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たった1人の君へ。

パリン。花瓶の割れる音がした。
僕は怒り狂っていた。悩んでいた。もがいていた。
全てがどうでも良くなる。
僕が変われたのは、君が現れてからだっただろうか

学校に行くのをためらうようになったのはいつの事だっただろうか.....。
同じ出来事の繰り返しだと感じた半年前。
耐えに耐えたいじめに、僕はとうとう耐えきれなくなり、手を出してしまった。僕が悪かったのだ。
容姿の悪さは自分が一番理解していた。
いつの間にか、学校中の生徒に僕は否定された。
君だけだった。僕に関わってくれる人は。
僕は、ただひたすらに楽しかった。君と話す時、君の隣にいる時、もう、君と過ごす日々は僕にとってかけがえのないものだったのだ。
君が好きなものは調べて僕も好きになろうとした。
君が嫌いなものは僕も嫌いなんだ。いつの間にか、僕の感情は君にしか向けられていなかった。
ある日、僕は相談を受けた。そう、君からだ。
内容は............君に好きな人がいる...。
私は抑えた。必死に。この感情を悟られまいと。
しかし、君の好きな人を罵ってしまった。
きっと嫌われたのだろう。そう思った。
君は"昨日の事は気にしてないから"と優しく振る舞った。
その後、彼女は付き合う事になった。
当然、僕に裂く時間は短くなり、日に日に僕は前の自分に戻っていった。
僕は感情を失った。抜け殻だ。生きる事が嫌になる。そうして、自分を失ってしまった。
彼女と話す機会はなくなり、絶望していた僕に、
彼女が"彼氏とのデートに付き合って欲しい"と話を持ちかけてきた。

いい加減にしてくれ。

僕は、はらわたが萎え繰り返しそうだった。
断ろうとした時、彼女の悲しそうな目が見えた。
今までの日々が蘇る。私はあっさりOKしてしまった。
なるべく2人の時間を作れるようにと、僕が単独行動になるように誘導し、早3時間経過。4時間経過。5時間経過....。もう帰る時間になった。彼女とろくに話もせず、淡々と歩く帰り道。意識が遠のきそうだ。
信号に通りかかった時、僕の視界は立っているとは思えないほど、地面に近いものだった。
後に、警察から説明があった。信号は確かに青信号だったが、暴走車両に僕が気づかなかったのだと。
僕の命が消える寸前、君は僕を守ってくれたのだと。
君は死んだ。僕は君にとって悪魔でしか無かった。
僕のために死ぬなんて.....。
遺族の方にも散々罵詈雑言を浴びせられた。
向ける顔がなかった。自殺も考えた。
だが、君に守られた命を軽々しく捨ててはいけない。そう誓った。
今思えば、君は僕にとってかけがいのない存在だ。
"君がいたから今の僕がいる"この言葉の重みは、他の誰にも負けない、いや、負けたくない。
君に救われた僕なんだ。君がいてくれたから.....。
当時、彼女に関係していた、当時の君の彼氏や君の家族には、いくら謝っても足りない。

僕の人生、ほんと後悔ばかりだ。
ただ、空にいる君にたった一言だけ。

あなたに出会えて良かった。

#あなたに出会えてよかった

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