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サイコパス恐怖症(1話目)

サイコパスと聞くと大抵負のイメージが湧くもので、殺人や結婚詐欺であったりと犯罪感を感じる猟奇的な人間の総称、という認識が一般的であるものと私は考えている。

結婚詐欺をしている人は大概サイコパスであるようだし、人殺しも大概サイコパスであるとどこかのニュース番組かバラエティだかで、犯罪心理学者の教授だかが言っていたような気がする。

サイコパスとは以下のような人のことらしい。
共感能力の低い
知能が高い
魅力的に写る

私は動画でサイコパスとはどう言った人間なのか、ということを漠然と理解した上で憧れを持つと共に恐怖した。

サイコパスには居場所が存在しない

私はサイコパスを排除しようとするナチス的感覚の持ち主が、マスメディアなどで情報操作をしているのではないかとまで考えた。罪を犯す人間がサイコパスに多いが全員ではないはずである。が、一般にサイコパスは猟奇的であることを望まれてさえいるように感じる。共通項として認識され続ける必要のある揶揄の為の言葉であり括りである。これは変える必要もなく、変わる必要もない。ただし、自分がサイコパスであると少しでも考えてしまうのであれば、サイコパスの定義における肉付きの部分を周囲に少しでも変えて頂く必要がある。

私が自分をサイコパスであるのでは?
と、考えたのは親知らずを抜いた時であった。


私は親知らずを抜くことを決めてから、実際に抜くまで1ヶ月かかった。その間、話が詰まる度に親知らずを抜く話を始めるのだが、皆口を揃えて定型文を返す。

麻酔をした後、私は麻酔を打った箇所がじんわりと温まり、じわじわと痺れ感覚がなくなるのが好きなことを思い出した。うがいをし、横になると全身が軽く震えるのだが、医師は関係なく抜歯を始め、メスか何かで歯茎を焼きながら切除し、バキバキと歯を粉砕していく。私の歯はなかなか抜きづらいらしく、何かでテコの原理をフル活用して抜かんとしている。テコ、テコ、テコ、テコ、ドリル、テコ、テコ、ドリル、テコ、ドリル、といった感じで、歯にアプローチする。歯は抜き終わると粘性のある血が出る。私は麻酔以上に抜歯後の血が出る感覚、抜いた箇所に空気が触れる感覚、麻酔が切れ始め徐々に神経を刺すような痛みが強くなる感覚、が堪らなく好きだ。

この話だけならば、サイコパスではなく抜歯限定のドMという、特殊性癖のラベル付けをして話は収束する。ここで私は自分の特殊性癖を元に、SかMかを考えるに至った。上記の通り私はMの性質がある。なんなら、靴だって舐めるし小便だって飲める。が、基本的にはやらないつもりだが、望めば全力で殴るし首も締める。恐らくなんの躊躇もなく殴り続けられる。ここに共感能力能力の欠如を感じてしまう。

恐らく私はサイコパスだろう。

一般的に排除されるべき人間の部類に属している。

排除されるのは怖い。

私は、人と関わらないことにした。

コンビニの店員の事を村人Aと心の中で呼び、少しでも村人感から逸脱する店員に嫌悪感を持ちながら、無機質な会話のみを条件下に生活を続けていくことを決めた。

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