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歯科医院が無くなった

2021年秋、急に近所にあるY歯科が前触れもなく閉院した。わが家では、長年、虫歯を治療してもらい、年に一回歯石を取ってもらっていたお気に入りの歯医者だった。かつて、家内が初めて歯石を取ってもらい帰ってきて、すごい丁寧に取ってくれたと感激して話していた。その言葉に引きづられて、定年後は、この歯科に通う。先ず歯石を取りに行ってみた。30分間、口を開けたままじっと我慢、歯科医は丁寧にガリッガリッと歯石を取ってくれているが、次第につばが溜まり、時々ごくっと飲み込み、またじっと口を開け続けている。40分ほどかかることもあった。予約制だが、患者を詰め込まずにゆったり診療していた。特に歯石のような時間のかかる場合は、治療時間を確保してくれたようだ。

最後に行ったのは、閉院の1ヶ月前だ。前歯の差し歯を調整してもらい、歯石を取ってもらい、一段落していたが、Y歯科の前を通ったら、閉まっている。翌日に通りかかっても閉まっている。「Y歯科の先生、コロナにかかったかな。ずっと閉まっているよ。」と言うと妻は知らなかったので驚いていた。しばらくすると隣の事務所といっしょに解体工事が始まって、歯科用の医療機器が撤去されていた。作業中の人に聞くと「移転するみたい」との返事に閉院と確信した。前の月に行ったときに、助手の婦人は何も言ってなかったし、クリニックの入口にも閉院の貼り紙ひとつない。もやもやした気持ちが続いている。

今から思うと、経営に長けていなかったからとも思える。たくさんの患者を入れて、10分ほどで治療を終わらせ、次の患者を診るようなことはしない、金儲け主義に走らない良心的な歯科医だった。営利主義でなかったから経営は苦しかったのか。コロナ禍で患者の足が遠のいたのが原因だろうか。コロナ禍で多くの医院が閉院したという話は耳にしていたが、間近に起こるとは思わなかった。わが家は、急の歯科医の閉院に途方に暮れた。ネットを調べても移転した情報が得られなかった。やむを得ず閉院したのだということで気持ちを整理したが、仮にも不慮の事故でなければいいなと祈っている。

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