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東京の豚「TOKYO X」と江戸野菜

東京に「TOKYO X」という豚肉がある!初耳だ。

東京都発行『とうきょうを、食べよう。』(2023)を見ていたら、東京の食品に「TOKYO X」を使っている飲食店がいくつもあると気づく。「TOKYO X」とは何だろう。同書には、トウキョウXは、バークシャー、北京黒豚、デュロックを三種交配して、平成9年に開発された高品質豚とあり、肉は霜降りで柔らかく、良質の脂肪が特徴とある。Xは、クロス(交配)で未知の可能性の意味だそうだ。トウキョウXが豚の品種名、TOKYO Xが豚肉名という。年間1万頭程流通しているというが、スーパーで見たことがないな。地図をみると八王子や青梅などの多摩地区が生産地らしい。東京生まれの豚肉があるんだ。ちょっと感激した。東京で生まれた新たな食材といえる。

一方、東京の伝統的な野菜といえば、練馬大根、寺島ナス、亀戸大根、小松菜で、それぞれ地名がついている。小松菜は徳川吉宗が食べたことで名高いが、別名葛西菜とも、あるいは葛西菜を改良したものとも言われ、この地域に広く栽培されていたようだ。知らなかったものでは、馬込三寸ニンジン、馬込半白キュウリ、伝統大蔵ダイコン、滝野川ゴボウなどの地名がついた江戸東京野菜が同書に載っていた。

そういえば以前にまち歩きをしていて、何度か江戸東京野菜に関する案内板に出会った。

向島七福神のひとつ白髭神社境内には、寺島ナスの案内板があった。このあたりは寺島といったが、隅田川から運ばれた肥沃な土によりナス栽培に適していて、江戸時代から寺島ナスと呼ばれて江戸庶民に知られていた。『新編武蔵風土記稿』葛飾郡巻一の産物の項によれば、ナスは江戸時代に葛西(葛飾のうち江戸川から西地域)の東西で、形は小さいが早生ナスとして栽培されていたという。

白髭神社にある寺島ナスの案内板
白髭神社境内、鳥居の左側に寺島ナス案内板が見える

亀戸香取神社の境内には、亀戸大根の案内板があった。ナスと同様に、河川からの肥沃な土壌が野菜栽培に適していて、亀戸大根とよばれる30cm程度の短い大根が栽培されていたという。江戸末期の文久年間から栽培され、明治にはおかめ大根、お多福大根と呼ばれていたが、大正初期から亀戸大根と呼ばれるようになった。当日は野菜の少ない早春に収穫されて、大変重宝されたとある。なお、明治38年創業の「亀戸 升本 本店」では、亀戸大根を契約農家で栽培し、今に甦らせ、提供している。亀戸升本 本店 (masumoto.co.jp)

亀戸香取神社にある亀戸大根の案内板
香取神社

いずれも大手スーパーに流通するほどの生産量はないようだ。都内に住んでいても、小松菜を除き、江戸の伝統野菜は見かけたことがない。もしかしたらそれぞれの地元のスーパーに行けばあるのだろうか。『とうきょうを、食べよう。』は、東京の食材の地産地消のひとつとして、先ずは飲食店からの提供を試みているのだろう。やがて簡単にスーパーで手に入るようになれば良いなと思っている。

追記
子どもから、ソラマチや大手スーパーでも、TOKYO Xは売られていると聞いたので、近くのスーパーに行ったらあった。売り場表示には「今日のTOKYO Xは宮城」とあるが、宮城県で飼育されたということか。買って帰り、ラベルをみたら加工は、埼玉県草加工場とある。地産地消?TOKYO Xは全国展開しつつあるのだろうか。


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