群集心理に配慮した広報の必要性

1. この前、明石花火歩道橋圧死事件について話した。

この事件は警備業関係者にとっていろんな意味で考えさせられる事件だった。

群衆と化した見物客を交通規制しないと群衆なだれ、将棋倒しといた多数の人命が失われる事態が巻き起こることを前回述べた。

この群衆をどう整理し、イベントなり大規模施設の運営を安全かつスムーズなものにしていくのか。これこそが警備業者の腕の見せ所であったりする。

2. ということはこの群衆について知る事が適切なイベント警備なり、施設警備の遂行に不可欠といえる。

そこで今回はとりあえず群衆心理の性質について考えた上で、それを前提にした警備上の施策についてのべようと思う。

(1)まず、群衆の心理にはどのような性質があるか。

この点に関して、フランスの社会心理学者であるギュスターヴ・ル・ボンは著書「群集心理」の中で群衆の心理について3つの性質を述べている。

まず群衆は衝動的で、動揺しやすく、興奮しやすい。

どんなに頭のいい理性的な人間でも、彼らが集団化し、群衆となるとき、外界の刺激に翻弄されやすくなり、衝動的になり、計画的な考慮もなくなる。

次に群衆は暗示を受けやすく、物事を軽々しく信ずる。

群衆は頭でなく心に浮かんだイメージでモノを見る。イメージは人から人に感染しやすい。それは理性的で頭のいい人間を野蛮な暴徒にしてしまう程の力がある。

最後に群衆は誇張的で単純である。

群衆化するということは知性を放棄した状態になることを意味するので疑惑も不安も起きず、絶えず極端から極端へ走る。

(2) こういった群衆を規制するためには、その群衆の不安や不満といったマイナスを積極的に解消する状態を作る必要がある。

具体的な施策としては広報を適切に行うべきと考える。

まずは、かれらの大多数が納得できるように、今群衆が何を求めている情報は何かを的確に判断し、簡潔・明瞭な言葉で繰り返し、広報する必要がある(情報広報)。

その上で群衆が過密状態になる等の危険が予想される時、又は群衆の一部が全体の秩序に反するような行動をとるおそれがある場合、そういった不正行為や事故を誘発する流れを防ぐために例えば落ち着いて並ぶ旨など広報する必要もある(規制広報)。

この際、厳しい命令口調を避けるなど、群衆を心理的に味方につけるなどの技法や配慮が必要となる。

最悪、不法あるいは会場管理規定等に違反する行為などが発生した場合、すみやかに警告・制止を行い、その行動を解消・阻止するための広報(禁止広報)も行う。

ポイントは群衆を味方にして負の感情を巻き起こさせないということである。

その意味からも警備員といえども、常日頃から群衆の心理を勉強し、いざというときに適切な言葉をかけられるよう日頃の研鑽を怠ってはいけないと思うのだ。

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