見出し画像

マンガ原作実写映画ファンが語る、実写版「ゴールデンカムイ」が「イケそう」な理由

先日、大ヒットマンガ「ゴールデンカムイ」の実写映画のビジュアルが公開された。
私は読み放題の時に読破し、東京ドームシティで開かれた「ゴールデンカムイ展」に行った程度だが一応ファンではあるので、どうにか実写化が成功することを切に願っている。

一方で、私は「マンガ原作実写映画」ファンでもある。
私の視聴リストを共有しておくのでぜひとも私の映画遍歴を確認してからこの記事を読み進めていただきたい。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1iTYPRpeaNPAFcLI3maWfM8sMWWY245O-FwnAMj8GnaI/edit?usp=sharing
また、およそ月イチペースでニコ生で実写映画同時視聴会を開催しているのでそちらにもぜひともお越しいただければ幸いである。
ちなみにリスト内の一番のオススメは「テラフォーマーズ」である。

「ゴールデンカムイ」実写版のビジュアル公開にあたり様々な感想が投稿されたが、役者のビジュアルを除いたらあとはほとんどがその出来を不安視するものもあった。
「ゴールデンカムイ」は言わずとしれた大ヒットマンガのため半端な出来ではファンは満足しないだろうし、同時にアイヌ民族という描写に慎重さが求められる題材を扱うマンガでもあることが実写化への不安へとつながっているようだった。

たしかに日本における「マンガ作品の実写映画化」は残念ながらネガティブなイメージをさせるのが実情であり、実際に「ゴールデンカムイ」ファンはこのニュースにかなり混乱しているように思う。
その不安は作者の野田サトル自身をもってしても簡単に払拭できるものではないだろう。

しかしながら、私に言わせると近年のマンガ作品で「ゴールデンカムイ」ほど成功の可能性がある実写化映画もない。
もちろん「絶対に成功する」と保証することは出来ないが、少なくともトレーラーだけですべてを判断するにはあまりにも惜しい程度には成功の素材が集まっていると思う。
私はかなり大真面目に「イケそう」だと感じている。

なので今回は、私が「ゴールデンカムイ」に期待できる理由を記事にまとめることにした。お読みになられた金カムファンの不安が少しでも和らぐことを願うばかりである。
なお、特記しない限り作品名は「実写版映画」のことを指す。そんなルールが適用されるのこの記事ぐらいだろう。

★舞台が日本

マンガ「ゴールデンカムイ」は、日露戦争終結直後の北海道を舞台にアイヌが秘蔵していた金塊を探し求める者たちの物語である。

この「舞台が日本」というのが重要で、つまり海外ロケをしないで済みそうということを意味する。
私は素人なのでざっくりとした伝聞で話すが海外ロケというのは役者含むスタッフにかなりの負担をかけるもので、時差ボケ、気候や食文化への慣れはかなりパフォーマンスに影響を及ぼすし、単純に渡航費だけで国内便とは比較にならない費用がかかる。
これについては「テラフォーマーズ」がアイスランドでのロケを敢行したと言えばお読みの皆様は察していただけるだろう。
あんなもん日本でやれ日本で!

なお、現段階で既にメインのロケ地が北海道、あとのロケも日本国内がメインという情報が出ている。
特に北海道は昔の建物が残っているだろうから室内のシーンも移動が少なくて住む可能性が高い。
「鋼の錬金術師」第一弾は室内シーンは兵庫県、屋外シーンはイタリアでのロケだったため様式の統一が取れておらずなかなか大変そうだった。
舞台が日本の物語というのはかなり期待できる要素といえよう。

★キャラのビジュアルが日本的

舞台が日本のため当然ながら登場人物の大半は日本人である。
※アイヌ民族のルーツは複雑なため日本人とくくってしまうのもざっくりしすぎだが、それは本筋ではないためここでは「日本人」と表現する。
また作者の野田サトルの作風としてキャラクターの顔つきも、端正ながら美化されすぎずリアルな造形に収められている。

この「ゴリゴリの特殊メイクやCGに頼らないといけないキャラ造形でない」というのは非常にプラスである。

私は実写映画のみならず映画を楽しめるかどうかは「観客がどれくらい没入できるか」にかかっていると思っていて、だからスタッフは映画が「作りものである」ことを忘れさせるために全力を注ぐ必要がある。
作りものである映画に没入感、臨場感、リアリティを感じた段階ではじめて観客は映画を楽しむことができるのである。

その点で「キャラのコスプレ感」というのは著しく没入感を削ぐ要素の一つだ。
キャラ造形があまりに酷いと120分間ずっと「作りもの」を見させられている感覚から抜け出すことが出来ず、結果的にそういう映画は「クソ映画」の烙印を押されてしまうのである。
個人的に「逆転裁判」や「鋼の錬金術師」は最後までコスプレ感が拭えなかった作品だ。

「ゴールデンカムイ」のキャラは基本的に黒髪・白髪の日本人で構成されており生身の体にメイクすることで十分再現できる造形をしている(ヴァシリとか出てこなさそうだし)。
フルCGで対応しないといけないキャラはせいぜいヒグマくらいだと思うので、ビジュアル的な没入感にかなり期待できる題材である。
もっとも、日本人だらけなのに異様に違和感がある作品もたくさんあるので油断ならないが(「ニセコイ」とか)。

★戦闘が肉弾戦&銃撃戦メイン

主人公・杉元佐一をはじめ「ゴールデンカムイ」の戦闘は銃や刀、そして殴り合いで構成され、マンガ「鬼滅の刃」の水の呼吸みたいないわゆる「必殺技」みたいなものは少ない。

これは期待というレベルの話だが、こういった肉弾戦メインの映画は「CGのコスト」をそれなりに削減できる可能性がある。力の入った映画だと制作期間のうち一年間くらいはVFXに費やすこともザラにあるため、メインのシーンでCGが少なく済むのは間違いなくプラス要素である。
ただし、昨今の映画は爆発シーンとかでもガンガンCGを使うためもしかしたらそこまで削減にならないかもしれないし、結局殺陣の稽古に時間をかけてトントンになる可能性も否めないのであくまで軽い期待にとどめておこう。

しかしながらゴリゴリにCGを使われると先述した「没入感」が一気に損なわれることがあるためやはりCGは少ないに越したことはない。
みんなも「怪物くん」見ような。

★★★★★★

以上が、「ゴールデンカムイ」の実写化がイケそうな要素である。
3つしかないのかよ! というツッコミが聞こえてきそうだが、これらの要素すら揃ってない実写映画が大半なので3つ揃ってるだけでも数え役満なんだよ!

この記事の趣旨は概ね言い終わったので、以下は補足というか現段階の評価における私の反論みたいなものである。
実写映画狂いの私と世間では見ているものも違うだろうから一応ここに記しておく。なにかの参考になれば幸いである。

★★★★★★

★マンガ原作実写映画を成功させるのに「原作愛」はマストではない

もし実写映画を成功させるのに「原作への愛(リスペクト)」が最重要事項なら、「ゴールデンカムイ」の熱烈なファンの誰にメガホンを持たせても良い映画が撮れるという図式が成り立つはずだが、そんなことはありえないというのは誰でもわかる話であろう。

私の体感では、
愛と技術がある監督>愛はないけど技術はある監督>愛はあるけど技術はない監督>両方ない監督
の順に良い作品が出来上がる可能性が高くなる。
もちろん原作に対する愛があるに越したことはないがそういうスタッフを射止められるかは運も絡んでくるため、私は技術のほうが大事なファクターだと考えている。

恐ろしいことだが映画を作るのがヘタクソな監督というのは確実に存在する。
敵の巣窟に潜入してるとき明らかに怪しい赤ん坊の泣き声につられてのこのこ単独行動するバカがいたり(「進撃の巨人 Attack on Titan」
デスラーからの脅迫を受けるおっかないシーンのすぐ次のカットでめちゃくちゃはしゃぎながら祝勝会やってたり(「SPACE BATTLESHIP ヤマト」
北村一輝の腹に爆弾が直撃したにもかかわらず次のカットではヒザから少し血が出てるだけだったりする(「怪物くん」)。
そういう明らかな矛盾を画面に映されると没入感が一気にそがれるのでやめてくれないですかね……。

そうでなくとも邦画では映画監督じゃない人が監督やってることさえあるのだ。私は普段そういう映画ばっかり見ているので「技術がある」というのがいかにありがたいことか、身にしみてわかっているつもりである。

もっとも、これだけ原作愛が偏重されるのはあまりにも原作へのリスペクトに欠けるビミョーな映画ばかり作ってきた実写映画界の責任によるところが大きいので、その気持ち自体は否定しない。

そして、「HiGH&LOW」などを手掛けているとはいえ監督の久保茂昭監督がMV畑の人間であることも若っっっっっっっっっっっ干の不安要素であることは追記しておく。
「キャシャーン」を忘れるな。

★山﨑賢人観を修正しよう

主人公の杉元佐一は山﨑賢人が演じる。
すっかり「実写映画請負人」みたいなポジションについた山﨑賢人だが(今調べたけど言うほど出てないな)、最近の山﨑賢人を私は割と評価している。

それはやはり「キングダム」の成功の影響が大きい。
私は残念ながら未視聴だがやはり日本のマンガ原作実写映画が三部作まで続くというのは尋常じゃないことで、その主演を務めている山崎賢人はしっかりと称賛されるべきだと思う。
ちなみに2023年9月時点で「キングダム」三部作の興行収入は約150億円ほど。「るろうに剣心」三部作の興行収入が100億くらいなのでどれくらいヒットしているかがわかる。

今、世の中に定着している山﨑賢人観はおおむね「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」とか「一週間フレンズ。」とかに出ていたころに形成されたものであり、「ゴールデンカムイ」へのイメージを語るならあくまで「今の」山﨑賢人に目を向けるべきだろう。「ヲタクに恋は難しい」だって脚本がアレなだけで山崎賢人は相当がんばってたよ。

一部では「筋肉が足りない」という声が上がっているが、なぜ「キングダム」で大沢たかおがやってのけた肉体改造を同じく出演していた山﨑賢人を始めとする出演者がやらない・できないと決めつけるのか。
日本人みんな鈴木亮平やクリスチャン・ベールだと思うなよ!

「キングダム」の山﨑賢人がひょろひょろだというのならすまんやで

★あぶない男、玉木宏

Twitter(自称X)でも話題になったが鶴見中尉は玉木宏が演じることとなった。

私にとって玉木宏といえば「のだめカンタービレ」の千秋先輩のイメージが強いのだが、実はサイコ野郎の演技も結構うまい役者なのである。
どれくらいかうまいというと、玉木宏は手塚治虫原作の「MW -ムウ-」で猟奇殺人犯の結城美智雄を演じているのだが、それを劇場で見た私の妻はそれ以降テレビで玉木宏を見るたびに「こわい!」とつぶやくようになった。

鶴見といえば特に「映える」タイプのヴィランであり演じるのも難しそうだが、玉木宏による鶴見にはかなり期待している。

★★★★★★

映画というのはたった一つの違和感や許せない要素を見つけてしまうだけでいきなり面白く観られなくなるメディアであり、そしてお金を払っている以上観客にはそうやって評価する権利がある。
尾形の顔が気に食わないからクソ映画という評価だっておおいに許されるはずなのだ。

大事なのは、それらの要素をトレーラーだけで判断するのは本当に困難だということ。
トレーラーからとにかくダメな空気が漂っているのに本編を見たらそこそこ良かった、という実写映画は私の映画遍歴の中でも数え切れない(「氷菓」「ルパン三世」など)。
あの「るろうに剣心」ですら制作発表の段階では苦言を呈する人がいたのだから、制作最初期に映画の出来を評価するのがいかに無駄なことかという話である。

なので、「ゴールデンカムイ」については現段階で悪い要素ばかりを見つけて不安になるのはちょっと損だということだけは伝えておきたい。
少なくとも私は3つ、良さげなところを見つけたので。

ゴールデンカムイよ! 成功して姉畑支遁まで映像化してくれ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?