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ハッピー・バースデイと私の誕生日 

日曜日は、私の誕生日だった。
前の日に、孫の保育園の「大きくなったね会」という発表会があり、3歳の孫が舞台の上で象さんに扮していた。「象さん!」と言う大きな孫の声が聞こえてきた。終わったら、家族で焼き肉屋に行くと言う。明日は誕生日だからとごちそうしてくれた。

翌朝、LINEで動画が送られてきた。孫がハッピーバースデイ トゥ ユーと上手に歌っている。最後にハッピー バースデイ ディア ジージと歌い終わり、「おめでとう」と言って祝ってくれた。

その日は、高齢者施設の音楽ボランティアがあった。ピアノ、バイオリン、サックス、フルートと賑やかな楽器が集まって、私たちの演奏に併せて、入所者たちの歌声が流れた。そして、今月が誕生日の人たちを祝って、ハッピー・バースデイを演奏した。

幕間に、歌なし演奏があり、私は、加瀬さんのバイオリンとピアノの伴奏に支えられて、「見上げてごらん夜の星」を演奏した。演奏の途中から、見上げてごらん♫と歌声が流れた。聞いてくれているのだと、うれしい気持ちになった。後で、加瀬さんに、「演奏中に歌声がしましたね」と言ったら、「それは音楽が伝わっているということですよ」と言われた。その言葉がうれしかった。

加瀬さんからバイオリンを習い始めて、7年になるだろうか。初心者の私をいつも励ましながら、適切な指導をしてくれた。「そのうち、あなたを連れて行くからね」と時々言っていた。今日のようなボランティア演奏に連れて行くということである。そして今日のような日が始まった。少しは恩返しができたのだろうか。

施設を出てから、加瀬さんとバス停留所でバスを待った。「実は今日は私の誕生日なのです」と言ったら、「早く言ってくれたらいいのに。私たちも仲間たちで祝って『ハッピー・バースデイ』を演奏することもあります」と言われた。

「誕生日は、また歳をとったようで、うれしいような、うれしくないような気持ちですね」と言うと、「誕生日は、一年間無事に楽しく生きられました。また一年がんばろうということですよ」と教えてくれた。来年の1月に、私の誕生日を祝う「ハッピー・バースデイ」がホールを流れる光景を想像した。

帰ったら、加瀬さんから「今日もありがとうございました。お誕生日おめでとうございます。ステキな一年にしてください」とLINEが来た。
本当に一年間無事に生きられたな。また一年を頑張ろう。そんな気持ちになった。


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