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偶然流れ着いた日の話

吾輩はとあるアパートに住む
「ぬいぐるみ」である。

人間の基本的な生活において
吾輩に活躍の場はない。

どの家庭にも形こそ違えど
ひとつやふたつ…いや、数えたら
そこそこの数が生息しているであろう
ただのぬいぐるみである。

吾輩の仲間は主に水族館の売店に
一定数生息しているだろう。
ちなみに吾輩は沖縄出身である。
我が主未踏の地と聞いている。
つまり「土産」としてドナドナされたのだ。


…さて、前置きはこのくらいにして
吾輩の主はどうやらミニマリストとやらに
なりたいらしい。

ーー吾輩が生息している段階で
        到底無理だと思うが。

主もその辺りは薄々気付いていると
思いたい。
まぁ主の場合、そんな仰々しい名を
欲しているというより、とにかく
シンプルに生活を整えたいと願い
日々精進しているようだ。

モノを減らし、効率化を考え、
節約と潤いのバランスを取る。

買うモノを厳選し、1日1捨。

吾輩のようにゆったりと時間をかけて。


生活を整えるのは時間がかかる。
そして維持出来る形が求められる。


置かれているだけの吾輩から見ても
人間の生活というものは苦労が多い。

背負い込む苦労は少ないに
越したことはないだろう。

我が主はどうやら歳を重ねて
漸く自分が好む生活が
分かってきたらしい。

高価なモノを好まないことも

大して社交的でないことも

住まいにいる時間が一番落ち着くことも

気付くまでに随分時間がかかったようだが
気付かず必要以上の苦労を背負い続けるより
ずっといい。

主の目指す生活スタイルは、
共に生活する家族の理解と協力も必要だ。

多趣味な連中とどう折り合いをつけるか
吾輩は楽しみだ。

家事育児も我が主が育った時代とは
様変わりしていると聞く。

しかも我が主の息子は発達障害。
悩みも工夫も現在進行系で多い生活だ。

そんな中で時代遅れにならぬよう
適応していく必要もある。

ココに流れ着くまでにも色々と
投稿の形に悩んでいたらしい。

「買うモノは少ないに越したことはない」
というのが我が主の主軸であるにも
関わらず、買ってね♪と言わんばかりの
広告に悩まされていたとか。

偶然流れ着いたココが
長く居心地の良い場所で
あってほしいと思う。

何はともあれ縁あって吾輩が
住むことになったこの家庭が
末永く穏やかなものであって欲しいと
願っている。

吾輩が断捨離されぬことを切実に祈りつつ
これからも主の生活を観察しようと思う。


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