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天皇賞(春)、新馬先生はこう見る~甘美

プロローグ

僕は今、無性にプリンが食べたい。

子供のころ、体が弱く、
それこそ、季節の変わり目になると、
小学生の時分、よく体調を崩して学校を休んでいた。

学校そのものは好きではなかったけれど、
学業となにかに遅れる感覚が嫌で、
いざ休むとなると気が重くなる。

よくある春の1日、僕はやっぱり風邪をひいて、
学校を休んだ。
ベッドの上であてもなく視界を上へ彷徨わせながら、
母親が買い物から帰ってくるのを待っている。

白いキャンバスのような天井を眺め、
気付くと意識そのものが白い無意識に誘われる。
体の節々が熱の炎症で軋むけれど、
それらから解放される入眠の瞬間が、
少年時代の僕は好きだった。

少し長い時間、夢の世界にいて、
覚めると、喉の渇きで目が醒めた。

静かだが、人のいる気配がする。
母が買い物から帰ってきたのだろう。
目覚めの覚醒もままならぬ中、僕は欲求のままに
冷蔵庫の中からポカリスエットを探して、
缶のプルタ親指で弾いて、口元から流し込んだ。
たぶん、風邪の時、食欲がない時のポカリスエットが
世の中にあるポカリを飲むどの瞬間よりも1番美味しい。

喉元が水分で満たされると、
今度は甘いものを体が欲していることに気付く。
冷蔵庫をもう一度開けるとそこには3つが連なったプッチンプリンが
未開封のまま置いてあった。

風邪の時、喉が弱い僕に母は、必ずプリンを買ってきてくれた。
なめらかな甘い舌ざわりのプリン。


風邪をひくのも、学校を休むのも、
ベッドが居住地になることも、嫌だったけれど、
プリンが冷蔵庫に入っているのその時だけは、
風邪を引くのも悪くない。
と、子供心に思ったものだ。

別に皿を準備して、カラメル側を上にするのも
プラスチックの器の下にスプーンを這わせて、
黄色い軟体に、黒茶の液体が染みわたっていくのを見るのも、
どちらも大好きだ。

プリンが食べたい、
大人になっても、
風邪を引いたり、心が弱ったりしたら、
プリンを僕は探すのだ。

「愛はコンビニでも買えるけれど、もう少し探そうよ」

「運命の人」スピッツ

と、僕が愛するバンドのボーカルは歌っていたけれど、
心が満たされることを広義で愛と定義出来るのであれば、
コンビニには愛が溢れているなと、僕は思うのである。

けれど、今日の僕は、市販のものより少しプリンを食べたい。
パステルのプリンを初めて食べた日の感動を今でも覚えている。
このなめらかさを作った人たちにノーベル平和賞を送りたいって言ったことも、それを言った後に、笑ってくれた競馬好きなあの子のことも。

僕は、今、プリンが食べたい。
あのくらいの甘い世界が僕は好きだ、
更に言うなら優しい甘さが今ほしい。

さて、天皇賞春の予想をしよう。

調教診断

3200mを走るので1週前に負荷をかけている馬が多く、
輸送もある関東馬は特にその印象が強かった。
力強さよりも、どちらかと言えばリラックスして走れる馬を上位に取る。

調教評価第1位

6 アスクビクターモア

最終追い切りの走りはテンションが高すぎずかなり良い

日経賞はレースをほとんどしていなかったこともあり、疲れはほとんど感じさせない。
この馬は、気性的な問題として、ウッドの単走しか追わないのだが1週前に横山武史騎手を乗せて追った際に、少し離れてだが前に馬を置いて走らせていた。
少し気負っていたが、迫力もタイムも充分。
最終追い切りでは、調教助手が乗り、単走。
リラックスして走れており、純粋に叩いた分の良化が見られる。
田村康仁調教師は以前、田辺騎手への信頼を口にしており、鞍上を変えたのが意外であったが、これはオーナーサイドからの要望ではないかと思っている。
積極的な騎乗が目立つ騎手だけに、スタートが決まればかなり前進出来るのではないかと感じた。

調教評価第2位

3 タイトルホルダー

出色の1週前追切

1週前の評価はこの馬が1番よく見えた。
最終は負荷を軽めで併せた未勝利馬と流しており、万全。1位の馬と差はほとんどなく、強いて言えば最終の終いだけコーナーから直線で右にヨレているように見えたため。

調教評価第3位

1 ジャスティンパレス

1週前7F追いでしっかり動いている

元々調教をしっかり動かす馬であり、厩舎も負荷を強くする印象。1週前の動きは上位3頭と遜色ない。強いて言えば、トビが大きく、最終のCWの走りを見た時重め残りの馬場は向いてないのかなと思ったので、3位に。馬場が回復する可能性を加味すると1枠は良いが、窮屈にならなければかなり良いと思う。

調教評価第4位

9 ヒュミドール

1週前リラックスして加速

上位人気が順当だなと感じた中、唯一おおっと感じた1頭。併せ馬も四肢の動きが滑らかで以前よりバランスよく加速している印象。
最終は坂路で追われてラチに寄っていったが、刺激入れとしては加速ラップで終わっており、良く見えた。追走に課題はありそうだが、潰し合いになれば穴に一考できる出来。

調教評価第5位

7 ディープボンド

持続性のある脚を感じさせる1週前

衰えをあまり感じさせず、とにかく追えば走れるタイプ。スローで瞬発力勝負の高速馬場になると厳しいが、序盤で前目に置ければ馬券圏内まではあると思わせる印象。全身を使った走りは迫力があり、馬場が重くなれば、チャンス到来か。

エピローグ

僕は思うのだけれど、
プリンを好きだという人にはあったことはあるけれど、
不思議と嫌いな人には会ったことがない。
けど、それはプリンを嫌いな人が
わざわざ言わないだけだからかもしれない。
それに卵アレルギーの人だっているし、
カラメルの甘ったるさが嫌な人だっていると思う。

別に、自分が好きなものにわざわざ嫌味を言いに行く必要もないと思う。
僕もわざわざプリンが嫌いな人にプリンの愛を語るほど酔狂でもない。
だって、それだったら、同じ価値観を共有できる人とおいしくプリンを食べた方が幸せだなと思うから。

競馬だってそうだ。
わざわざ、競馬が嫌いな人が僕のnoteを見ることはないと思う。
同じ趣味を楽しむんだったら、楽しむ方がいい。
SNSには有益な情報も多いけど、人を蝕む言葉もたくさん溢れている。

けどね、僕は思うんだけど、
ここにいる大半の人は、
他人と人間以外の生命体に、
自分の大事なお金を委ねて、
楽に増やそうとしているんだから、
他人を貶めるくらいの3分なら、
思うがままに賭けて楽しめばいいと思う。

「バスの揺れ方で人生の意味が分かった日曜日」

「運命の人」スピッツ

と、僕の大好きなバンドは歌っていたけれど、
人生なんてそんな些細なもので運命は変わるもの。
新しくなった京都のコースで、初めて行われる3200m。
天気だって、荒れるかも。

今年の天皇賞(春)は、
そんな不確定な要素を沢山はらんでいるんだから、
信じたいもの、信じたいデータ、信じた騎手で勝負すればいいと思う。

堅めのプリン、やわらかいプリン、ほろにがのカラメルが乗ったプリンが好きな人、甘ったるい昔ながらのキャラメルが好きな人。

色々いたっていいじゃない。
全部が真実で、全部が正しい。

19年前の京都で、イングランディーレという馬が
10番人気で天皇賞(春)を逃げ切った。
横山典弘騎手の名騎乗の一つと言われた1つのレース。

その息子は、雑誌の対談で、父の最も印象深いレースとして
このレースを挙げている。

去年、天皇賞を制した時に、父は一緒に騎乗をしていなかった。
今年、彼は見せれるチャンスだ、今年は父も同じレースに乗る。
そこで、父も成しえていない天皇賞(春)連覇に挑めるチャンス。

それが僕の信じる第162回天皇賞(春)。
だって、横山典弘騎手が好きなんだもん。

2023年 天皇賞(春)
僕の本命は
◎ 3 タイトルホルダー

日曜の夜ごはん、デザートがコンビニのプリンになるか高級プリンに変身か。
それが問題だ。

あんまり難しく考えても仕方ないから、あたまを柔らかく、甘々で考えよう。皆さんの天皇賞がいいものであるように。

僕は、今、プリンが無性に食べたい。

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