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この学校は僕のお父さんが造ったんだ

昔、再建された小学校の前を通るといつも「この学校は僕のお父さんが造ったんだ」という年下の友だちがいた。友だちのお父さんは、学校の理事長でもない、建築家でもない、普通の建設作業員だった。遊びに行くと座敷の隅に一升瓶の焼酎がいつも置いてあった。ある日、友だちの家に遊びに行くと、仕事休みの日だったのか、お父さんが焼酎を美味しそうにコップで飲んでいた。友だちがお父さんに向かって、「お父さんは焼酎が好きなんだよね」と言った。お父さんは、うんと言っただけだったが、その顔はうれしそうだった。

幼少の時に易者に見てもらったら「この子はとても良い人相をしているから、大切に育てなさい」と言われたという話を聞いた。その占いの通り、徳を備えた子だったと思う。中学校のときに、ある夜、急に訪ねてきて、明日、引っ越しするからと、ノートと鉛筆をくれて去って行った。そのノートは、使わないで何年も大事にしまっておいたが、いつのまにかどこかに行ってしまった。今でも、あの小学校を思うと友だちのことが思い出される。


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