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この恋をあたためろ

 今年も様々なことがあった。
 そして甘いものはひとを問答無用で幸せへと叩き落とすのだ。

 そういうアティチュードのもとに繰り広げられる和製ハーレクイン小説の最新形態めいた比類無きテレビ・ドラマ『この恋あたためますか』は、この火曜日(12月22日)に最終回を迎える。

ここから少しネタバレ含みます。


 ヒロイン・キキちゃんは彼氏の新谷くんと完全に良い感じであり、ボーリングでふざけあったり気の合うふたりのノリが完全に出来上がっており、お似合いのカップルこの上ない。
 だが、キキちゃんはコンビニチェーン・ココエブリィの元・社長、浅羽とも良い感じなのである。だが、キキちゃんと浅羽はお互いに恋心のようなものを抱きつつも、その感情の扱いに戸惑いながらいっしょに焼き肉食べにいったりしている。
 元・社長の浅羽は、クールかつしたたかにタフなビジネスの戦場をサヴァイブするやり手であるが、天真爛漫なキキちゃんによって保ってきた仮面やらリズムやらを幾度となく破壊されまくった結果、だいぶんクラクラきていてオチるまでもうゲージが1ドットしかないがギリギリで踏ん張っている。

 そんな三角関係や微妙な感情には三人ともがなんとなく気づいており、最終決戦のときが訪れるのは時間の問題……という状況で、今カレの新谷くんが先手を打ったのである。
 キキちゃんとクリスマスに元・社長と自分のどっちと過ごしたいか決めるためのデートを申し込んだのだ。
 そして、前述したようにボーリングでふざけあったりめちゃめちゃ楽しく過ごした。そのあと良い感じの夜景の場所で、新谷くんがキキちゃんに答えをたずねようとしたときに、会社からダッシュして現れた浅羽が、新谷くんのターンをぶんどり、ほとんど鷹が獲物を捕獲する鋭さで告白のアサルトをやった。浅羽のライフゲージはとっくに0ドットだったのだ。新谷くんが浅羽の急襲にあっけにとられている間に、浅羽はめちゃめちゃ魂のこもった、かじかんだ手足まで熱くなるような告白をした。
 これは新谷くんにはたまったものではなく、本当に、新谷くんにしてみれば、この日のデートを良い感じに運んできた努力が、最後をロマンチックな夜景のみえる場所にもってきたことが、完全に仇となっており、たまったものではない。
 浅羽のダッシュ・アサルト・告白はこれ以上無いというタイミングであり最高に見事だが、それがバシィッッと決まったのは新谷くんのおかげなのである。
 キキちゃんの返答は最終回へ引き継がれるが、完全にまんまと目が離せない。
 テレビ局の前に看板として掲げられたりしてるキービジュアルが、主要な登場人物がみんな揃ってめちゃくちゃ良い笑顔してる写真なのだが、ぼくはそれは、物語の最後にその顔してるのだと思っており、この、今現在の展開からその顔につながる結末とはなんだろうかと想いをめぐらせている。

 ここでキキちゃんが元・社長とくっついたら新谷くんはどうなるというのか。ボーリングで楽しそうに盛り上がれるやつは本当にごきげんないいやつだと思うが、もうボーリングを二度としなくなるんじゃないのか。
 ここまで語らなかったが、元・社長にはいまもきっとひそかに想いを寄せてる元カノ・里保さんがいるんだぞ。里保さんはどうなるというのか。元・社長にキキちゃんに告白しなくていいのかとキックしたのは、里保さんだが、それは、自分の想いにも決着をつけたいという意図であると思われる。キキちゃんと元・社長がうまくいく結果になっても納得して気持ちを整理して仕事に精をだすのであろうが、その過程で悲しい涙をひとつこぼすのだろう。それは切ないぞ。里保さんはめちゃめちゃいい人なんだぞ。
 だが、キキちゃんも元・社長と出会って、スイーツ開発というめちゃめちゃやり甲斐のある仕事に出会ったし、人間的にも閉ざしていた扉を開くことができたのだ。
 どれが本当の恋心なのか。どの気持ちが本物か。本当の自分は、魂はどう言ってるのか。
 元・社長の急襲は、高まりきった恋のボルテージへの最後の一撃となりドラマは不可逆のレッドゾーンへと動き出す。
 そして最後たぶんみんないい笑顔で終わる。
 見届けよう。コンビニスイーツでも食べながら。


 

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