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クビかぁ,クビは結構ショックだったけど #1:あんた誰?

21か22ぐらいの時に某青いコンビニでバイトしていた、金がないのでもちろん深夜。その青いコンビニは京橋にあって当時にしては夜の時給が高く、1200円程度だったと思う。

あまりに金がないので雨の日以外は千歳烏山の四畳半アパートから自転車で通勤し電車賃を浮かしていた。今googleマップで距離を調べたらざっと20kmぐらい、全速力でペダルを蹴ったくり通勤時間は片道平均50分ほどだったと記憶しているが本当だろうか。若いってこわいね。

そのコンビニはいわゆるオーナーがおり、直営ではないらしかった。
そんな仕組みってどこでならうの?群馬のローカルコンビニ「Save On」はどういう形態だったんだろうか。今となっては入店効果音も思い出せず、研ナオコがCMしていたことすらうろ覚えだ。

深夜勤務のパートナーは「破滅主義の田島君」と「チャラ男の谷口君」。谷口君はクラブでDJをやっているらしくてあまりシフトに入らないのでもっぱら田島君とのコンビだった。

田島君はオーナーがクソだとか世界は愚かだとか何かと持論にクセのある男で北方謙三が好きなちょっとアトピー持ちだった。アトピー自体は俺は全然平気なんだけど掻きむしった汁で制服が汚れているのを見てお客さんも田島君も可哀想だな俺が制服洗濯してあげようかと思ったけど、日々の忙しさに負け洗濯はできなかった。

深夜のオフィス街なんか人居ないから暇だろ、と思っていたのに全然真逆で超忙しい。店舗の掃除はほぼ深夜シフト割り当てで、2時すぎ〜朝方にくる配送は量がエゲつない。オフィス街のコンビニは朝と昼の客対応の忙しさがヤバいのだという。

そんなコンビニでも土曜深夜は少々落ち着いており、仕事に慣れてくると土曜シフトの時は休憩もちょっと増やせるしリラックスできたものだ。

コンビニといえば食品廃棄の大手であるということはコンビニでバイトするようになってから知った「日本の闇」である。日本の食品廃棄は年間約600万トン(多分もっとあるけど)というから、「年間では約66万トン」というコンビニは結構な割合を占めている。

まあー何しろポンポン捨てる。
弁当からおにぎりからちょっとパッケージが凹んだ食品まで。売ってるもの大半が食品なのでそりゃロスも出るとは思うんだが全然食べれるものも容赦無く「捨てなければならない」そういうルールらしかった。

「弁当捨てるんだったらくれよ」とか「廃棄もらえませんか」とかいうホームレスの方が何人か店舗に来たことがあるが、担当は大体田島くんで「あー無理無理。帰って」とか「警察呼ぶぞ」とか容赦無い言葉で追い返すので色々すげえなあと思っていた。

弁当やオニギリといった捨てる食品は、1日何回か消費期限をチェックしてピックアップしてゴミ袋に入れバックヤードに置いておき回収業社に渡すようになっている。(肉まん、おでん等はカウントだけして即可燃ゴミ行き)

廃棄の弁当やオニギリは絶対に食べるなよ、そういうのが従業員万引きにつながるし食べたら処罰だからなとオーナーや田島君に忠告されたので、もちろん腫れ物のごとく俺は慎ましくルールを守っていた。

その廃棄袋とは別に、バックヤードのロッカーの上に「缶がヘコんだだけのジュース、いずれ廃棄行き飲み物」がカゴに入って置かれている。これは仕事してから一回も回収に来たことがなかったし突然無くなることもなかったので、まあなんか適当な扱いなのかなと横目で見ていた。

ところがある日、仕事に慣れてきてしまった俺はついに過ちを犯す。
暇な土曜シフト、今日は暇だから休憩90分づつ回そうぜと田島君と談合し先に田島君が休憩する。
清掃も発注業務も一通り終わった3:30から俺が休憩ということになり、とりあえず菓子パンなどを買う。若気の至り時のチョイスはもちろん1個で500kCalオーバーの菓子パンとかそういう爆弾である。
100円単位の電車代も惜しい俺は、ジュース賃をケチる為にパンのみを買い、バックヤードの廃棄ジュースを飲むことにし今日は宴だぜと「休憩、いただきます!」意気揚々とバックヤードに引っ込む。

さあ飲んでやるべかと廃棄カゴからヘコんだ梅ジュースを引っ張りだし、小説など読みながらゆっくりしていた3:40、田島君が「オハヨザイマス!」とうわずった挨拶をする。

え?何?3:30とかだよ、誰か来ることある?
え?え?


#2に続く

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