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ジンバブエの木彫り職人

その日の夕食は、ほのかなランプが灯るジンバブエのレストランだった。暗闇のなか、民族衣装を着た人たちが歌い、伝統楽器が奏でられていた。あちこちに伝統的な料理が並べられ、虫を食べたら証明書を発行するというコーナーもあった。  

料理を取りに店内を歩くと、うす暗い床の上に木彫りの動物が並べられているのに気づいた。客向けの土産物だ。そばに二人の職人が静かに座って動物を彫っている。客に媚びへつらうこともなく、その顔は無表情のままだ。決して売り声をかけることはない。

小さなカバがひとつ一ドルという。一日にいくつ作るのと尋ねたら、カバは二個、大きなキリンは四日かかると言う。それでは一日の収入は、せいぜい二ドルに過ぎない。このわずかな収入が木彫り職人の暮らしを支えているのか。ため息が出た。小さな富を生みながら、木彫り職人の時間は、ゆっくりと、ゆっくりと流れていた。

2023.2.21

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