(つづくな)

「ダサいポスターを牛に食べさせるんだ。
その牛が死んだらその牛の子供にもダサいポスターを食べさせる。
その牛の子供の子供にもダサいポスターを食べさせる。
その牛の子供の子供の子供にもダサいポスターを食べさせる。
その牛の子供の子供の子供の子供にもダサいポスターを食べさせる。
それを続ければいつか遺伝子レベルで『ダサいポスターは食べれる』と認識する『ダサいポスターを食べたがる牛』が誕生する。
その牛を街に放てばこの世からダサいポスターはなくなるって寸法さ。な?」

たかしはいつもどおりそう言うと
玄関のクツ箱の上の壷に
「いってきます」のキスをした

サナエは少し微笑んで
玄関のアフリカ系外国人の剥製に「いってらっしゃい」のキスをした

たかしは玄関のドアを閉めるか閉めないかぐらいのタイミングで
「ピューゥ!」と口で言った

すると朝日を背に大きなコンドルが飛んできた

翼を広げると全長5メートルはある巨大なコンドルがたかしの頭のすぐ上でバサバサとホバリングしている

コンドルの腹には人間が握れるぐらいの頑丈な取っ手が2つ、ついていた

たかしは両腕を上げその取っ手を強く握り力の限り叫んだ

「大空を駆けめぐる誇り高き自由の覇者よ!!!!我を天高く導きたまえ!!!!!!!!!」

コンドルはそのままその場でバサバサとホバリングしている

たかしはもう一度叫んだ

「いっけぇぇぇえええええ!!!!!!飛っっべぇえええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

コンドルはそのままその場でバサバサとホバリングしている

たかしはもう一度叫んだ

「いこーーぜいこーーーぜぇぇぇ!!!!このどこまでも果てしなく自由な大空へよぉおォォオオオオ!!!!!!こわくなんかないぜぇぇえぇえええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!イェェェェエェエェエエエエェェェィイ!!!!!フゥーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!アゲ♂アゲ♂ェエエエェェェェェエエエェェェェェエエエェェェェェエエエェェェェェエエエェェェェェエエエェェェェ☆☆☆☆☆☆☆」

コンドルはそのままその場でバサバサとホバリングしている

たかしはもう一度叫んだ

「GOーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!GOーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

コンドルはそのままその場でバサバサとホバリングしている

たかしはコンドルの取っ手を握ったまま歩き始めた



一方その頃、たかしを見送ったサナエはキッチンに向かいテキパキした手際でオムライスを作っていた

皿の上にのせておいたチキンライスにフワフワの卵をのせる

結婚生活20年、今までたかしが毎朝家を出る際の言動にサナエはなんの疑問ももたなかった

だが昨日から違和感を感じ始めていた

何かが、おかしい

今日ハッキリと言葉になった

そして

あふれでた

「なんで牛やねん!!!!!!ポスター食わすんやろが!!!!!!ヤギやろ!!!!!!そもそもなんでダサいポスター食わすねん!!!!!!ダサいポスターなんかほっときゃええやんけ!!!!!!てかポスターに『うーわ…ダサいポスター…』とか思ったことないしな!!!!!!どうでもええもんダサいポスターなんか!!!!!!ダサいポスターをなくすために動物に何世代もダサいポスター食わす労力なに!!!????倫理的にもどうなん!!!????そんでなんでそれを毎朝仕事行く前に玄関で言うん!!!????バリ謎!!!!!!意味わからん!!!!!!意味わからんししつこい!!!!!!ヤバイヤバイヤバイ!!!!!!あいつヤバイやつやわ!!!!!!!ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!!『って寸法さ。な?』てゆうシメむかつく!!!!むかつくむかつくむかつくむかつく!!!!!!」

とケチャップでオムライスに書いた

しかし残念ながらこの長さの文章が普通のオムライスにおさまるわけもなく

オムライスに書かれているのは文章の冒頭の「なんで牛や…」まで

そのあとは皿をはみでてテーブルに飛散している

テーブルにもおさまらず床にまでケチャップで文字を書き始めようとしたそのとき

興奮状態であった脳のシナプスが危険信号を発しサナエはその場に崩れ落ちしらすのように細い目から大粒の涙があふれでた

40分ほど泣いて泣いて

冷静になった

「床にケチャップで文字を書くなんて非常識だわ、文章の続きが書けるように大きなテーブルを買い足さないと」

サナエは立ち上がった

サナエは幼い頃から活発な子供ではなかった

いじめっこグループのボスからは「弁護士」というあだ名をつけられてからかわれていた

メガネだし真面目だし司法試験にも合格していたからだ

そのサナエが

自分の意思で

自分の衝動で

自分の為に立ち上がりエプロンを外しソファーに投げ捨て玄関にむかう

サナエはサンダルをはき玄関のドアを開けるか開けないかぐらいのタイミングで
「ピューゥ!」と口で言った

すると朝日を背に大きなコンドルが飛んできた

翼を広げると全長5メートルはある巨大なコンドルがサナエの頭のすぐ上でバサバサとホバリングしている

コンドルの腹には人間が握れるぐらいの頑丈な取っ手が2つ、ついていた

サナエは両腕を上げその取っ手を強く握り力の限り叫んだ

「大空を駆けめぐる誇り高き自由の覇者よ!!!!我を天高く導きたまえ!!!!!!!!!」

コンドルはそのままその場でバサバサとホバリングしている

サナエはもう一度叫んだ

「いっけぇぇぇえええええ!!!!!!飛っっべぇえええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

コンドルはそのままその場でバサバサとホバリングしている

サナエはもう一度叫んだ

「いこーーぜいこーーーぜぇぇぇ!!!!このどこまでも果てしなく自由な大空へよぉおォォオオオオ!!!!!!こわくなんかないぜぇぇえぇえええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!イェェェェエェエェエエエエェェェィイ!!!!!フゥーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!アゲ♂アゲ♂ェエエエェェェェェエエエェェェェェエエエェェェェェエエエェェェェェエエエェェェェェエエエェェェェ☆☆☆☆☆☆☆」

コンドルはそのままその場でバサバサとホバリングしている

サナエはもう一度叫んだ

「GOーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!GOーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

コンドルはそのままその場でバサバサとホバリングしている

サナエはコンドルの取っ手を握ったまま歩き始めた





サナエのコンドルはたかしのコンドルと違って首に水玉のシュシュがまいてある

理由はふたつある

サナエのコンドルはメスだから

もうひとつは

近所に「コンドルしか食べない人たち団地」があるからだ

「コンドルしか食べない人たち団地」にはもちろん「コンドルしか食べない人たち」が住んでいる

「コンドルしか食べない人たち」はもちろん「コンドルしか食べない」

よってコンドルを確保するのに必死だ

コンドルを確保できなければ飢え死にしてしまう

ではどうするのか

コンドルを見かけたら「とにかく声をかける」

あの手この手で言葉巧みに「説き伏せる」

辛抱強く説き伏せられるとコンドルは「まぁ、食べられるか…」となる

そしてコンドルしか食べない人たちはコンドルを食べるのだ

言葉が通じないコンドルを説き伏せるなんて無理だと思うだろうが

コンドルしか食べない人たちは生まれつきIQが7万9000億ぐらいなのだ

IQが7万9000億だからコンドルを説き伏せ食べることができるのだ

サナエはコンドルしか食べない団地の人たちはIQが7万9000億もあっていいなぁと思った

私なんかあれだけ叫んでも空も飛んでくれないのに

食べられてくれるんだもんなぁ

空を飛んでくれる より

食べられてくれる のほうが難易度高いもんなぁ

サナエは「コンドルしか食べない人たち団地」に住む人たちを尊敬した

なぜコンドルしか食べないのか?

なぜ団地なのか?

そんなことはIQが7000億しかないサナエにはわからないし考える必要もない

わかっているのは自分のコンドルは首に水玉のシュシュをまいてあるので「コンドルしか食べない人たち」には食べられることはないということ

なぜか

本人たちから聞いた

「水玉のシュシュとかきゃわいいっ☆こんなきゃわいいコンドルたべられないっ☆」

だそうだ

サナエは歩きながら(大きいテーブルが安いといいなぁ、あと座イスもほしい)と思った

世界政府が「全人類カニ化レーザー」による「全人類カニ化計画」を始動させる2ヶ月前の出来事である

(つづく)

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