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南米大陸の最南端の岬を巡って どこが最南端の岬か?

経験しないと分からないということは多い。見て初めて分かることもある。岬もそのひとつだった。かつて恋人が話してくれた岬をひとりでバスで行くという「岬めぐり」という歌があった。「瀬戸の花嫁」では、花嫁を乗せた小さな船が岬を周る情景が歌われていて、船に乗れば、海上から岬は簡単に分かのだろうと思っていた。それが、実際にマゼラン海峡を航海し、南米大陸の最南端の岬を通過したとき、岬は分からないと分かった。

われわれを乗せた船がウスワイアを出航して、パタゴニアの氷河を見ながら、狭い海峡を通過していた。その途中に南アメリカ大陸最南端の岬Cape Froward(ケープ・フロワード)がある。そこを通過したとき船内放送で「南米大陸最南端のケープ・フロワードを通過します」との船内放送があった。船の右舷側が大陸である。私は、右手に岬の先端のように海に突き出した場所がそうだと思ったら、違うとのこと。実際の岬は、平らな岩壁が続いていて、岬とはわからない。ケープ・フロワードは、正面から見ると単なる岸壁にしか見えないのだ。(写真:ケープ・フロワード付近)

岬を陸上からは見ると海に突き出していて、容易にそれと分かる。しかし海上から岬の先端を知ることは難しい。「岬は正面から見るとベタの壁で、岬だと認識できない」と聞いていたが、実際に体験してみると本当にそうだなと思える。先端が切れているのが分かる鋭角的な岬なら、分かりやすいかも知れないが、やはり、海上からの視覚的な確認よりも、座標測定による、地上からの、あるいは高台からの俯瞰的な確認が必要である。

過去の航海者たちはどうやって、岬を海上から認識してきたのかという謎を今、新たに抱えている。海上から岬を視覚的に探すことが如何に困難だったかが知られた航海だった。




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