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ネズミ講編 その3 #1:本屋っていいよね

25,6ぐらいのお年頃だったと思うが、ひょんなことからJASDAQ上場企業の本社にアルバイトで入り込んだことがあった。
今はもうないんだっけ、JASDAQ。

上場しているとはいえ、若干ユルいJASDAQという市場のためか社内は結構ホンワカした雰囲気だったような気がする。
(営業所はノルマ達成必至のため殺伐としていたらしいが…)

仕事はといえば当時はネットバブル第一波といった感じで流行り出していたweb系の仕事で、主な担当はネットショップの管理全般。
楽天のクソシステムも黎明期からのお付き合いである。
あとは自社システムのディレクション補助と画像加工、またメルマガのライティングなどまあできることはなんでもやっていた。

当時は会社のシステム部なんていうものは既に時代遅れのCOBOLとかのメインフレームにしがみついていて(まあしょうがないよね、webベースとかLINUXが基幹というのはまだ少数派だったとは思う)しかも技術者は高飛車で「Webなんか何ができるんだ、フン」といった感じでバカにしていた向きがある人ばかりだった。まあ後に全員駆逐されることになるんだけど。

会社は江戸城を取り囲む門のうちの1つの近くにあり、家から会社までは地下鉄で通勤していたのだが勤務先最寄り乗降駅の直結ビルの中に本屋があった。
なんてことはない本屋だがやはり立地が良いのだろう、狭い店内はいつも混んでいて活気があったものだ。

本が好きな俺はよくその本屋を利用しており、新書やら小説やらビッグコミックスピリッツなどをよく買っていて世話になっていた。
会社に勤め始めて1年半くらい経った頃だろうか、その本屋に英会話の勧誘らしき女性が良く出没するようになった。
俺はいつもイヤフォンをしていて呼びかけられてもあまり反応しなかったのだが、ある日web系の難しめの本を買ったときレジでイヤフォンを外して会計をしてそのまま店外というか地下鉄へ降ろうと思った時
「お兄さん、英語話せたらいいと思いませんかぁ!」
というピチピチ女性の元気な呼び止めに反応してしまった。

難しめの本を買った時などは未来がすごく広がった気になっているので、
(そうさな、俺にも英語は必要なのかもしれんな。これからは世界に打って出るかもしれないからな。)
「そりゃあ、いいですよねー話せたら」
まあ少しは心得なくもないぞ、という余裕で答える。

まあ、そんな心得は無い。
が、まあまあ可愛くて中肉中背でピッチピチのポニーテール茶髪女性inビジネススーツの子に声をかけられたら反応しない手は無い。ないでしょう。
こちらも健康な男性ですから。

「ですよね!英会話教室とかは行ったことありますか?」
両手にパンフレットをもったまま女性が話してくる。
「いやぁ無いんですよね、そもそも単語もあんまり知らないし」
まあでも、実はフィリピンの子達と数ヶ月親しく過ごしたことがあり英語が通じるかどうかは知っている単語数では無いことを知っている。

「そうですかぁ!私も以前はそうだったんですけど、この教材に出会ってからあっという間に喋れるようになったんですよ!」
「へえ、NOVAとか今流行ってますもんね。ああいうやつですか?」
「NOVAとは違うんですけどぉ、あのいま今図書カードプレゼントキャンペーンやっているのでちょっとお時間いただけませんか!」

図書カードはなんぼあってもいいですからね。
もらえるならいいかなーと思い誘いに乗る。

「じゃあちょっとそこの喫茶店にいきましょう!」

キタかこれ。
そのあと飲みに行ってグっとしてバーンだろ。
今日は熱いぞ。

そう思ってノコノコついていく懲りないシリウスマン25歳、
次回へ続く…


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