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顔も名前も知らない男に煙草1本で落とされた話

気づいていた。
本当は、ずっと分かっていた。分かっていて気づかないふりをしていた。
「これはでかい沼だな」ということが分かっていたから、対岸からひっそり眺めていたのだ。
だからこそ、敢えて叫ぼう。

こんなはずじゃなかった。

***

ヒプノシスマイク。通称、ヒプマイ。


Twitterの民をしているのならば、一度ではなく二度三度もTLにその単語が流れてくることはあるだろう。
かくいうわたしも、それをTL上から眺めているだけの人間であった。

仮にも二次元を愛するオタクのひとりである。
その噂はかねがね聞いていた。ジャイ○ンの中の人がラップしてるとか、ありとあらゆる争いがラップで行われているとか、そのラップで使ってるマイクが精神に作用するやべえやつだとか。

わたしはTLを斜め読みしつつ、「ま〜たぶっ飛んだ設定のコンテンツが生まれてしまったな……」などと思いながら眺めていた。

ヒプマイは所謂『大手ジャンル』の一角を担っていて、ファン数も供給もめちゃくちゃあった。
あったからこそ、気になってはいたけれど距離を置いていた。

自身の性格と今まで巡ってきたジャンルの傾向上、わたしは所謂『大手ジャンル』からは距離を置きがちになる傾向がある。今のジャンルの供給を享受するので精一杯なのに、ここでいきなり過多すぎる供給を追加したらアラサーオタクは疲弊してしまうのだ。体力と時間がないもの。

なので、たま〜にTLに上がってくる二次創作やら呟きやらを眺めて、「楽しそうだな〜」などと思って見ていただけだった。
(ちなみに当時、見た目がかわいいという理由でチェックしていた飴村乱数くんくらいしか顔と名前が一致していなかった)

そして、ついにヒプマイはアニメ化。今月より放送を開始した。

アニメ化かぁ〜すごいな〜と思って見ていると、最速放送日からそれはそれはTL上で話題沸騰。ふつふつとそそられるわたしの興味。

ちょうど加入していたAmazonプライムに追加されてしまったし、「見てみるかぁ……」と、わたしはようやく重い腰を上げたのだった。

そして、わたしは「彼」と出会うことになる。

ヒプアニ1話を見た人なら分かっていただけるであろう、アニメ中盤のシガーキス事件。

例に漏れずわたしはそれに心臓を打ち抜かれ――画面中央ドアップで仲間とそれをやりやがった、あの白髪の目つきが悪い男は何者だ!?と困惑した。

彼の名を、碧棺左馬刻(あおひつぎさまとき)という。

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唯一名前と顔が一致していた飴村乱数くんならいざ知れず、名前も顔も声もこれっぽっちも知らない男にすべてを持っていかれてしまった。

心の中で乱数くんへ謝罪したことは言うまでもない(その後ドラマパートを聞き始めて、別の意味で乱数くんに落とされることになるのだが)。

そこから先の記憶は、不思議と客観的なものでした(Sound Horizon『Baroque』より)。

アニメ1話を見て数時間でアップルミュージックからリリース全曲を取り寄せ、アプリゲームを始め、その2日後にSSRを無課金で2枚抜きするという自分でもびっくりするくらいの転がり落ちぶりを発揮したのである。

Baroqueの乙女達もびっくり。

公式YouTubeチャンネルに上がっているドラマパートも暇さえあれば聞いている。最近は朝起きたらラジオ代わりに聞いているので、薬物売買粛清ラップバトルを観戦しつつ優雅な朝ごはんを食べるなんてこともよくある。字面から不穏。

(左馬刻様率いるチームの結成の様子が描かれた、ヨコハマディビジョン最初のドラマパート。開始数秒からブタ箱とか言っててもう不穏である)

その転がり落ちぶりが自分で見ても面白すぎるので、記憶に留めておくために今このnoteを書いている。
これもまたアニメ1話を見てから1週間も経っていないのだから衝撃である。

本当にこんなはずじゃなかった。許さんぞ碧棺左馬刻。

美味しい肉を食べます