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乙女ゲームで哲学を学ぶ事になるとは【イケヴィラ】

ちょうど1年ほど前、SNSを見ていたところ、美しいイラストに目が留まった。
調べてみると「イケメンヴィラン」というアプリゲームのものらしい。
キャラデザに加え、公式サイトのデザインも好みだったため、なんとなくアプリをダウンロードした。
これが人生初の恋愛シュミレーションゲームとの出会いだった。


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注意 この記事はイケメンヴィラン ウィリアム本編のネタバレを含みます。

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私が目に留まったキャラクターは、ウィリアム・レックスといった。
彼は「欲望に忠実に」生きることが最も美しいという考えの持ち主で、その考えがブレる事が絶対に無い。たとえ命が脅かされても。
私は現実でもキャラクターでも「自分の中で美を確立している人」に惹かれるので、この設定はかなり刺さった。

ストーリーの中で一番好きなシーンは、彼と主人公が、雨の中、馬車を降りてずぶ濡れになりながら城まで戻るシーンだ。
いけないことだけど、興味はある。
じゃあ試してみたら良い。
危険な思想かもしれないが、何でも我慢しがちな私にとっては、殻を破ってくれる新鮮な発想だった。

ストーリーの中で、彼は何度も主人公に「お前はどうしたい?」と尋ねる。
私のように優柔不断で心配性な人間は、心の中にこういう言葉を貯めておいて、いざという時に取り出して背中を押してもらう必要がある。

これ以来、迷いが生じたり勇気が出ない時には、心にウィリアムを召喚させて「お前はどうしたい?」と聞いてもらうようにした。
いつかやりたいと思っていた事をすぐやるようにして。
夜でもお菓子が食べたくなったら食べても良い事にして。
子どもらしい、馬鹿らしい、と決めつけず、何でも楽しむようになった。
ウィリアムの価値観を自分の中に取り入れる事で、人生の楽しみ方が少し分かった気がする。

"他人の思想を知って、自分の世界が広がる"という体験は、現代では人間同士のコミュニケーション以外でも起こり得る事だと思う。
私はゲームや漫画のキャラクターから人生の学びを得る事が多いが、そのキャラクターの向う側には、シナリオライターや演者などの人間がいる。
キャラクターが媒介となって、クリエイターの想いを私たちに伝えてくれているのだ。


話をイケヴィラに戻して…
私はウィリアムの両エンドを回収し、当時配信済の他キャラクターの本編も読んだが、今はゲームから離れてしまっている。
理由は恋愛体験を提供してくれるイケメンシリーズに対し、私が過激な恋愛描写が苦手というズレが生じたためである。

キャラクターによってストーリーの雰囲気が全く違うのだが、シナリオライターさんが違うのだろうか。
ウィリアム本編を手がけた方の他の作品も読みたいと思ったが、シナリオライターが公開されていないようだ。残念…
先日、私がプレイしていた時には未配信だったキャラのストーリーが配信されたそうなので、また読んでみたいと思う。



最後に、ゲームのテーマ曲がものすごく素敵なので紹介させていただく。
藤田麻衣子さんの『漆黒』という曲。
曲単体でも素晴らしいが、ストーリークリア後に聴くと更に切なさが増して良い。

愚かでいい 儚くていい
私にはかけがえのない恋
たとえ光が見えなくても
あなたに逢う前の私にはもう
戻れない

『漆黒』藤田麻衣子 より引用

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