めます。これが弱さの効力だと思っています。)

人は一人では何も成し遂げられないし、人に甘えて頼るには、弱さが必要です。弱さをさらけ出すことは恥ずかしいことではなく、相手に助けてもらう代わりに相手へ贈るプレゼントだと思います。おこがましい表現かもしれませんが、弱さというプレゼント交換によって、人は人を好きになりながら、誰かの役に立ちながら生きているのだと思います。

みなさんに今、悩んでいる弱みがあるならば、それは宝物です。それを自信満々に話し始めたとき、人生は思わぬ方向に開けていくのかもしれません。


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