見出し画像

Amazon Goに行ってみた

ソサエティのブログで3年ほど前に公開した記事になりますが、noteでも公開します。記事後半では、中島聡によるビジネスアイデアの考察も入っていますので、ぜひお楽しみください🙂  

先週、たまたま近くで食事をする機会があったので、Amazon Go を体験して来ました。日本でも報道されたのでご存知の方も多いと思いますが、Amazon Go は一言で言えば、レジ無し・コンビニです。

画像1

入り口はこんな感じで、赤いジャケットを着た二人は店員です。本来ならばこの二人は不要ですが、まだ不慣れな人も多いので、案内係として常駐しています。

Amazon Go で買い物をするには、専用のアプリをスマートフォンにインストールし、Amazon のアカウントと結びつけておくことが必要なので、その説明をしているのです。そして店舗に入る際に、そのアプリのQRコードを入り口のゲート(下の写真)のスキャナーにかざすのです。日本の鉄道のゲートを通る時の感覚ととても似ています。

画像2

店の中には、ごく普通のコンビニのように陳列棚があり、そこに商品が並んでいます。品揃えはサンドイッチ、お菓子、コーヒー豆、飲み物など、いかにもコンビニらしい品揃えですが、日本のコンビニほどは充実していません。ちなみに、サンドイッチ類は、店の横にあるガラス張りのキッチンでせっせと作っていました。

画像3

そこから欲しい商品を持ち帰るだけです。私は、入り口にいる店員が配布していたショッピングバックに入れましたが(下の写真)、自分が持ち込んだバッグに入れても、ポケットに入れても大丈夫です。店内に設置した複数のカメラが、誰がどの商品を持ち帰るのかを認識しているため、一度バッグに入れた商品を棚に戻しても、ちゃんと処理してくれるそうです。

画像4

ちなみに、店から出る時に通るゲート(下の写真)には特にセンサーもストッパーもついておらず、普通に歩いて外に出るだけです。

画像5

店を出て3分ほど経つと、スマートフォンにアラートが届き、チェックアウトが終了したことが知らされます。

画像6

最初はとても違和感がありますが、この「レジに並ばなくて良い」という感覚は、とてつもなく気持ちが良く、もし普通のコンビニと、Amazon Go が並んでいて、同じような品揃えと値段であれば、私は100% AmazonGo を選びます。

スーパーで買い物をするストレスを10、コンビニのそれを3とした場合、Amazon Go での買い物のストレスは1ぐらいに感じられるのです。

Amazon がこの Amazon Go をどう位置付けているかについては様々な意見がありますが、私は結構本気だと思います。もちろん、実店舗ビジネスの展開にはリスクが伴うので、慎重でなければなりませんが、「コンビニ」というビジネスが日本ほど一般的でない米国においては、とても大きなポテンシャルを持っています。また、ビジネスモデルが破綻しつつある日本のコンビニ(オーナーの超過労働でかろうじて成り立っています)でも導入を真剣に考慮する意味はあると思います。

ちなみに、Twitter のコメントで、「悪くは無いと思うけどファミチキやアメリカンドッグや肉まんやおでんなど補充したり揚げたりする日本式コンビニは生き残ると思うな」というものもありましたが、決して「無人コンビニ」ではないので、その手の「熱々を食べてこそ美味しい食品」を販売することも十分に可能です。

レジを無くしたことを「人件費の節約」と解釈している人がいるようですが、それは間違いだと思います。それよりも、顧客に最高のショッピング体験を提供し、結果として一店舗あたりの売り上げを(通常のコンビニの)何倍にもすることを目指しているように私には見えます。Amazon Go でのショッピング体験があまりにも素晴らしいものだったので、その後も色々なアイデアが湧いて来ます。

私の息子はシェフでシアトルでレストランを経営していますが、バーで提供するカツサンドの評判が良いので、カツサンドだけを販売する良い立地はないかと探している所です。もし Amazon Go のテクノロジーがライセンスして「レジなしカツサンド店」を開くことが出来れば、顧客一人あたりの滞在時間を極端に短くすることが出来ます。つまり、場所と食べ物の質さえよければ、小さな店舗で大きな売り上げを上げることが可能になるのです。
つまり、AmazonGo の技術は、単にコンビニをより便利にするだけでなく、「カツサンド屋」のような単品で勝負する小さな店舗のビジネスのスケールを大きく変えてしまうポテンシャルを持っているのです。
さらに思うのは、AmazonGo の究極の形は「通路型店舗」だと思います。うなぎの寝床のような形の店舗で、入り口から入って、一方通行の通路を進みながら欲しいものを手に取り、出口から出るという極端に滞在時間を短くした店舗です。
日本で言えば、オフィス街で弁当を売る方法として最適で、複数の弁当屋が入って一つづつ棚を担当し、裏から弁当をどんどん補給するだけなので、とても効率の良いビジネスが可能になります。

ちなみに、レジなしはレストランでも導入が可能だと思います。私は会社の近所のベトナム料理屋によく行きますが、食べ物(いつも同じ Pho を注文します)が出てくるまで3分、食べるのが10分ぐらいの効率の良い食事が出来るのが素晴らしいのですが、最後の支払いにいつも5分ぐらいかかるのが悩みの種です。
この店が、AmazonGo を採用してくれたら、食べ終わったらただ立ち去れば良いので、それは私にとっては究極の幸せなレストランになります。

ちなみに、Recode によると、Amazon は AmazonGo を他の都市にも展開する計画を立てているそうです(参照:Amazon plans to open as many as six more cashierless Amazon Go stores this year)。特にロサンジェルスでは、Rick Caruso が経営する The Globe というショッピングモールに作るという具体性を持った計画があるそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?