7日間で100首、短歌を詠んでみた

ツイッターのタイムラインで「#7days100tanka #tankajam 」というタグを見つけてしまい、思いつきで参加しました。最終日は駆け込み的にですが、たくさん詠んでなんとか7日間でクリアした感じです。

とはいえ短歌素人なもので、見よう見まねで作ったものですから、あまり伝わって無さそうなやつ、適当なやつ、前後関係わかんねーよみたいなやつもあって、補足するということは至らないし無粋ということなんだろうけど、どうしよう。映画のディスク版にある「オーディオコメンタリー」みたいに、各首へのコメントを書いたらいいのかな。全部にいちいち書いてられんな。適当にやります。

4/10
1.
目黒川寒の戻りし足元の踏むか避けるか濡れた花びら

2.
慣れぬ顔コミュニケーションとらねばと侍らせ囲まれ渋沢の夢
 数年後に発行されるという新紙幣のデザインが発表されました。

3.
核売買老年ばかりが思い出すウラン盗みし太陽の咎
 ウランを生成して売買していた高校生のニュースがありました。「盗みし太陽の~」は、往年の映画『太陽を盗んだ男(沢田研二主演)』のことです。

4.
おぼろげに恋い慕った人に逢えずあの春の日もこの雨の日も

5.
あれどこかいつだったかと辿るのに思い出すより過去スクロール
 LINEやメッセンジャーをスクロールすることで日常の記憶の補完に使ってるので。

6.
今日出します明日出せます実際に出すのはきっと明後日の夜
 著者校正に追われておりました。

7.
無かったはずの青春思い出そうと何度も聴くアイドルソング
 そもそもアイドルのようにキラキラしてて見てるだけで憧れて元気もらえる男女って、いなかったっていうか、若いときって好きになったらセックスしたくなっちゃうから、そういうのなしでキラキラに憧れて眺めてるだけで満足だしエネルギー湧いてくるわみたいなのは、おっさんおばさんにならないと得られないよね。

8.
締め切り日エンドマークを打った後見つかる良書参考資料
 まあこれは、文筆業あるあるだと思うんですが、下準備に時間かけろって話。

9.
好きになり好きになるほど欲しくなるアイドル鑑賞4Kテレビ

10.
花粉症驟雨花冷えPM2.5春になれども窓開けられず

11.
雨後の駅気をつけなよと言いながら落とした傘は階段の下

12.
その中に若く混ざって踊りたい左右に揺れるきみを見ながら
 日向坂46の『キュン』という曲を聴いていたことがわかります。わかりませんか、そうですか。

13.
いいことがあると必ず顔に出る広がるアイデア今はにやにや

14.
空腹に夕食前だが耐えかねてチョコレートをこっそりと食む

15.
詠みきった初めての日の十五首目七日もこれが続けられっかな

4/11

16.
テレビ無くラジオも無い部屋白板に令和と書いて暦知らせる

17.
うけるかなうけぬかもだな投稿し親指立ちて穏やかになる

18.
都会には雪がないまま春が来てそもそも白銀など望まんや

19.
通勤路差し込む光日に高く目を細めたり手をかざしたり

20.
坂道の宴の季節は過ぎゆきて新緑の差し色鮮やかに
 花見に丁度よかった桜のある坂という意味もありますし、乃木坂46の高山一実がSNSにアップしてた写真が目黒川っぽくて、なんだよ毎日とおってる場所のに!みたいなことを思ったという意味での坂でもあります。

21.
寄り添いて自撮る角度へ花散らす風に煽られインスタグラム
 っていう感じで、投稿したんだろうなぁ、と。

22.
知か食か暇に立ち寄る本の街食べきる山盛りのナポリタン
 神保町へ行ったら「さぼうる」のナポリタン食べるだろ?っていう話。

23.
理想型のVチューバー中の人などいないはずなのにトラブる

24.
来たる日も来る日も来る日も眠れぬ夜の理由全て鼻づまり

25.
スイートな菓子料理より手元より俳優映す動画配信

26.
あの頃がもしも氷河期でなくてもきっとまじめに就活しない

27.
遠い目でたまごの玩具割ってみてここから夢が生まれればいいのに

28.
ビルを越え我が胃袋を刺激するごまの油の香り漂い

29.
四六時中一日中と終日とどれなら長いきみを想うのに
 まあ、ここから選ぶなら「終日」っすかね。なぜなら「終日で原稿お出しします!」っていうとき、大抵翌々日の朝とかになるので相当長いですね(おい)

30.
二日目も十五首詠んだぎりぎりだ明日もなんとか続けられたら

4/12

31.~35.
交際の幸せ祈るし推しじゃない推しじゃないからと平静装う
交際を知った悔しみ学生の時にもあったその時もみさ
慕う娘を野球選手が掠ってく15年前はかすみだった
交際や結婚報道飛び交ってTLに吼えるオタクの死屍累々
先輩と呼ばるる女子は歳下で卒業と共に恋へ入
 この五首は乃木坂46を卒業したばかりの衛藤美彩(愛称:みさ先輩)に野球選手との交際報道が出たので、いろんな想いが去来したので詠みました。「かすみ」とは往年のグラビアアイドル仲根かすみのことです。あと同日に声優三森すずこの結婚報道もあった、ほんとオタクにはツラい一日でしたが、幸せを祈ってこそのファンです。こちらからは以上です。

36.
世知辛く挙げた足だけとられてく息を吸うのもポリティカルにね

37.
「働けど」怠けてたこと後世の研究により明らかになる
 石川啄木、遊んでばかりだったみたいですね(偏見)

38.
疲労感休らぎの日が来る前に休んでしまう週末の夜

39.
夜風に当たろう窓を開けてみる宴の声など聞こえてくる

40.
つよ風に濠の水面に散る桜どこにも行かずどこにも行けず

41.
遅くても早くても夜混みすぎの金曜列車まだ富んだ国だ

42.
思いついて文字にしたいその時に花粉症に厳しき顔認証のもどかしさ
 マスクしてると短歌を思いついてもiPhoneの顔認証ロック解除ができないんですよ!

43.
この列車全員に帰路あり家あり人生があるのが心地悪い

 44.
一駅で一息つけた列車の席眠み抑えきれず前髪のかかる

45.
三日目の無理捻り感アイドルの恋報道に助けられたり

4/13

46.
歩いても地に足つかず踏切も遠く聴こえる午睡明けの街

47.
人をばかにしてるかのように何度もジャムるスキャナのフィーダー

48.
言い訳で暖かくなった冬の間にサボって溜めた路地の落ち葉はく

49.
もしかして完全な王になれたのか何も命じず世界が動く

50.
肉食いたい思いし時に魚食う三食魚にできてしまう

51.
淋しさに頭痛の種とわかっても呑んでしまうハイボール安きに

4/14

52.
四十路とか過ぎたところで人生がミルクレープほど重なってない
 サーセン自分、スイーツ男子なもので。

53.
ミルクレープを縦に切り分ける感触プチプチを捻り潰すのにも似た

54.
何年もご無沙汰なのに推し出演だけでラジオ聴くようになる
 アイドルを好きになると生活に変化が生まれますね。
55.
歌にして向き合うことで感情がどこにあるのか気付きつつある

56.
寒暖がくるくる変わって仕舞えずクローゼットの上着グラデーション

57.
かき上げて何度も前髪落ちてきて同じようにのびた春の日

58.
気まぐれで推しが喫茶にこねえかな都会の中の観光地にて
 目黒川の花見の写真がアップされてたんだから自由が丘くらい来るだろ、という安直な考えです。

59.
有意義な時間を使った証明は折りたたまれた伝票の中

60.
午後の日に気持ち穏やか歌数もキリがいいので喫茶室出る

4/15

61.
だめ絶対朝からクソな書き込みを目にして速攻血圧下がる
 人類はスマホとSNSを早々に棄てていくべきですね。

62.
歌も字も外に出したくないときは心がイガイガしている感じ
 月曜はクリエイティブなことしたらダメですね。

63.
行き過ぎて踵返して川沿いに緑なりゆく桜を追う也

64.
昼抜いて買った小説つまらなく芸術だからと言い聞かす夜

65.
人に遅れまだ終わらない花粉症睡眠不足とおさらばしたい

66.
インアウトどちらもないと腐るから読むか書くかを自分に課して

4/16

67.
週明けの気分上下に苛まれ駆け込み詠みの最終日也

68.
袖裾も触れたくなくて避けんとす満員電車人々の業

69.
待っている間に漂う高架下ラーメン仕込みの豚骨の風
 お腹減るんですよ、こういうの。電車を待ってるだけで。

70.~75.
何匹も柳の下にいるのかな何番煎じの小説サイト
あたらしさ作家ファースト言う前にナンボになるんか教えてくれろ
雨後に生えた小説サイトをディスったら愛しい推しがアンバサダーだ
新サービス推しと並べる発表会役得あるならおれもリリース
アンバサダー令和小説大賞を獲ったなら愛しき推しは褒めてくれるかな
アイドルとファンが上手くいった試しはねぇんだとシャンゼリオンは言い
 この6首は、LINEノベル(LINE文庫)というサービスが発表されて、小説投稿サイトいくつあると思ってんだよアホか、小説大賞って300万ぶら下げたところで優勝者決まってんじゃねーの、在野の作家を舐めとんのかってDisってたら、『令和小説大賞』のアンバサダーとして乃木坂46の高山一実が選ばれた旨の記事を目にしたので、手のひら返して褒めることにした感じです。そしてシャンゼリオンというのは往年の特撮ヒーローで、アイドルマニアの怪人に対してそういうセリフを言い放つシーンが実際にある。

76.
イベ走りステップアップのガチャに舞うiTunesカードもう何枚目

77.
揺れる気持ちとか知らねぇよと言いながらゆるい坂を選ぶ

78.
読みだすとさらに直しを入れそうでそっと閉じるは校了原稿

79.
無いなりに指摘されてる作家性因果応報臥薪嘗胆

80.
ぬるい日に変わる道端彩りの落ち葉の色も黄色か緑か

81.
ビル同士窓の反射が連れてくる夕方の一瞬射すような日差し

82.
フォトブック推しの写真で手が止まり視線が止まり鼓動が止まる
 完全に乃木坂46のニューアルバムについていたブックレットのことを指しています。わかりませんか、そうですか。

83.
推し推してふと思い出す二人に片想いした高校の夏
 推しが二人(乃木坂46の秋元真夏と高山一実)いるんですけど、高校一年生の頃、二人のクラスメイトに片想いをしていて、片想いのくせに、二人を好きになってしまうのは二股だし、すごくいけないことなのでは、って悩んだことがあったんですよね。アホかよって今は思えるんですけど、そういうのを思い出したんです。別に人数何人を推してもいいよね?

84.
英知と博識に憧れたその先輩は彼女の彼氏

85.
自販機の電子貨幣の反応でその日の出来をそっと占う

86.
冷静に壁の心を紐解いて何に苛立ち何に刃向かう

87.
なりたいと思えるものになれるからなろうと思うことから始める

88.
満天の星や満月よりもビルの狭間の欠けた月が好き

89.
腕組みをする時は考えてるフリ口を開けてる時は耽ってるとき

90.
坂を下りつ考え事をしてみたら気持ちも踏ん張り止まれるかな

91.
推敲でいつも頭に過るのはこの一文字で売上変わるものかは
 これ、ほんといつも思ってる。創作がビジネスに寄り添い過ぎるとこういうことが起こる。

92.
明日になる10年が経つその速さどこかに楔を刺せただろうか

93.
大人へとなるというのが幻想とわかったときに大人になった

94.
夜夜中炭水化物摂取して翌朝響く胃腸脆きに

95.
起き出して背や腹やらや伸ばしつつ水を呑んで身体整う

96.
世渡るに迷わず踏めよ場数迷わず高めよ序列

97.
オープニングアクト自分本編主役自分カーテンコール自分後片付け自分

98.
街が燃えたことを忘れそうな世界にノートルダム燃ゆ

99.
行き詰まる心のネタを求めたり無理に淋しい気持ちへ沈む

100.
日が昇りついに百首を詠みきった言葉の筋肉すこしはついたか

ということで、こうして見直してみるとまあ適当なもんだな、と思っちゃうような歌もあるんですけど、それよりも7日間ってあっという間だったなという感触のほうが強くあります。

時間制限をかけると、あんがい頑張れるもので、締め切りが無いと一切書かないみたいな性格にはうってつけというか、こういう言葉の鍛錬みたいなのは、折に触れてしていきたいと思います。


投げ銭大好きですが、なるべく折りたたんでお投げくださいますようお願いいたします。