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安い華奢な指輪

”強い方が折れないといけない”

これは一生忘れられない言葉。
私にこの言葉をくれた人は賢い人。

その人の気持ちに私は答えられなかった。

この言葉が忘れられない言葉になってしまったゆえに、
その人のことも忘れられない。

その人は同じバイト先の人だった。
バイト先の飲み会に私が誘って、だんだんと仲良くなって2人で会うようになった。
その人との会話はとても楽しくて、考え方が心地良くて、言葉選びが今まで出会った人の中で1番好きだった。
主にバイト先の話をしていたが、たまに彼氏の愚痴も聞いてもらっていた。

その人との関係が大きく変わった出来事があった。
分かりにくいのでその人のことをこの後の話では仮にKさんと呼ぶ。


私は高校時代の女友達に大学のサークルの友人達を紹介していた。
その女友達は大学生活が上手くいかず、大学に友達があまりいなくて寂しいと相談されていたので紹介した。その中のには私の彼氏もいた。

私の大学のサークルの友人達に彼女が混じる形で遊ぶことを何回か繰り返し、ある日某テーマパークにみんなで遊びに行った。
真夏の炎天下で1日遊び回って疲れ切った帰り道に彼女は、
「今日はすごく楽しかった!まだ帰りたくない!」と言った。
すると一人暮らしをしている子が「じゃあうちに来て飲む?」と言い出した。

その時の私はやめてくれと思った。
一日遊び回って汗だくで早く家に帰ってシャワーを浴びたかったし、
何より私は一応私の大学の友人達の中に彼女が居辛くないよう一日中気をつかっていた。
その日が楽しくなかった訳ではないが体力的にも精神的にも疲れ切っていた。

私は汗だくのままお邪魔するのも申し訳ないし疲れたから帰ろうかなーとやんわりと断った。
周りの友人たちも明日予定があると渋っていたりしたが、彼女に押されてだんだんと飲みに行くと言い出した。
最後まで行くのを渋ったのは私だけだった。私の彼氏も行く気になっていた。

彼女にも、しまいには自分の彼氏にも来ないのかと駄々をこねられ、
私は強めに今日は帰ると押し切り私だけが帰ることになった。
私以外のみんなが一人暮らしの子の家に行くために乗った電車を方向が違う電車に乗って帰る私は見送った。
電車に乗るまで来ないのかと言い続けた彼氏は電車のドアが閉まるとき不機嫌な顔をしていた。

なぜ私が謝らないといけないのかと思いつつ、不機嫌だった彼に行けなくてごめんと一応LINEをいれた。

最寄り駅にについて飲み会に行かない私が悪者になったあの空気にイライラしてKさんに電話をした。
暇だからと私と家が近くだったKさんは愚痴を聞きに最寄り駅まで会いに来てくれた。
1時間程度地元の飲み屋で愚痴を聞いてもらって、家に帰ってシャワーを浴びて寝た。

次の日の朝、前日飲みに行っていた大学の友人の1人から電話がかかってきた。
内容は今でも忘れられない。
飲んだ勢いで彼氏と高校の女友達がベタベタしていて、しまいにはキスもしたという報告だった。

俺から伝えるかどうか迷ったけど、その場にいなかった私だけ知らないのは良くない気がして。と言って友人は教えてくれた。
彼氏と高校の女友達とのキスを見ていた友人達は私に伝えるか相談したらしい。
電話をくれた友人以外は伝えるのを反対したらしい。
でもその友人は周りの意見を無視して私に連絡した。

なんて馬鹿な報告だと思った。
いくら酔っぱらっていたとは言えせめて友人達の前でキスするなとツッコみたかった。

私は自暴自棄にKさんにLINEをいれた。
とりあえず1人でいたくなかった。
少し前にKさんに自慢したばかりだった彼氏からもらった安い華奢な指輪を割って欲しいと連絡した。

Kさんはその日ずっと一緒にいてくれた。
女友達から来た謝罪とは思えなかった電話も一緒に聞いてくれて、電話を切ったあと泣いている私の前で安い華奢な指輪を割った。

彼氏は都合の悪いことがあると逃げる性格だった。
しばらくの間、連絡が取れなかった。

彼氏と連絡が取れない間ずっと私はKさんに甘えた。
ストレスで片耳が聞こえずらい状況になったのもKさんにだけ教えた。
Kさんは自分の時間を可能な限り最大限私の為に使ってくれた。
割って貰った指輪と色違いの指輪が欲しいと私が言ったら買ってくれた。

私のことを好きにならないと前に飲みに行った時に言っていたKさんが、
「苦しんでいるあなたをみたくない。彼氏と別れて僕と付き合ってください。」と私に言った。

「ごめんなさい、私はこんなことされてもまだ彼のことが好きなんです。」
私はKさんの気持ちを無下にした。

彼氏と話し合ってそのまま付き合い続けることを私は選んだ。

Kさんは「2番手でいいです。ずっと好きでいます。」と言い、
前と変わらず私にいい様につかわれ続けてくれた。

彼氏とは付き合い続ける選択をしたが、女友達とは縁を切っていた。
彼氏とは話し合ってまだやっていこうと思えたが、女友達のとった私への態度は私が許容できる範囲をとうに超えていた。
彼氏とキスをしたことも十分最悪だったが、その後の彼女の態度のほうが最悪で私を傷つけた。
彼女はずっと、大切な友人を失ってしまうかもしれない悲劇のヒロイン気取りだった。
その態度を自分が傷つけた失ってしまうかもしれない大切な友人である私にもとった。限界だった。

彼女と縁を切ることによって、彼女と一緒に仲良くしていた高校の友人達の輪を壊すことになってしまった。

共通の高校の友人達の為にも私が彼女をいつか許さないといけないとずっと思っていた。
だけど、なんで傷つけられた私が折れなきゃいけないのかとずっと思っていた。
そんな私にKさんは言った。

「強い方が折れないといけないんですよ
 僕は決してあなたが悪いって言ってるわけじゃない
 あなたならこの意味分かりますよね、、?」

Kさん以外の人から言われていたら私はきっと言ってきた人をその場で嫌いになっただろう。
でもKさんから言われたその言葉は私に深く刺さった。
私が傷つけられた過程をずっと隣で見ていたKさんの言葉だったから、深く刺さって抜けなくなった。

2番手でいいと言ったKさんは彼氏と付き合い続けてる私に
「結婚してください。こんなこと思ったの初めてです。この先もこんな風に思うことないと思います。」
と悲しそうな顔で冬の夜、プロポーズして私を抱きしめた。


あの真夏に起きた出来事は彼氏と別れた今も忘れられない。
ずっと忘れることが出来ない思い出だ。

Kさんと一緒に出掛けた時に”この口紅が使い終わったら彼女を許す”と決めてた買った口紅をとっくに使い切った今も私は折れることが出来ていない。

忘れることが出来ない”強い方が折れないといけない”という言葉と共にKさんのことも忘れられない。

Kさんに買って貰ったさびてしまった安い華奢な指輪を私は捨てられずにずっと持っている。
指輪を買ってもらってからもう2年以上たっている。


#安い華奢な指輪 #Kさん #人生で初めて受けたプロポーズ

#彼氏 #女友達 #キス

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